エグゼクティブコーチングとは
エグゼクティブたちの発言や行動が部下のパフォーマンスを毀損していることで企業は本来の組織力を100%発揮できていない。100%発揮するには、組織に甚大な影響力のあるエグゼクティブたちの行動や意識の変革こそなし得なければならない。
コーチングを定義すると、「クライアントがゴールに到達するために、クライアントの内側に眠るやる気や考え方を引き出すことで、自律的な行動を促し、成長を支援していくもの」と言える。
この時、コーチは、ツールやセッションを通じたクライアントとの対話の中で、相手がどのように向上したいのか、どこを目指しているのかを尋ね、クライアント自身が努力していくことを前提にサポートしていかなくてはならない。主なコーチングのプロセスは次の通りである。
- テーマを問う
- 現状を問う
- 理想のゴールを問う
- 課題を特定してもらう
- 解決策を立ててもらう
- 行動計画を立ててもらう
- クロージング
助言をして新しい考え方を学ばせるのがコンサルティングだとしたら、コーチングは自分の内側の声に気づけるよう、質問という手段で、思考の棚卸を手伝うというものである。
コーチングとカウンセリングは似たように思えるが、カウンセリングの多くが問題解決のために過去を振り返って深掘りしていくのに対し、コーチングは未来に向けて思考や行動を変えていく点が大きな違いである。
エグゼクティブコーチングとは、コーチングの中でも企業のエグゼクティブ(社長、役員、部長)を対象にしたプログラムである。役職や地位が上がれば上がるほど組織に与える影響力は大きくなる。組織に肯定的な影響を及ぼすためにはエグゼクティブ自身の意識変革・行動変革が不可欠となる。
そこでエグゼクティブコーチングでは、特に視点、視座、視野といった点に焦点を当てて質問をしていく。
組織力を100%発揮させるための11のメソッド
エグゼクティブコーチングを行う時の考え方、頭の整理の仕方、話題、質問は次の通りである。
①目的、達成基準を決める
どんな場面でも目的を明確にする。目的というものは大切で、目の前のクリアすべきものが明確でないと、部下の心構えも違ってくる。進むべき道がはっきりしないまま、辿り着けるゴールなどない。
目的と紐づいて大事なのが達成基準である。何を得ることができれば、目的を達成したことになるのか、始める前に明確な基準の作成が大事である。
②はずだの撲滅
多くの場合、思い込みや希望的観測での発言になっている。
③事実は1つ・リフレーミング
1つの出来事に直面した時、人によって思考の深さは違うものである。事実は1つだが、それをどう意味づけるかは人それぞれである。同じものなのに見方が変われば、「意味づけ」が変わる。つまり、何かうまくいかないことも、見方を変えるだけで様々な気づきがあったりする。だから、1つの方向からだけ物事を見て判断するのではなく、できるだけ別の方向や角度から見る姿勢を備えておく。
④どのような行動にも理由がある
「理不尽だ」「けしからん」と思うことでも、人には必ずそれぞれの理由がある。それを知ることで、私たちの受け止め方も変わる。一刀両断に批判・叱責するのではなく、その発言・行動の理由や目的に思いをいたす時、思わぬ発見があったりする。
⑤関係を近づける言葉・遠ざける言葉
これから発する言葉が相手との人間関係を近づけるのか、遠ざるのか、言葉を口にする前にワンステップ入れる。相手との距離が遠くなると判断すれば、自ずと言い返さないということを選択する。
⑥スローガンの活用
どんな会社にして、何を実現したいのか。組織を運営するスローガンをつくる。キャッチフレーズを作る時のコツは、極力オチをつけること。真面目なだけのフレーズは記憶に残らない。
⑦年頭の挨拶、組織のミッションの発信
年頭に今年1年を走り出すための挨拶はしたほうがいい。伝えるべきことは、自分のグループ、組織のミッションである。
⑧プランドハップンスタンス
スタンフォード大学大学院のジョン・D・クランボルツ教授の提唱する「プランドハップンスタンスセオリー」は、偶然起きたことをポジティブに受け止められる方が、キャリアにとって良い結果をもたらしやすいという者である。自分にとって一見ネガティブなことがあったとしても、それをチャンスなんだと考え直していく。
⑨安岡正篤の3つの教訓
- 目先にとらわれず、長い目で見る
- 物事の一面だけを見ないで、できるだけ多面的・全面的に観察する
- 枝葉末節にこだわることなく、根本的に考察する
⑩ピーター・ドラッカーの5つの質問
- われわれのミッションは何か?
- われわれの顧客は誰か?
- 顧客にとっての価値は何か?
- われわれにとっての成果は何か?
- われわれの計画は何か?
⑪マネジメントの5要素
次の5つをもとに自分の頭の中を整理し、部下にも伝えていくことが重要である。
- 私が大切にしていること
- 私があなたに期待すること
- 私があなたにしてほしくないこと
- 私がすること
- 私がしないこと