企業文化とは
トップがいないところで人々がどんな判断をするかこそが、企業文化というものだ。社員が日々の問題解決に使う一連の前提が、企業文化だ。誰も見ていない時にどう行動するかが、企業文化だ。注意深く意識して組織文化をつくっていかなければ、その文化の2/3はたまたまでき上がったもので、残りの1/3は単なる失敗に終わる。
自分が理想とする企業文化を「これ」と特定することは難しい。会社がどこに向かおうとしているかだけでなく、そこにどう到達したらいいかも見つけ出さなければならないからだ。文化は社訓や社是のようなものではない。一度つくれば終わりというものではない。文化に沿わない行いを見聞きしても対処しなければ、それが自分たちの新しい文化になる。ビジネス環境が変化し、戦略も変わっていく中で、企業文化も環境に合わせて変わり続けなければならない。目標は動くものだ。
強力な文化があっても、そのプロダクトを誰も欲しがらなければ、会社はうまくいかない。すると、企業文化はプロダクトよりも優先度が低いように思われる。だが、長い時間軸では、組織文化のおかげで一見乗り越えられそうもない構造的な障害を打ち破ることができたり、社会制度や業界全体の行動を一変させたりすることもできる。文化は組織に強い影響を与える。
理想の文化には、こうと決まった形があるわけではない。企業文化の強みは、同時に弱みにもなりえる。時には、生き延びるために、自分たちの文化の核になる原則を破らなければならないこともある。
文化を変えるための7つのテクニック
①うまくいっていることを続ける
土台のないところに新たな文化をつくり出してもうまくいかない。人はこれまでと違う文化規範を簡単に受け入れないし、全く新しい体制をすべて一度に身に着けることは不可能だ。
②ショッキングなルールをつくる
組織の誰もが「どうしてだ?」と思うことに対して、どう答えるかで文化が決まる。その答えはみんなの記憶に残るからだ。新人が入るたびにその説明が繰り返されることになるし、その説明は組織文化の中に織り込まれる。
③服装を整える
服装という一番目に見えることが、組織行動を変える一番大切な目に見えない力になることもある。
④外部からリーダーシップを取り入れる
リーダーは、望ましい文化をつくり上げた他の指導者たちを取り入れることで、自らの文化を変えることができる。優れた文化をつくるということは、状況に合わせて自分たちを変えるということだ。つまり、それは、自分たちが参入したい市場の文化や精通したい市場の文化を知るリーダーを社外から連れてくることでもある。
⑤何が最優先かを行動で示す
リーダーの意思決定が一般的な直感に反していればいるほど、文化への影響は大きくなる。
⑥言行を一致させる
リーダーが率先して行動しない限り、文化は花開かない。どれほど上手に文化が設計され慎重に構築され、しつこく強制されたとしても、トップにある人が矛盾する行動をしたり表面だけを取り繕った振る舞いをしたりしていれば、すべてが水の泡になってしまう。文化は、リーダーの本当の価値観を反映するものでなければ定着しない。リーダーが手本になることで文化はつくられる。
⑦倫理観をはっきり打ち出す
誠実さ、正直さ、善良さは、文化への長期的な投資になる。誠実であることの目的は、四半期業績を達成することでも、ライバルに勝つことでも、新しい社員を採用することでもない。働きやすい職場をつくり、長期的に取引したいと思ってもらえる企業になることだ。社員にいい行いを実践させることができない企業は、結局破綻してしまう。
望ましい文化をつくるための留意点
文化は抽象的な原則の集まりだが、文化が生きるか死ぬかは組織に所属する人々の行動次第だ。自分の指示した振る舞いが必ず望ましい文化につながるようにするには、2つの教訓がある。
①リーダーが自分たちの文化をどう捉えているかはあまり大切ではない
リーダーや上層部が思う自分たちの「企業文化」は、社員の体験からはほど遠い。重要なのは「この組織の中で生き残り、成功するために社員がしなければならないことは何か?」という問いだ。
②初期設定が大切だ
どんな生態系にもデフォルトの文化があるが、何も考えずにデフォルトを使い続けてはいけない。自分が理解していない原則を取り入れているかもしれない。他社の文化は自分の会社に合わないかもしれない。
文化は、自分が何に一番価値を見出すかを知ることからはじまる。その価値観を反映する行動を組織の全員が実践できるように、リーダーは努力し続けなければならない。行動規範があやふやだったり、煩雑で邪魔にしかならないものなら、それを変えなければならない。文化に重要な要素が欠けていれば、それを付け加えなければならない。そして、何より社員の行動に細心の注意を払い、自分の行動には一層注意しなければならない。