RPAの導入効果
「RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)」は、パソコンの定型業務を自動化するソフトウェアのことである。例えば、請求書を作成したり、システム間でデータを転記入力したり、Web上の情報を拾ってきてExcelにリスト化したりといった、様々な定型業務を自動化することができる。日本においては、2017年頃から大手企業を中心に導入が進み、2019年頃から徐々に中小企業での活用も広がってきた。
RPAの本質的な価値は、人間の「可処分時間」を増やすことにある。RPAが自動で動いて業務を進めてくれている間、人間は別のことに時間を使えるようになる。そのため、「RPAの導入効果=削減できた人間の作業時間+その時間で新たに生み出した価値」となる。企業は平均して人件費を35〜65%削減できているそうである。
高い導入効果を狙うには、RPAで定型業務を自動化した結果、削減できた時間をどんなことに使いたいかを事前にイメージしておくことが大切である。
RPAは「脱・属人化」ツール
RPAに向いているのは「定型・重複・繰り返し」に当てはまる業務である。
- 定型:その業務の手順や判断基準が明確である
- 重複:同じ短い動作を何度も行う
- 繰り返し:少し長めの一連の動作を何度も行う
RPAは大抵のパソコン上の動作を覚えさせることが可能だが、「RPAに業務を覚えさせる」という手間が発生する。そのために「定型・重複・繰り返し」業務が向いている。一度覚えさせてしまえば、あとは使い回しが効く業務の方が、RPAにかかるコストに対して、得られる効果が高くなる。
RPAに業務を覚え込ませる作業は、業務手順書(マニュアル)を作る作業に似ている。「動作を間違えないように手順をマニュアルのように細かく指示した結果、人間じゃなくてもできるようになってしまったね」というのがRPAのイメージである。よって、マニュアル化できるパソコン業務は大抵RPAによって自動化できると言える。
RPAにできること、できないこと
RPAにできないことの典型例は「ロゴをデザインする」「設計図面を描く」「10枚の写真の中からホームページ掲載用として良さそうな写真を選ぶ」などである。
これらに共通するのは、「人によって結果(アウトプット)が異なる」ということ。業務に明確な手順と判断基準がないものをRPAに再現させるのは今のところ困難である。逆に、人よらず結果が同じになるような性質の業務は、ほとんどすべてRPAに再現させることができる。
RPAで自動化できるか迷う時には、「基本的に誰がやっても同じ結果になる業務か否か」を軸に判断するといい。
RPAを選定する前にすべきこと
適切なRPAを選定するためには、事前に「目的」と「対象業務」を洗い出すことが必要である。その内容によって、RPAツールの選定基準の中で重視すべきポイントが変わってくる。
①目的
自社のRPA活用の目的を明確にしておく。目的は「従業員向け」と「顧客向け」の両方の視点で整理するといい。その上で、社内にその目的を伝達することが重要である。
さらに目的を考える時には、自動化して空いた時間を何に使いたいかということも事前に洗い出すこと。これらを洗い出しておくことで、シナリオ作成のモチベーションの向上や、後々の導入効果の計測にも役立つ。
②対象業務を洗い出す
「RPAで自動化できたらいいな」という対象業務を洗い出す。コツは、以下のようなパソコン業務がないかアイデアを出してもらうことである。
- 「ちょっと面倒だな」と思う業務
- 「他の人でもできそうだな」と思う業務
- ミスが発生しやすい業務
※自動化業務洗い出しシート
https://www.rpa-support.com/report
業務をいくつか洗い出せたら、次にシナリオ作成する優先順位を付ける。いきなり難しいシナリオに着手した結果、挫折してしまうケースがよくあるので、導入したては、なるべく簡単そうな業務から作るといい。
RPAツール選定のポイント
RPAと言っても、様々な開発メーカーから製品がリリースされている。RPAツールの選定で難しいのは、費用が高ければ実現性が高まるものでもなく、費用が安ければよいというものでもないこと。あくまで、自社の業務内容や、スキルレベルに照らし合わせて、「使い勝手」と「費用」を勘案しながら判断する必要がある。
RPAの選定の際は「動作環境」と「記録方式」だけでなく、以下のポイントを確認するといい。
- アプリケーションの互換性(自社で利用しているシステムとの相性)
- 機能の充実
- 直感的なわかりやすさ
- 料金体系に表れるメーカーの設計思想(思想がユーザーの方を向いているか、共感できるか)
- アップデート事情(ユーザーの声を拾い上げて開発するスピード感)