社内起業家とは
一般的には、新しい事業を起こすというと、独立して起業することをイメージするが、方法は必ずしもそれだけではない。例えば、社内起業家(イントレプレナー)になるというのも、その選択の1つである。社内起業家とは、組織に所属しながら起業家のように働き、事業を起こす人のことである。社内起業家には、2つの側面がある。
①「企業人」「組織人」としての顔
企業や組織に所属している以上、自分が全体の活動の一部に組み込まれている。組織全体のパーパス、ビジョン、戦略に沿って、自分自身の担当領域の中で活動することが求められる。
②「起業家」「事業家」としての顔
取り組む事業に関する最終責任者、意思決定者である。「ゼロ」から事業をスタートする中で、自分自身ですべてを決めなくてはならないし、その責任は原則として自分自身で負わなければならない。
社内起業のメリット
社内起業の1番のメリットは、既に利益の出ている「既存の事業体」の傘下でスタートできるという安心感である。組織的には独立していても、全くのゼロからビジネスをスタートするのではなく、利用できるリソースや支援が多くなる。具体的なメリットは大きく4つある。
- 資金面で安定している
- 会社運営のインフラが整っている
- 既存事業からの応援、リソース支援
- 既存事業で培った「ブランド」と「信用」がある
社内起業のデメリット
社内起業では起業と名前がついていても、実際には社内活動の一環であることで制約が発生する。そのデメリットは以下の通りである。
- 事業に対する意思決定の自由度が低くなる
- 本体のビジネスのルールから逸脱しにくい
- 社内からの「逆風」(必ずしも全員から応援されるわけではない)
- リターンを総取りできない(社内起業した人自身が受け取れるリターンはごく一部)
イントレプレナーを「組織人」として見れば、業務の成果が「会社のもの」であるという考え方は妥当であるし、「起業家」の側面を見ると、明らかにリターンが少ないと考えられる。多くの人が指摘する「割に合わない」というのは、ここに理由がある。社内起業のコスパをどう判断するかは、実際に取り組むビジネスの内容、細かい条件、社内のカルチャー、経営者の理解など個人の状況や考え方で判断するべきである。
社内で新規事業に取り組む3つのきっかけ
①「事業提案制度」に手を挙げて応募、審査を通過する
最近では多くの会社で「新規事業提案制度」を実施している。事業を始める1つのきっかけは、「会社が用意している仕組み」に自ら手を挙げて、正式に通過して事業をスタートさせるケースである。
②「新規事業開発部門」「新規事業」へ異動する
通常の異動と同様、会社からの指示として新規事業に取り組む。
③「課外活動」の延長線上で事業をスタートさせる
業務とは関係なく自主的に活動をはじめ、その実績をもって会社に事業として認めてもらうケースもある。このケースでは、会社や職場のサポートの状況はケースバイケースである。
「いつか、この会社で新しいことをやろう」と考えて入社した人はいない。社内起業は、最初から考えていたことではなく、配属された業務に誠実に取り組んで、様々な経験をしながら考えた結果、生まれた選択肢だと言える。
社内起業のアイデアはどこから生まれるのか
社内起業家は、アイデアを思いついたタイミングや経緯に関しては、それほど関心がない。彼らはまず、普段から「こんなものがあればいいのに」「不便だと感じることはないかな」「どんなことが流行っているのだろう」と、色々なことに目を向けて生活している。
その中で自然にアイデアを思いついている。自分なりに少し考えて、少し調べて、気軽に「あれいいな。これもいいな」「これはできるのではないか」と常に「自分だったらどうするのか」と考えてアイデアを考える習慣がついている。
さらに、ほとんどのアイデアがボツになっている。アイデアは基本、「ボツ」になる前提で、質よりも量で1つのアイデアに執着せず、気軽にその良し悪しを判断している。日々、これらを自然と繰り返しているので、「苦労してアイデアを絞り出した」という感覚はない。自分がやりたいことを「発想する」行為が普段の生活に溶け込んでいるので、わざわざアイデア出しのために時間をとって、無理に捻り出すことはしていない。
誰かの「困りごと」や「不(不足、不経済、不便、不安、不快、不満)」を「自分たちなら解決できるのではないか」、そして「それは自分たちがやりたいことと合致しているのではないか」という順番で検討するのは、成功率の高いパターンである。顧客とその困りごとからスタートして、それを自分や会社が解決できるのであれば、ビジネスになる可能性がある。