エフォートレス思考とは
頑張りが成果につながることは事実だ。だが、それには限界がある。あるポイントを超えると、いくら時間とエネルギーを費やしても、それ以上の効果は得られない。疲れれば疲れるほど、頑張りから得られるリターンは少なくなる。無理やり頑張り続けた先にあるのは、燃え尽きて起き上がれなくなった自分だ。
力を抜いて成果を出すのは、決して怠惰なことではない。むしろ、スマートな生き方だ。エフォートレス思考とは、働き方や生き方を、すっかり変えてしまう試みだ。エフォートレス思考は、次の3つのステップに分かれている。これらを順に身につければ、なんの苦労もなく、最高の成果を出し続けることが可能になる。
- エフォートレスな精神
- エフォートレスな行動
- エフォートレスのしくみ化
エフォートレスな精神
頭に余計なものが詰まっていると、何をするのも難しくなる。疲労は動きを鈍くする。古くなった考えや感情を溜め込んでいると、新しい情報が入ってこない。だから最初のステップは、頭と心の中のガラクタを取り除き、スペースをつくることだ。
・頑張れば成果が出るとは限らない
「困難な仕事をなんとしてもやり遂げてみせるぞ」と意気込む代わりに、「どうやったらこの仕事がもっと楽になるか」と考えてみる。
・「我慢」を「楽しい」に変える
嫌なことを我慢するより、楽しくできるやり方を探す。コツは、大事な行動に、わかりやすい報酬を結びつけることだ。
・頭の中の不要品を手放す
不満ではなく、感謝に注意を向ければ、世界の見え方は変わる。「不足思考」(後悔、妬み、不安)が消え、「充足思考」(順調、恵み、楽しみ)へとシフトする。今あるものに目を向ければ、足りないものが手に入る。
・「休み」で脳をリセットする
やりすぎを防ぐためには、シンプルなルールに従えばいい。1日の仕事は、1日ですっかり疲れが取れる程度まで。1週間の仕事は、その週末ですっかり疲れが取れる程度までに制限する。
・今、この瞬間にフォーカスする
注意力を鍛えると情報処理速度が格段に上がる。練習すれば誰でも、ノイズを無視して重要なことにフォーカスする力を身につけられる。
エフォートレスな行動
完璧主義や自信のなさは、大事なことに取り掛かるのを遅らせ、正しいタイミングで終わらせることを難しくする。必要以上に仕事を増やしたり、無理なスケジュールを立ててしまい、正しいペースをつかめなくなる。やるべきことをなるべくシンプルに、簡単にやり遂げることだ。
・ゴールを明確にイメージする
仕事を困難にするための確実な方法は、ゴールを曖昧にすることだ。明確なゴールのないプロジェクトは、決して完成させられない。コストとリターンが逆転するちょうど手前を「完成」と定める。時間と努力を無駄にしないためにも、「完成」のイメージを明確に定義し、そこにたどり着いたら潔く終わりにする。
・はじめの一歩を身軽に踏み出す
重要なプロジェクトを始める時、その先に待ち構える様々な困難を予想して、怯んでしまう人は多い。それを避けるには、明確な「最初の一歩」を決めることだ。最初の一歩が遠すぎるなら、さらに複数のステップに分割するといい。
・手順を限界まで減らす
仕事が煩雑すぎる時には「完了するために最低限必要なステップは何か」と問う。不要なステップを排除すれば、重要なプロジェクトに全力を注ぐことができる。
・よい失敗を積み重ねる
重要なことを追求する時も、最初から完璧を目指さないほうがいい。手軽に失敗して修正できるようなモデルをたくさんつくる。そうすれば本当に重要なことを学び、最短ルートで成長できる。
エフォートレスのしくみ化
累積的な成果の場合、一度努力するだけで、あとは何もしなくても自動で成果がついてくる。エフォートレスなしくみを設計すれば、レバレッジを効かせて、利息が積み重なるように成果を増やすことが可能になる。
・一生モノの知識を身につける
手軽な解決策に頼っても、直線的な成果しか得られない。累積的な成果を得ようと思うなら、原理原則に目を向けなければならない。
・いちばんシンプルに伝える
人に教えると、自分も効率よく学ぶことができる。誰かに教える機会があるかもしれないと考えるだけで、学びの濃度は高まる。最も重要なメッセージを明確にし、それを単純化すれば、たやすく累積的な結果を残せる。
・勝手に回る「しくみ」をつくる
極端に複雑な作業をしていると、認知的負荷が過大になり、ミスを起こしやすくなる。必要なのは知識を増やすことではなく、ワーキングメモリに負担をかけない新たなやり方を探すことだ。重要なことを自動化するためには、チェックリストなど、ローテクなやり方が意外と役に立つ。