アート思考とは
人間が本来持っている個性や創造力を発揮し、新たな発想と論理性、そして自分の「軸」を統合し、事業を生み出す。これこそが、閉塞感に満ち、先行き不透明な社会で最も求められているアート思考の本質である。
今までにないアイデアやビジョンを生み出す上で重要なのが、個人の強い意志である。自分軸で物事を考えると、少し違う視界が開ける。個が創造性を発揮して初めて、新たな発想や過去とが違う切り口の事業アイデアが生まれる。そのプロセスをサポートするのがアート思考である。
なぜアートなのか。「自分軸=アーティストのように考える」という点もあるが、一番大きい理由は、アートはビジネスから遠く、表現の自由があるからである。既成概念を取り払うのに最も適したものなのである。
最も大事にしているのは「自分軸」である。アーティストが「自分らしさとは」「これは自分らしいテーマや表現なのか」と自問しながら自分軸を柱にアウトプットを続けるように、ビジネスパーソンも自己探索して、自分軸を意識することが重要である。常に自分軸と向き合うことで、「情熱」が出てきて、ビジネスの様々な過程で悩み苦しんでも、実現に向けてモチベーションとなり、壁を突破する力となる。受け身ではなく自発的に走り抜き、最後まで粘り、最終的には良い形に持っていける確率が上がる。
アート思考をビジネスに取り入れるために大切なこと
①意思決定をする経営陣が「ビジネスには感性も欠かせない」を理解していること
面白さや創造性に関心を持たず、「売上は? コストは?」といった追及ばかりしていると、言われた方は萎縮してしまい、発想を出すことが難しくなる。最初に売上やコストだけを強調してしまうと、途端に既成概念にとらわれ、論理的な解、つまり「誰に説明しても納得感のあるもの」を探すようになる。結果、創造性のある事業は生まれにくくなる。
②次の時代を担うビジネスパーソンが、自分軸を意識した「経営者目線」を持つこと
経営者目線とは、会社全体に目を配り、包括的な視点でできるだけ大きな思考の自由度を持つことである。ただ、自由の海は、何らかの軸がないと泳ぎきれない。そのために自分軸を意識し、明確にしておくことが大事である。自分軸を意識した経営者目線を持つと、自分のやっている事業も違った目で見え、何か気づきがあるかもしれない。
感性と論理性を備えたアイデアを目指す
既成概念から離れ、自分軸を意識しながら自由に発想すると、面白い、創造性のあるアイデアが色々と出てくる確率が上がる。ただ、現在のビジネスシーンでは当然、面白さだけ追求するのではなく、論理性もなければ成り立たない。
あるレベル以上の創造性と論理性が入ったアイデアを「インプロ創造性」と名づける。感性(創造性)と論理性(実現可能性)の2軸を行き来する。途中では、「実現可能性の天井」や「発想の壁」にぶつかる。頭を柔らかくしたり、視点を変えたりしながら、これらの天井や壁を乗り越える方法を考え抜き、インプロ創造性を目指す。
創造性との向き合い方
①たくさんの異質な体験をする(インプット)
新しいアイデアはこれまでのものの組み合わせに過ぎない。本質的に創造性を育むには「たくさんの異質な体験が」必要である。この体験を脳は無意識に蓄積する。同質な体験がいくら増えても、新たな視点は得にくい。
②「4B」開放(アウトプット)
異質な体験をするのも大事だが、それだけでは脳が無意識にそれらを格納するだけなので、創造性を発揮することにはつながらない。発想が出やすい場面には、共通した「4B」がある。
- Bed:朝のもうろうとした時、夜寝る前
- Bus:交通機関に乗っている時
- Bar:飲んでいる時
- Bath:シャワーや風呂に入っている時
これらの共通点は、「脳や身体がリラックスしている状態」「何も考えていない状態」である。この状態を「デフォルト・モード・ネットワーク」と呼び、創造性と相関が強いことが科学でも証明されている。
③降りてくる
創造性とは準備している人にだけ、ある確率で降りてくる。たとえ創造性や発想が降りてこなくても、諦める必要はなく、準備だけはしておこうと気軽に構えておけばいい。
創造性を引き出す「発想のタネ」
「発想のタネ」とは、アートを生み出す時の発想と、ビジネスの実体験から抽出した「今ある発想から、別の発想を生み出すためのキーワード」である。アイデアに行き詰まった李、ありきたりなアイデアを面白くしたりする時に活用する。
- つなぐ
- 入れ替える
- ズラす
- 絞る
- 破壊する
- 俯瞰する
- 大きく捉える
- ミクロを見る、例外を見る
- 常に否定する
- 伸ばす、拡張する
- 突き抜ける
- 意識して捨てる
- 意味合いを変える
比較的使う頻度が高い、発想のコアとなりそうなものが「ズラす」「つなぐ」「入れ替える」「絞る」「俯瞰する」「破壊する」である。