読んだ後が大事
読書を通じた独学において何が知的生産性を分けるポイントになるのか。一般によく誤解されているのが「読書量こそがカギだ」というものである。確かに一定の量を読まなければ高い知的生産性を発揮する事は難しい。しかし、量は必要条件であるが、十分条件ではない。
読書を通じて知識を得るというのは、シェフが食材を仕入れるようなもの。シェフは仕入れた食材を冷蔵庫にしまって、客の要望に応じてそれらの食材を組み合わせる事で素晴らしい料理を生み出す。知的生産に従事するビジネスパーソンも、様々な本から得た知識を貯蔵し、文脈に応じてそれらを組み合わせる事で知的成果を生み出す事が求められる。
「読書はそれなりにしているのに、いまひとつ仕事につなげられない」という人は、「仕入れの量」に問題があるのではなく、「仕入れた後」、即ち情報の整理・貯蔵の仕方、仕事の文脈に合わせて情報を組み立てる力に問題がある。だから、読書で得た知識や感性を仕事に活かそうとした場合、大事なのは「読んだ後」となる。
「仕事につなげる読書」6つの大原則
①成果を出すには「2種類の読書」が必要ビジネスパーソンが継続的に高い知的生産性を上げるためには、以下の2種類の読書が必要である。
・ビジネス書の名著をしっかり読む、基礎体力をつくるための読書
・教養に関連する本を読む、ビジネスパーソンとしての個性を形成するための読書
この2つが揃う事で初めて「その人らしい知的成果物」を生み出す事ができるようになる。ビジネス書の知識は「知っていて当たり前」になるから、差別化の源泉にはなりにくい。そこで求められるのが教養(リベラルアーツ)に関連する知識である。
②本は「2割だけ」読めばいい
「効果の80%は全体の20%によって生み出されている」というパレートの法則は、多くの本についても当てはまる。効率的に読書からインプットを得るには、この20%の「ミソ」となる部分を見抜くかが鍵となる。ここでポイントとなるのが「軽く、薄く全体を斜め読みする」という事である。
③読書は「株式投資」と考える
読書というのは消費ではなく「投資行為」と考えるべきである。この投資の原資になっているのは本に払った代金と自分の時間であり、リターンは知識や感動などの非経済的な報酬、あるいは仕事上の評価や昇進といった経済的な報酬となる。ポイントになるのは、読書を投資行為と考えた場合、最も大きなコストになっているのは「自分の時間」だということ。そのため、これ以上時間を投入しても、追加で得られる豊かさは増えないと判断された時点で、その本と付き合うのは終わりにする。
④「忘れる」事を前提に読む
本は読むだけでは成果につながらない。インプットを知的生産の文脈に合わせて自由に活用できなければ意味がない。そのためには、情報を効率的にストックし、活用する事が重要になる。この時に「記憶に頼らない」仕組みを作る事が大切である。本を読んで重要だと思われた箇所をデジタルデータとして転記し、いつでも検索して確認できるようにしておく。自分が重要だと思った情報は、脳内に記憶するのではなく、いつでもアクセス可能な場所=イケスに生きたまま泳がせておき、状況に応じて調達し、他の情報と組み合わせて調理=知的生産する方が合理的である。
⑤5冊読むより「1冊を5回」読む
「広く浅い読書」を繰り返していても知的ストックは積み上がらない。大事なのは、何度でも読みたくなるような深みのある本を見つけて、それを何度でも読む事である。
⑥読書の「アイドルタイム」を極小化せよ
本は10冊以上を同時進行で読む。そうする事で稼働率が高まる。読みかけの本が仮に20冊あると、どれかが気分にフィットする確率はずっと高くなる。