テレワーク時代のマネジメントの教科書 「見えない部下」をどう管理するのか?

発刊
2021年4月21日
ページ数
232ページ
読了目安
411分
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推薦者

テレワークではどのようにマネジメントすれば良いのか
パーソル総合研究所が行ったのべ9万人を対象としたテレワーク下での働き方に関する調査を公開し、テレワークの課題を紹介。テレワークのメリットを活かしながら、どのように課題を克服すべきか、これからのマネジメントの方法が書かれています。

テレワークに適したマネジメントで重要な3つのこと

テレワーク下では、様々な要因によってメンバーの不安感や孤独感が増大したり、生産性が落ちたり、また、逆にエンゲージメントや求心力が上がったりする。同じ場にいることで、空気感を共有し、なんとなく組織が回っていたこれまでのマネジメントから、相手が見えない中でもチームを信頼し目標をもって成果を生み出すためには、テレワークに適した新しいマネジメントのスタイルを生み出していく必要がある。その際、核となる重要なポイントは次の3つである。

 

①心理的安全性の確保

心理的安全性とは、以下の通り定義する。

  • メンバー1人1人が、安心して自分らしさを発揮しながらチームに参加できていること
  • 「ミスをしたら罰せられたり、評価を下げられたりするのではないか?」という恐怖感を持っていないこと
  • 「周囲に手助けや情報を求めて相談したら、不快に思われたり、恥をかかされたりするのではないか?」という懸念を持っていないこと
  • お互いに信頼、尊敬しあい、安心して弱い部分もさらけ出せること

 

心理的安全性の高いチームと単なる仲良しグループは似て非なるもの。重要なのは、批判的な意見であっても、上下関係や部署間の壁を越えて安心して口に出すことができるということ。

優れた組織とは多様な意見を出し合い、人数以上のパフォーマンスを生み出せるものである。どれだけメンバーの数が揃っていても、みんなで足並みを揃えて役職の高い人の意見に従うだけであったら、生産性を高めていくことは難しい。

テレワークになると見えないことから不安感が増大するので、「心理的安全性の確保」がさらに重要になる。

 

②見える化・共有化

テレワークになると、メンバーの姿が見えなくなるだけでなく、業務の進み具合も、何に向かって仕事をしているのかも、自分が周囲からどう思われ何を期待されているのかも、すべてが見えにくくなる。そうなると、不安感が増大するだけでなく、チームの連携もしにくく、効率も悪くなり、生産性も低下する。

そもそもの経営理念から、個別の業務の目的・期限、評価の基準、社内の人材のスキル、日々のスケジュールに至るまで、すべてを見える化・共有化することを意識することが重要になる。上司は「何のためにこの作業をするのか、いつまでに成果物が欲しいのか、どの程度の水準を求めているのか」といったことを、これまで以上にきっちりと詰め、記録して見える化し、共有することが大切になる。さらにメンバー全員のスケジュルが見える化されていれば、進行状況もわかりやすくなり、声をかけやすくなったする。

 

③ICTを使ったコミュニケーションスタイルの確立

コミュニケーションのほとんどがICTツールを介して行われるので、ICTの使いこなしがコミュニケーションの質に直結するようになる。重要なのは、対面のリアルのコミュニケーションと、こういったICTを使ったコミュニケーションでは、そもそも伝わる情報量も違えば、マナーも違うので、リアルのコミュニケーションとは違ったスタイルで使いこなさないといけない。

 

これら3つのポイントは、それぞれが繋がり、お互いに影響し合っている。「いかに心理的安全性を構築していくか」ということは、「いかに良質なコミュニケーションをとっていくか」ということに直結する。

 

上司の役割

テレワークでのマネジメントにおいて最初に変わらなければならないのは、マネージャーの意識と役割である。これまでの支配型の上司から、一人一人をケアできる観察力の高い上司への転換が求められている。

 

テレワークでは「上司から公平・公正に評価してもらえるか」「成長できるような仕事を割り振ってもらえるか」といった上司に対する不安感やキャリアに対する不安感が顕著になる。出社して仕事をしていると、仲間同士の雑談や周囲の様子から、相対的に自分を位置付け、そこから自分の行動を省みたり、次の戦略を練ったりすることができた。テレワークになると、そうした他者の様子が一切見えなくなるため、集団の中で自分を相対化することができなくなる。そうすると頼りになるのは上司の直接的な言葉だけになる。ここで声をかけてもらえないと「自分は見てもらえていない」という気持ちが非常に強くなる。

「見てもらっている感」を持ってもらうためには、定期的な1on1をZoomなどで実施して、部下の話を聞くのはもちろん、日常業務の中で、ちょっとした声かけをするだけでも効果がある。

 

上司の観察力の欠如は、部下を不安にさせるだけでなく、パフォーマンスにも悪影響を及ぼす。「君のことをちゃんと見ているよ、理解しているよ」ということを部下に伝えるには、一度相談されたことや、話題になったことを覚えておいて、しかるべきタイミングで上司側からコミュニケーションをとることが大事である。