CEOの役割
多くの書籍は、CEOの役割として「事業戦略」と「企業文化」の重要性を強調する。しかし、爆速成長型の企業でセオリー通りに進めようとしても、信頼できる経営陣を揃えて自分の時間を意識的に管理できるようになるまで、CEOはそれらに割く時間を全く取れないのが現実だ。
戦略設定やビッグピクチャー的なことよりも、話題に上りにくいCEOの責務の戦術には次の3つがある。特に最優先なのは、自己管理だ。これに失敗すると、CEOは燃え尽き症候群に向かい、CEOと会社の両方が苦境に立たされる。
①自己管理
会社の拡大に合わせ、CEOの役割も変えなければならない。CEOが必要とされる領域は非線形的に増えて行き、社員、顧客、投資家、メディア、他の起業家や様々な外部の利害関係者が話をしたいと言ってくる。CEOの責務として、自身の時間で最もレバレッジが利くものを判断しなければならない。そのためには「ノー」をたくさん言えるようになるのが重要だ。
- 権限委譲
- カレンダーの振り返り習慣
- 「ノー」という回答を増やす
- これまでの働き方が通用しないことを自覚する
- 人生で本当に大切なものに時間を充てる
②直属メンバーの管理
CEO直属チームのマネジメントにはいくつかコツがある。
- 定例の1on1ミーティングを実施する
- 社員が30人近くなったら、週次の全社会議を実施する
- 拡大した組織とのつながりを維持するために、組織図の下層にいる従業員と直接会って話す機会をつくる
③取締役の管理
取締役会は人員が出入りすることで変わるのは言うまでもなく、会社のライフサイクルに応じて意図的に進化させなければならない時もある。未熟な会社が、爆速成長モードのスタートアップへと成長する時、取締役の構成を変える必要がある。退任させるのは大変な作業なので、選任時に正しい人物を選ぶことが重要だ。
人材の募集・採用・マネジメント
会社がスケールするのに伴って直面する最大の課題は、社員の採用方法と入社後研修の見直しだ。年10人の採用から週10人の採用にスケールする時には、いくつかの仕組みを事前に導入しておく。採用基準を高く保ち、優秀な人材を採用する環境を長い期間維持できる。
- あらゆる役職のジョブ・ディスクリプション(職務内容書)をつくる
- 全候補者に同じ質問をし、比較や検討する
- 候補者をスコア評価システムで管理する
- 多様性のある候補者を意識する
多くの企業は、優秀な人材を採用するための面接には何ヶ月もかけるのに、入社後に活躍してもらうためのオンボーディング研修にはほとんど時間をかけないという間違いを犯している。会社のオフィスマネジャーや人事部長は新人をオンボーディングする際に以下を実施すべきである。
- ウェルカムレターを書く
- 社内特有のルールを伝える係として、パートナーとなる同僚をつける
- オーナーシップを持たせる
- 学び続ける姿勢がなく、成長しない古参社員は役割を変える
経営チームをつくる
優秀な経営幹部の採用は簡単ではないが、取り組む価値は十分にある。経営幹部を採用する時は、12〜18ヶ月先に求める経験を持つ人物を探すのが望ましい。それよりも短期で考えると採用コストと拡大スピードが噛み合わない。それより長期で考えるとやるべき仕事に対してオーナースペックな人物を雇ってしまうことになり、業務内容に合わなくなる。
役割に関係なく、経営幹部が備えるべき重要な能力や資質は次の通りである。
- 担当部門の専門知識
- 担当部門でチームをつくり、マネジメントする能力
- 人間関係を築く力
- コミュニケーション能力の高さ
- オーナー・メンタリティ
- スマートさと戦略的思考力
それぞれ優れた人物を配置するにはどうすればいいのか。優れたCFOやエンジニアリング担当バイスプレジデントがどんな仕事をしているか本当に知りたいなら、実際にその仕事に就く優秀な人物に会ってアドバイスを受けるのが一番だ。彼らがCFO採用をするなら重要視するのは何か。どんな特徴を見ているのか。自社の規模と成長ロードマップの18ヶ月後で照らし合わせた場合に求めるべきはどんな人物か。
役職に求める理想像ができ上がったら言語化し、経営幹部や面接官など、幹部採用に関わるチームに共有する。関係者全員で求める人物像を理解し、判断基準を共有しておくべきだ。