実戦! 上場スタート

発刊
2016年6月30日
ページ数
208ページ
読了目安
213分
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推薦者

実現可能性の高い経営計画の作り方
3社の企業をIPOに導いた著者が、実現可能性の高い経営計画の立て方を解説している一冊。株式公開にあたって厳しく審査される業績管理の方法について、実際の経験から得たノウハウが書かれています。

リアルタイムで業績の把握を

プロジェクトの進捗の把握は「週次」で見る。週ごとに見直せば、業績の着地があまりズレない。さらに国内外の経済情勢など、外部環境の変化に速やかに対応することが可能になる。特に1案件の規模が売上に占める割合が高いような会社、1つの販売先への依存度が高い会社は、週次での把握が効果的である。売上の5%を占めるものが1つでもあれば行うべきである。

何かが計画からズレていたとしたら、何が想定内で何が想定外かをきちんと把握する。想定外が多かったら、速やかに修正を適時開示していく。見通しを立てる時には、楽観シナリオ、悲観シナリオ、中間の中立シナリオの3つを用意する。

週次で業務を把握するためには、各事業部の協力がなければ成り立たない。事業部からスピーディに、正確な情報が上がってくる仕組み、体制づくりが重要である。

 

費用面についても細かなチェックを

経費のチェックは細かく行う。その会社ごとに勘定科目だけでなく、支払先ごとベースで、前年比の動向を全て洗い出す。部門は予算を保守的に組むため、費用は多めに出す。しかし、前年に使っていないようなものがあれば全てチェックし、事業展開に差し支えない範囲で、より少ない経費にコミットさせる。

但し、事業部の経費は筋肉質にしつつ、どこかで不足の事態に備えたバッファを用意する。経済環境が急激に悪化するリスクなども睨みながら、楽観的に見るのではなく、何が確度が高くて、何が低いのかを認識しておくことが重要である。

 

実現可能性の低い計画よりも、保守的で確度の高い計画を出す

経営計画を策定する時に難しいのは、楽観と悲観の「さじ加減」である。市場に開示する計画数値は悲観的で良い。誰にでも実現できる目標を外部、特に上場している場合には市場、投資家に説明するのは簡単かもしれないが、上方修正すればいい。あとは投資家なりアナリストが判断することである。

 

ゴールから逆算して物事を考える

週次、月次の管理と共に重視するのは、業績の「着地見込み」である。単月の売上や業績、年度累計の数字はわかっていても、それが今度は年度の予算に対して今残りはどうなっているのか、どういう数字で着地しそうかということを見ていくことが大事である。

 

実現性の高い経営計画の特徴

経営計画の実現性評価とは、貸借対照表や損益計算書を主とした財務目標を達成するために、経営計画に盛り込まれている戦略や戦術に妥当性があるか、達成可能性は十分かを評価することである。実現性の高い経営計画には次の特徴がある。

①理念、ビジョン、戦略に基づいた具体的な計画になっている
全社計画が社員1人1人の具体的な活動計画にまで落とし込まれている
②その目標レベルが明示されている
さらに責任者やスケジュール、期限が明確である
③計画の前提条件としてフレームワークに基づいた分析がなされている
事業リスク分析とその対策案も講じられている
④市場規模や成長率の見方・捉え方に慎重である
積算の前提条件は算定根拠をしっかりと持ち現実を踏まえている

計画策定の際、注意しなければならないのは、経営計画の蓋然性を高めるために、単純に目標値を下げるやり方である。現実的なラインを見せて終わりにするのではなく、いかに策を練って当初目標にまで積み上げさせるかが重要である。

実際の場面では、実現性の低い施策についても、いくつかチャレンジ目標として計画に入れ込むことになる。重要なのは、何が実現性が高く、何が低いのかをきちんと理解した上で計画を策定することである。そして実行局面においては、実現性に応じた優先順位付けや軌道修正を行うことが重要である。

 

3社のIPOに共通すること

3社のIPOに共通することは、3社の社長共にIPOに懸ける熱い思いがあったこと。事務局側に想定質問や資料の作成を任せっきりにせず、上場申請時も社長面談時も、自らの回答や資料を作成するなど入念な準備をして、IPO当日に臨み、上場後にしっかりと会社を成長させる熱い思いを語っていた。創業者であるトップの思いは重要である。

審査の中身は何も予算策定、予実管理は相当厳しいものがあった。特に予算の根拠は事細かに資料の提出を求められ、しっかりとした策定根拠があるか否かが審査の肝になる。また、上場準備中は、準備期間をできる限り短くするため、スピード感を何よりも重視して進めることが肝要である。

審査はその時々によって重点テーマが変わり、それが厳しく審査される。未払い残業などの労務、内部統制、情報セキュリティ体制、業績の確度など、重点テーマを押さえて臨むことも肝要である。

私利私欲ではなく、社会の発展や社会的課題の解決に貢献する強い思いが、パブリックカンパニーである上場企業には重要である。