笑顔あふれるテーマパークの秘密

発刊
2020年11月4日
ページ数
220ページ
読了目安
198分
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推薦者

なぜアドベンチャーワールドは動物園ランキング1位をとれたのか
和歌山県白浜にある動物のテーマパーク「アドベンチャーワールド」の3代目社長が、社員が活き活きと働く同社の経営を紹介している一冊。動物園ランキング1位に輝いたのは、ゲストが喜ぶために社員やスタッフが自主性を持って働いているからだと説き、人気のテーマパークをつくるために大切なことを書いています。

看板スターに頼らない経営

和歌山県西牟婁郡白浜町にある「アドベンチャーワールド」はサファリパーク(動物園)とマリンパーク(水族館)、遊園地を併せ持った日本唯一の複合型テーマパークである。2018年には、世界最大の口コミサイト「トリップアドバイザー」の旅行好きが選ぶ日本の動物園・水族館ランキングで1位に選ばれた。

 

アドベンチャーワールドの開園は1978年。2018年に40周年を迎えた。毎年、国内外から100万人以上のゲストが訪れる。しかし、そんなアドベンチャーワールドも、常に一定の人気を集め続けてきたわけではない。アドベンチャーワールドは開園当時、140万人を超える入場者数を誇っていた。当時は動物園と水族館を併せ持つスタイルの物珍しさ、サファリパークブームもあったが、その後こうした物珍しさやブームが薄れるに伴い入園者数は減少。年々右肩下がりとなり、8年目の入園者数はピーク時の半分の約70万人にまで減少した。

その危機から脱するきっかけの1つとなったのが「オルカ(シャチ)」の存在だった。1988年に「オルカスタジアム」は新たにオープン。そのダイナミックなパフォーマンスが話題を呼び、入園者数は少しずつ増えるようになった。この年はジャイアントパンダが2頭来園したこともあり、徐々に活気を取り戻していた。1992年には、入園者数が再び100万人を突破した。

ところが、2004年に看板スターであったオルカの相次ぐ死により、人気ショーを中止せざるを得なくなった。看板スターだけに頼っていてはいけない。オルカの死をきっかけにその後のアドベンチャーワールドはブランディングし直そうという動きが生まれた。イルカショーをメインコンテンツに各所でリニューアルを行っていった。新しいイベントや動物見学ツアーも企画し、様々な改革を進めていった。

そこで生まれたフレーズが「だれもがキラボシ」。このフレーズの意味は、特定の動物や人にスポットライトを当てるのではなく、誰もが存在感を発揮できるような風土にしていこうというもの。全員がスター、キラボシ(輝く存在)でなければならないということを学んだ。

 

社員の自主性を大切にする

ゲストや社会にSmileを届けるためには、まずは社員のSmileが必要である。そのためには「だれもがキラボシ」として、それぞれがそれぞれの場所で自分らしく輝ける環境が必要である。誰か1人がスターになるのではなく、誰もがスターになる。特定の動物だけがスポットライトを浴びるのではなく、みんなが浴びる。動物だけでなく、社員もスタッフも。そんな環境づくりを目指している。

アドベンチャーワールドでは「だれもがキラボシ」のフレーズのもと、一人ひとりが自主性を発揮して存在感を示すことができる。ただそこに1つの大前提がある。それは与えられる側ではなく、与える側に立つということ。アドベンチャーワールドは動物たちを通してゲストに楽しんで頂くテーマパークなので、自身が与える側に立って、仕事に取り組んでいかねばならない。ゲストに楽しんでもらうためにも、動物たちのコンディションに常に気を配り、トレーニングに心血を注ぐことも求められる。

 

理念を社員と共有する

アドベンチャーワールドは単なる動物園でも遊園地でもいけない。アドベンチャーワールドでしか体験できないものを提供する必要がある。そしてそれを創るのは、社員一人ひとりである。

社員が一人ひとり自ら考えて行動するために必要なことは「ミッション(企業理念)」と「権限委譲」の2つ。「何のために存在して、何をして企業としてあり続けるのか」、この問いに対する答えを企業と社員が共有した時、目の前の仕事は単なる「仕事」から「使命(ミッション)」へと変わっていく。