カルチャーを言語化せよ
社員にとって「いい会社」とは極めて主観的な概念であり、普遍的に誰にとっても「いい会社」というわけではない。あくまで個人の主観として、自分の期待する通りの環境であれば「いい会社」だと捉える。つまり、社員が期待する環境と、会社が提供する環境のギャップが少ない会社を「いい会社」と定義できる。
「いい会社」であるために重要なのは「適切な期待値を設定する」ことである。意思決定や情報共有の方法、権限委譲の度合い、残業の有無、働き方、コミュニケーションなど、業務遂行上のやり取りや環境、社内外で感じられる雰囲気や空気感のすべて、「組織文化」や「企業風土」と呼ばれるものが、社員の期待値とズレないように設定されていることが大切である。
「組織文化」や「企業風土」は、多くの場合きちんと明文化されていない。そのため、新しく社員を採用しても、エンゲージメントの低下や離職につながる。こうした不幸を生み出さないためには、企業と社員の期待値ギャップを減らし、誰もが自分にとって「いい会社」を見つけられる「カルチャーモデル」を推進すべきである。
ビジョン・ミッション・バリューからカルチャーが作られる
企業のカルチャーは意識しようとしまいと、私たちの日々の意思決定に影響を与えている。企業のカルチャーには、創業以来、経営者や歴代の社員が企業活動を行う中で、受け継がれてきた価値観や文化、行動規範が「カルチャー」として醸成される場合の他、企業が明確な意志や方向性を持って、意図的に作り出すことができる。
経営者や組織が目指したい方向性、あるべき姿などに基づき、ビジョン・ミッション・バリューを設定し、明文化することで、カルチャーを作り出す。
・ビジョン:実現したい社会
・ミッション:(ビジョンを実現する上で)会社が果たすべき役割・使命
・バリュー:(ミッションを達成する上で)社員が取るべき行動指針
ビジョン・ミッション・バリューという企業や社員の存在意義とも言える極めて根源的なものこそが、カルチャーを形成する起点となる。バリューは企業活動における行動指針であるとともに、何を捨て、何を選択するか優先順位をつけることでもある。バリューは意思決定するための判断軸となるため、「企業として何を追求し、何を選択すべきか」を定義しておくことが大切である。
カルチャーモデル
カルチャーモデルは次の7要素で構成される。
①Stance:組織としてのあり方
自社が取るカルチャーの方向性を決めること。主に経営のリーダーシップスタイルのあり方によって定義される。
②Shared Value:行動指針
スタンスに基づいて、自社独自のバリューを定義する。バリューがカルチャーモデルの各要素を束ねる。バリューを中心に、その他の要素を整合性の取れた形で言語化し、制度などとして導入してゆくことで、カルチャーモデルをつくり上げていく。
③Structure:組織の構造・形態
④System:制度
⑤Staff:人の採用や育成
⑥Skill:組織としてのスキル、強み
⑦Style:組織風土
7Sを可視化・言語化することによって、組織全体へとカルチャーを浸透させていく。言語化されたカルチャーは、各部門のマネージャーが主体としてメンバーに働きかけ、ミッションを達成すべく組織をマネジメントする「ピープルマネジメント」によって、実行する。
経営スタンスの4象限
企業のカルチャーは、経営者や経営陣が取っているリーダーシップのスタイルによって、傾向が分かれる。この経営スタンスは4つの分類される。
①カリスマリーダー経営(中央集権×変化志向)
②チームリーダー経営(中央集権×安定志向)
③複数リーダー経営(分散型×安定志向)
④全員リーダー経営(分散型×変化志向)
これら①〜④はどれが良いかという議論ではなく、自社が組織運営する上での勝ち筋として、経営者・経営陣が「こうしたい」と思うものを選択的に選ぶことが必要である。経営としてのスタンスを明確化することが、自分たちが目指すカルチャーをつくることの大事な1歩目となる。