ゲーム理論とは
考え悩む人が、考え悩む人たちの社会の中で、どうやって考え悩むのか、どうやって意思決定するのか。それを研究する学問は「ゲーム理論」と呼ばれている。ゲーム理論は、経済問題、社会問題、ビジネス、人間関係、すべての局面において示唆を与えてくれる。
どうやって皆の意見をくみ取るか(戦略的投票)
全会一致という一見「なかなか議案が通らなさそう」な手法には思いがけない落とし穴があることが、数式を使って厳密に明らかにされている。どのように投票すべきかを考える時、他の投票者を確率的に行動するロボットのように考えるのではなく、他の人も頭で考える人間であることを加味する必要がある。
- 自分の行動を決めるには、他の人の行動の背後にある考えを読み解くことが重要である
- 自分が他の人の行動について考えていると同じように、他の人も皆の行動について考えているかもしれない
- 全会一致が最も慎重な決め方だとは限らない。多数決ならうまく皆の意見を汲み取れるとも限らない
なぜ人は話し合うのか(知識のモデル)
人によって社会で何が起きているかについて考えていることが違い、その中で人々がお互いの考えていることを予想し合う。この状況において、2人の人間が、毎日「五分五分」「8割がた合っている」などの確率予想のみを2人が言い合い続けると、その確率予想は両者でそのうち一致する。
- たとえ他の人と意見が一致していても、それは話し合いを終える理由にはならない。もっと情報を共有すると、意見は変わる可能性がある
- 情報を共有する時には、なぜ現在の自分の考えに至ったかを伝え合うと、お互い意見を変えることができる
相手がどうするかを読む(繰り返しゲーム)
友人同士の協力関係や、敵対する企業同士の関係など、人々の社会における相互関係は一度きりではなく、何度も続く。その中で、各人がお互い自分の利益のみを追求したとしても、相手の反応を伺いながら行動すると協力関係を築ける可能性がある。
- もし競合する企業同士で同じ商品を売っているのなら、価格はコストまで下がる
- 製品差別化がある場合は、価格を少し上げても利益が出る
- 今考えている戦略がベストかを判断するには、他の戦略をとった場合にどうなるかにも思いを巡らす必要がある
- 将来にわたり競争が続く企業同士は、高値を維持できる可能性がある
今後起きることを予測して考える(後ろ向き帰納法)
意思決定をする際には、今後起きることを今後意思決定をする人の気持ちになってまず予想して、それから自分の意思決定に立ち返ることが大切である。後ろ向き帰納法は時として非現実的な予測をもたらすこともあるが、多くの場合は有用である。
- 複数の意思決定者が次々に意思決定をする時に何が起きるかは、時間の流れる方向とは逆向きの順番で考える「後ろ向き帰納法」で予測できる
物事のバランスの決まり方(混合戦略均衡)
社会の中で、人々はそれぞれ異なる行動をとるかもしれない。しかし、人々が常に行動を変えて社会が混沌とし続けるとは限らない。異なる人同士の行動はそれぞれ違えど、各人の行動が変わらずに落ち着く状態というのは必ずある。そしてそれは、誰も自分の行動を変えても得をしないような状態である。
諸々の条件のもとでは、社会における人間の行動パターンは混合戦略均衡で予測されるものに落ち着くということが知られている。
- 社会での人間の行動パターンは、誰も行動を変えようとは思わない状態で落ち着く
- 社会でランダムに行われていることには、実はランダムであるべき理由があることがある
- 考えなしに、もしくは間違えて行動する人は、社会がうまいバランスにたどり着くのを助けている場合がある
相手の行動を見て考える(ゲーム理論の考え方)
人が何かするには理由がある。何かあったら、もしくはあると思っていた何かがなかったら、短絡的に人の不合理のせいにするのではなく、その理由を考える。これはゲーム理論で最も重要な考え方である。
このように考えると社会の見方が変わる。特に人の行動を変えたいと思っている時には、この考え方は有効である。
- 人の行動の裏側には、何か理由がある
- 自分の考え方を客観的に見てみると、わかることがあるかもしれない
- 社会の人々の行動は、全てを不合理のせいにできるほど簡単ではないが、相手の話によく耳を傾ければ、理由なんて大概、簡単なことである