ビジョンこそがリーダーシップの出発点
マネジャーが偉大なリーダーになるのを妨げている最大の要因は、目指すべき明確なビジョンを描けずにいることだ。自分は何者なのかという「目的」、どこを目指すのかという「未来のイメージ」、ビジョン実践の羅針盤となる「価値観」がはっきりしていないからだ。
どんなリーダーシップをとるにしても、出発点はビジョンにあるから、明確なビジョンがないのは問題である。そもそもリーダーシップとは、どこかを目指して進むものだ。しかし、そのビジョンにみんなが共感できなければ、リーダーシップも自己満足に終わり、結局は失敗してしまう。
ビジョンとは
ビジョンとは、自分は何者で、何を目指し、何を基準に進んでいくのかを明らかにすることである。
「自分は何者か」がわかれば、「目的」が明確になる。
「何を目指すか」がわかれば、「未来のイメージ」が描ける。
「何を基準にするか」がわかれば「価値観」がはっきりする。
何かを目指すには、基準となる「価値観」をはっきりさせなければならない。なぜなら、壁にぶつかった時、正しい判断を下せないからである。
ザ・ビジョンのモデル
ビジョン創造のプロセスは、ビジョンの内容そのものと同じくらい大切である。いきなり新しいビジョンを発表しても、みんながすぐに理解して、賛同してくれることはありえない。ビジョンの作成に誰に参加してもらうかを考えて、その人たちの考え方や夢、希望、ニーズを受け止める必要がある。さらに、いかにビジョンの中身を伝えるかも大切である。たとえビジョン作りに参加しなくても、自分たちに関係してくるということをわかってもらう必要がある。そして、ビジョンをどう実践すればいいかも重要である。
「説得力あるビジョン」は、「内容」と「プロセス」という、等しく重要な2つの部分からなる。
・内容:ビジョンの中身のこと。ビジョンには「目的」「未来のイメージ」「価値観」の3つの要素がある。
・プロセス:ビジョンをいかに創造し、伝達し、実践するかということ。
ビジョン作りは直線的には進まない。ビジョンの3要素を明確にしていく過程では、3つの「いかに」を意識することが大切である。
- いかに創造するか
- いかに伝達するか
- いかに実践するか
「説得力あるビジョン」の3要素
・目的
- 自分たちの存在意義
- 単に自分たちの役割や活動を述べるのではなく、その「理由」に答えるもの
- 有意義な目的は情熱と意欲を高め、逆境にあっても前進し続けられる
・未来のイメージ
- 曖昧なものではない最終結果のイメージ
- 何をなくしたいかではなく、何を生み出したいかに注目する
- 場当たり的ではなく、先を見据えたイメージ
- 思い描くのは最終結果。そこに至るプロセスではない
・価値観
- 特定の資質を望ましいとする、心の底からの信念。様々な選択や行動の基準となる
- 「日々の出来事に対して、どう行動するか」の答えとなるもの
- 価値観を実際の行動に移した時、どのような行動になるのかを説明するもの
- 価値観は少数に絞り、優先順位をつける
- 価値観はどんな状況でも実践すること
- 個人の価値観と組織の価値観が一致する必要はないが、その人が充実感を得るには連携している必要がある
3つの「いかに」
・いかに創造するか
- みんなを巻き込む
- 現実を直視する
- 創造的緊張を受け入れる
・いかに伝達するか
- たえず話題にし、進行状況を伝える
- 出来事をビジョンに基づいて解釈
- 理解できたらスローガンをつくってもいい
・いかに実践するか
- ビジョンに沿った具体的目標を定める
- 実際に行動に移す
- ビジョンから目を離さず、目標を手直しする
- 「支援の仕組み」をつくる