テクノロジー企業の負の側面
グーグルや他のビッグテック企業が近年やってきたことは、あまり褒められたことではない。グーグルはアルゴリズムをいじって、検索結果の1ページ目には最大のライバル会社6社が表示されないように細工している。グーグル傘下のユーチューブでは、爆弾の製造方法を示すビデオの公開が認められている。グーグルはロシアの工作員に広告を販売し、彼らが偽情報を広めたり、2016年の米国大統領選挙に介入したりするためのプラットフォームを提供している。また、中国向けの強力な検索エンジンの開発に取り組んでいる。好ましくない情報を検閲しようとする中国政府の意向にそった検索エンジンだ。
テクノロジー企業がとめどなく力を増していく一方で、民主主義はどんどん不安定になっていった。グーグルとフェイスブックが2018年までにインターネットの広告市場の60%を占めたことによって、新聞や雑誌は力を失った。その影響で2004〜2018年までにおよそ1800の新聞が廃刊することになった。そのため、200の郡で新聞が1紙も発行されていない。民主主義にとって信頼できる情報は重要なのに、それが行き渡っていない。
ビッグテックの問題は経済とビジネスだけに限られているのではない。政治にも、さらには人々の考えにも影響する。2016年の大統領選挙、ブレグジット国民投票、あるいはその後のオンライン偽情報キャンペーンでもロシアが関与していたという事実が、デジタル革命によって社会の団結が脅かされていることの何よりの証拠である。
民主党員の大半がビッグテックの広範なロビー活動によって買収されている。共和党員でも買収された者の数は増えつつある。IT、電子、プラットフォーム技術のすべてを含めれば、ビッグテックはアメリカで2番目に大きなロビー活動グループになる。ビッグテックは政府からの面倒な介入を避け、今後も自由な活動が続けられるように体制を操作してきた。
プラットフォーム技術を利用した選挙介入が世界中で大きな問題となっている一方で、ミャンマーやカメルーンなどの国では国民全体を抑圧する手段として、さらには民衆を虐殺するための道具として、グーグルとフェイスブックが利用されている。
ユーチューブ、グーグル、フェイスブック、ツイッターはもう何年も前から、不正な工作員が人々をプロパガンダの罠に陥れるためにプラットフォームを悪用する可能性があることに気づいていた。彼らはただ、自社のビジネスモデルを危険にさらしてまで、この問題を修復する必要はないと考えたのである。
ビッグテックを規制せよ
ビッグテックの活動に制限を課さない限り、自由民主主義と個人の自由と安全が危機にさらされることになる。業界による自主規制がうまく機能することはめったにない。2016年以降、ビッグテックの幹部たちはなんども議会で懺悔や謝罪の言葉を口にしてきたが、ビジネスモデルという点でも、経営理念という点でも、明らかな変化を見せることはなかった。
政府がビッグテックを監視する状態をつくり、消費者と社会の利益を守り、成長の妨げになる独占を抑制し、私たちに欠かせないデジタルの利便性を維持するのはどうすればいいか。
①ビッグテックがプラットフォーム上で起こる出来事に対して法的に責任を免除されている現状を見直す
②プラットフォームと商業を分離してより公平で競争的なデジタル環境をつくる
(強力なネットワーク効果を享受するビッグテックは、公共事業と同じように規制されるべきである)
③権力をより広い視点から解釈した上で、消費者だけでなく社会全体の幸福を考えて、反トラスト政策を見直す
富と力を手に入れたビッグテックは、あまりにも傲慢になってしまった。人々は自分たちには企業運営のルールを変えるだけの力がないと思い込んでいる。しかし、私たちはその無力感を払い落とし、自分達にもデジタル化した経済と社会のルールを自分達自身が望み必要とする形に変える力があることを理解しなければならない。