チーム作りにおけるマネジャーの役割が重要
世界のビジネスの最前線では、「チーム作り」というものが改めて見直されるようになっている。それは、今日の変化の激しいビジネス環境の中で抜きん出た成果を上げるためには、ダイバーシティ(多様性)に富んだ「集合知」が不可欠だからである。当然ながら、チームをまとめるマネジャーの役割は非常に大事になってきている。
グーグルでは、マネジャーの役割や仕事に関する1万人規模の社内調査「プロジェクト・オキシジェン」が行われた。グーグルにも成果を上げているチームと上げていないチームがあり、メンバーが同じように優秀なのに、なぜ差が出るのか、という議論がされた。
調査の初期段階で、メンバーのパフォーマンスに最も関係しているのはマネジャーの言動だということがわかった。
優秀なマネジャーの8つの特徴
調査の結果、チームのパフォーマンスを高めるマネジャーの特性は、次の8つだった。
①よいコーチである
②チームを勢いづけて、マイクロマネジメント(チームのメンバーに対する過度な監督・干渉)はしない
③チームのメンバーが健康に過ごすこと、成果を上げることに強い関心を持っている
④生産的で成果主義である
⑤チーム内のよき聞き手であり、メンバーと活発にコミュニケーションしている
⑥チームのメンバーのキャリア形成を手助けしている
⑦チームのためのはっきりとしたビジョンや戦略を持っている
⑧チームのメンバーにアドバイスできる専門的技術・知識を持っている
中でも一番大事なのは「①よいコーチである」こと。コーチングとは「おまえ、これやれ」などと指示・命令することではない。例えば「最近どうですか? 今日は少し時間をとって、色々お聞きしたいですね。うまくいっていることと、もう少し力を入れなきゃならないことを、一緒に整理しましょう」といった質問や応答を通じて、本人に自分がやっている仕事について自己認識させることが目的である。コーチが行う質問としては「目標」「現実」「行動計画」「意欲」がある。
生産性の高いチームの5つの特徴
グーグルでは「生産性の高いチームの特性」を明らかにする調査「プロジェクト・アリストテレス」が行われた。その結果、5つの要素が導かれた。
①チームの「心理的安全性」が高いこと
②チームに対する「信頼性」が高いこと
③チームの「構造」が「明瞭」であること
④チームの仕事に「意味」を見出していること
⑤チームの仕事が社会に対して「影響」をもたらすと考えていること
この中で一番大事なのは「①心理的安全性」である。心理的安全性とは「メンバー一人一人が安心して、自分が自分らしくそのチームで働ける」ということ。自分らしく働くとは「自己認識・自己開示・自己表現ができる」ということである。つまり「安心して何でも言い合えるチーム」が心理的安全性の高いチームである。
メンバーがチームに対して心理的安全性を感じていなければ、チームを信頼することはできないし、どんなに目標や計画、役割が明確であっても、仕事に意味を見出すことができず、社会的なインパクトを考えることもできない。
一方、チームに心理的安全性があれば、メンバーを信頼できるようになって、尊重するようになる。その中で、誰がいつまでに何をやるかという計画や役割が明確になっていく。そして、仕事の意味が見えてきて、頑張って仕事をしたら、世の中によい影響も与えられる。
こうした「心理的安全性」が高く働ける場を作ることが、マネジャーの大切な役割である。