オペレーショナル・エクセレンスの3要素
業務で利益を生む力を「オペレーショナル・エクセレンス」という。強いオペレーションは経営の武器である。オペレーション力が卓越した企業に共通する要素は次の3つであり、これらはオペレーショナル・エクセレンスを構成する。
①管理指標:指標が整っている
事業に関わっている組織横断、職能横断で指標が一意に決める。管理指標の作り込みにおいては、以下の2つの連携に留意することが大切である。
- FI:財務指標
- OI:オペレーション指標
経営者の目標値は、 ROIC・EBITDA・ROEなど、FIとして定義される。一方、OIは業務を行う現場ワークとの親和性が高く、売上増・リードタイム短縮・コスト削減など、行動に結びつく指標群である。FIとOIはつながっているか。財務指標を好転させるには、指標と行動(業務)とのつながりが明示されなければならない。
②業務体系とITシステム:仕組みが整っている
現場の実相が表現されていて実態把握だけでなく、改革の検討にも資する、使える業務フローを整える。業務フローとは、業務をある粒度(タスク)までブレイクダウンし、タスクをフローチャート形式で表現して流れを可視化したものである。このブレイクダウンの深さに応じて、レイヤーが複数存在することになる。これを4つのレイヤーで捉える。
- 機能群:企業における事業活動の流れを表現したレイヤーであり、部門間での業務の大きな流れを示す
- 機能:レイヤー1での機能を細分化した層であり、部門の下部組織である部署間における業務のやり取りを示す
- 処理:レイヤー2での業務を細分化した層であり、誰が何をどの順で対応するか、担当者レベルでのタスクの流れを示す
- 手順:レイヤー3での1タスクについて詳細に定義したレイヤーで、いわゆる業務マニュアル
情報システムは業務プロセスと一体の関係にある。業務あってのシステムというのが基本であり、システムが先行することは一般的に好ましくない。オペレーショナル・エクセレンスにとってのITシステムとは単なる道具であり、「どう使うか」に目を向けるべきである。
③人材リソース管理:適材が適所に配されている
人材リソース管理は以下3つのコンポーネントからなる。
- 把握する(スキルの棚卸し、スキルの体系化)
まずスキル実態を把握しなければならない。オペレーショナル・エクセレンスの実現のためにはより実践的・具体的な記述が必要になる。 - 育む(育成プログラム、達成度評価)
自社内部のスキルの習得をより実践可能な形に落とし込むために「ロールモデルの思考法」に学ぶ。
ケースを想定する→「あなたならどうする?」と問う→ロールモデルの考えや行動と照らし合わせ比較検討する - マッチング(スキル保有者と職務定義書のマッチング)
職務定義書は業務体系全体との連関の中で作成する。全体の「組織図」があって職能分担を整理する中で、ポジションの職務定義が可能になるし、個々の「業務フロー」があってその職務で果たすべき役割が明確化される。
業務改革のテクニック
オペレーショナル・エクセレンスを得るための最初の一歩は業務フローの作成である。強いオペレーションを実現できる企業は、戦略→戦術→実行のサイクルが速い。この戦略、戦術の立案には、現場の業務、現実の業務を深く理解していることが必要になる。業務改革のテクニックは、次の通りである。
①業務の可視化
業務を可視化するには、次の4つの切り口がある。
- 業務の流れ
- 業務で扱う情報
- 業務遂行の土台であり役割分担のベースとなる組織
- 業務遂行の主体となる人・スキル
これら4つの切り口で、以下のコツに従って業務の流れをフローチャートで可視化する。
- タスク名は成果物よりも目的・行為を意識する
- タスクをブレイクダウンする際に粒度を統一する
- 例外系こそ可視化する
②問題の可視化
出発点は何を問題として捉えるかである。業務遂行においては、QCD(品質・コスト・納期)をうまくバランスさせる必要があるが、時にいずれかが損なわれてしまうことがある。それが「問題」である。問題発見のアプローチは以下に通り。
- じっとフローを観察して「何かおかしい」という点を見つける
- 「〜らしい」という現場の声に耳を澄ませる
- そもそもの業務目的に立ち返って検証する
③業務の整流化
特定した問題を解消し業務を円滑な流れへと整える。ここではECRSという業務改善フレームワークを活用する。
- E:扶養業務を排除する
- C:他のタスクと統合して不要とする
- R:他のより軽い代替手段を取り入れる
- S:自動化するなどして人手での作業としては取り除く
④暗黙知の可視化
有識者や熟練者がどのように考えて判断・行動しているのか、脳内の思考プロセスを放出してもらう言語化・明文化する。過去の多くの実例をひもとく。
⑤結果の可視化
FIとOIの関連を明示する。財務指標を行動指標にブレイクダウンする。