IFAの役割
今、日本では個人に投資信託を販売するチャネルとして、銀行や証券会社といった既存の金融機関に所属しない「IFA(独立系フィナンシャルアドバイザー)」が注目を浴びている。IFAは次の2つの点で期待される。
- 個人投資家との間で、コツコツと長期で資産形成を目指すというインセンティブを共有しやすい
- インセンティブを共有するため、個人投資家から信頼されやすい
日本では、未だに個人金融資産の5割超が現預金に滞留するという状況が続いている。その大きな理由として、投資をめぐる「3つの呪縛」が日本人の行動に制約をもたらしている。
- 投機の呪縛:投資を投機と誤解し、投資は危ないからやらないでおこうという気持ちに支配されている。
- 手数料の呪縛:ファンドの投資先も見ないで、投資に臨む際の最優先事項が手数料の安さになっている。
- リスクの呪縛:長期投資をスタートする際に、まずリスクから考えてしまう。
こうした呪縛から日本人を解放し、正しい投資を促し、真っ当な資産形成を普及させるチャネルとして最も適しているのがIFAである。
個人投資家は、自分の長期資産形成を的確にサポートしてくれる優秀で相性の良いIFAを選ぶ。IFAは、お客さんの長期資産形成に資する優れた株式ファンドを選ぶ。運用会社は個人投資家に長期で可能な限り高いリターンをお届けするため、長期的により高い利益成長が期待できる企業を選別して投資する。企業は運用会社から長期投資の対象として選ばれるため、これまで以上に利益成長性を高めることに注力する。
資産形成にあたって大切な考え方
日頃接している「投資情報」の大半は「投機情報」である。短期で儲けようというのは投機である。投機の代表は競馬や宝くじなどのギャンブルやFXである。これらは、参加者の利益と損失が足してゼロになる「ゼロサム」であり、胴元から手数料を引かれるので実際には「マイナスサム」である。そこには成長はなく、資産形成はできない。
投機の真逆にあるのが投資である。企業が毎期、利益を稼ぎ出すことによって会社の価値が大きく積み上がっていき、それが長期的に株価に反映される。そのような企業価値の成長にお金を投じることで、資産が形成される。株式投資は、リターンを得た人の裏側で同じだけの金額を損するような人が存在しない「プラスサム」の世界である。
企業の利益と株価は、以下の式で表すことができる。
株価 = EPS(1株当たり純利益)× PER(株価収益率)
PERは投資家の「気分」にあたるものであり、上がったり下がったりする。PERの変動には株式の需給関係から政治の動向、気候変動まで無数の要因が関わっている。PERの動きを正確に予測するのは、投資のプロにも不可能である。株式投資において短期でリターンを狙う場合には、「PERの予測」という博打になる。なぜなら、短期間に企業の利益は変わらないからである。
見なければならないのは、PERではなくEPS、即ち企業の利益である。大切なのは、株価の動きに振り回されることなく、長期で企業の利益成長にしっかり投資することである。
個人投資家の資産運用において大切な分散投資は「時間分散(積み立て投資)」と「銘柄分散(投資するファンドの分散)」のみである。長期的に企業の利益が成長していけば、その成長分をリターンとしてしっかり享受することができる。ファンドを通じて株式を長期で積み立て、将来的にはその株式を取り崩していくという運用スタイルで十分である。
今後は日本でもインフレの常態化が予想されている。国内の金利がよほど大きく上昇して債券利回りが向上しない限り、国内債券に投資してもインフレに負けていくことは確実である。またREITへの投資は、不動産を購入して家賃収入を得るようなものだが、人口減少が進む中で、一部の都市圏を除くと不動産市場が広範囲かつ長期にわたって成長するのは難しい。こうしたことから、長期的な資産形成は成長企業への株式投資だけで十分である。
アクティブファンドを選ぶこと
ファンド(投資信託)という形態は、そもそもアクティブ運用からスタートした。アクティブ運用とはファンドマネージャーやアナリストが企業の調査・分析を行い、長期的に有望な企業を厳選して投資する仕組みである。
一方、インデックス運用は、ファンドの値動きを特定の指数に連動させるだけなので、そこに特別な能力は介在しない。指数への連動を目指すインデックスファンドは無条件にダメな会社にも投資する。
手数料が安いからといって、インデックスファンドの中身を確かめずに投資するのは、「福袋」を買うようなものである。さらにインデックス運用では多くの場合、高値になってから買い、安値になってから売るという具合に、非効率な「相場の後追い」になってしまう。