資本主義は世界を救う
2000年から2022年にかけて、極貧率は世界総人口の29.1%から8.4%に下がった。この時期に世界人口が15億人以上も増えたのに、貧困者の数は11億人減った。グローバル化の時代、最貧国の発展はあまりにすさまじかったので、東アジア、南アジア、南米、中東の今日の極貧率は、戦後好況期だった1960年の西欧よりも低い。1960年の西欧よりも貧困率が未だに高いのは、サハラ砂漠以南のアフリカだけだ。
世界の期待寿命は1990年から2019年にかけて、64歳から73歳近くまで伸びた。基本教育を受けている世界人口比率は激増し、非識字率は25.7%から13.5%に下がった。15〜24歳の年齢層では、非識字率は8%強だ。
資本主義は1990年から30年の間に、それ以前の3000年を合わせたよりも人類の生活条件を大幅に改善させた。
自由こそが社会を発展させる
経済と社会の進歩は、国の大小と関係なく起こるし、宗教や伝統とも思うより関係は薄い。大事なのは自由だ。人々に多少の自由が与えられると、自国を発展させ、大きな進歩を遂げる。世界の分配不平等は、資本主義の分配が不均等だから生じる。
世界経済自由度は、国の規模と税負担、法制度と財産権、金融システム、自由貿易、規制の5分類で評価される。データを見ると、もっと良い仕事を探し、新しい市場を見つけ、未来に投資する自由ほど人々の生活を改善するものはない。最も経済的に自由な1/4の国と、最も自由度の少ない1/4と比べると、1人当たりGDPは自由諸国の方で7倍以上高く、極貧率は最大で16倍にもなっている。この違いは栄養、保健、安全保障へのアクセス改善にも反映されている。
経済的自由と社会進歩の相関は圧倒的にプラスだ。自由な市場がある国は、経済成長も高く、賃金も高く、貧困削減も大きく、投資も多く、汚職も少なく、主観的な厚生も高く、民主的で人権も尊重されている。
多くの国が統制を廃止して市場を開放するのは、それ以前のモデルが酷い状況を生み出してしまったからだ。市場を自由化することは苦痛に満ちたプロセスになった場合もある。不運も無知もあれば、汚職もある。競争市場なしで企業を民営化すると、新しい民間独占を生み出すだけだ。そして法治や財産権保護のない市場はしばしば国や新興財閥や犯罪者に統制を任せてしまう。これをきちんとするのに、一部の国は長い時間がかかった。ロシアのような一部諸国は未だにこれができていない。
1970年から2015年にかけて、大幅な経済解放を実施した国と、そうでない国を分けて行われた分析では、経済を自由化した国々の経済成長は5年間で平均2.5ポイントほど高かった。さらに10年経つと6%以上も豊かになっていた。
自由は人間の創造性を活用する
市場経済は、最高の供給と需要を探し、誰がそれを担当しているかなど気にしないという最初の経済体制だ。自由市場は、まず何よりも協力マシーンであり、それがあらゆる中央管理よりうまく機能するのは、はるかに多くの人々の知識、才能、想像力を活用するからだ。
何万人もの人が成長率を高めるのは、自分がもう少し賢く働ける方法を考える個人的な動機があり、どの技術や手法が自分のプロセスを高速に、安く、うまくできるようにするかというアイデアを思いつく動機があるからだ。あるいは全く違ったやり方をすることで、もっと大きな価値が作れるかを考える。よい手法を見つける可能性は、みんながその探索に参加するのが許されると、それだけ大きくなる。
この結果として過小評価されていることは、今現在の最高の解決策を義務付けると、それ以上の発展を止めることになるということだ。さらなる進歩をもたらしてくれるような、各種の実験や競争が潰されてしまうのだ。
ケーキの大きさの方がその配分よりも重要
世界の貧困を終わらせるのは経済成長だ。最貧層1/5に属する国が、年率1人当たり経済成長2%を20年維持できたら、極貧は平均で半分消える。その国が1人当たり経済成長を4%にまで高められたら、20年で貧困は平均80%以上も減る。包摂的な成長を生み出す最高の方法は、万人のために経済成長を生み出して、それを続けることだ。
各国で最貧国40%の違いの3/4は、平均所得の増加で説明できる。研究者たちは、貧困者支援や共同富裕を促進する各種政策は、すべて全体的な経済成長を通じてそれを実現していたという。つまり、再分配政策は、過大評価されている。
格差を取り巻く政治論争は主に、限られた金銭的支援を他人から受け取るべきは誰か、という話になってしまうが、本当の問題はどの制度が万人のために最大のものをつくり出すのに役立つか、ということだ。政府の再分配は危険だ。労働や起業家精神や投資への課税を引き上げると、労働や起業家精神や投資は減り、従って成長も下がるからだ。