最強Appleフレームワーク ジョブズを失っても、成長し続ける 最高・堅実モデル!

発刊
2024年8月6日
ページ数
256ページ
読了目安
248分
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アップルを事例にビジネスフレームワークを理解する
「ポジショニングマップ」「SWOT分析」「4P分析」「5フォース分析」など、ビジネスでよく利用される様々なフレームワークを、Appleを事例に解説している一冊。

個々のフレームワークの基本的な考え方をわかりやすく、必要最低限で紹介し、Appleというわかりやすいテーマをもとに具体例に落とすことで、初心者にもわかりやすい内容になっています。
iPhoneの発表当時から、Appleの戦略がどのように変わってきたのかなども、読み進めていくうちに理解でき、ビジネスというものの全体を抽象と具体の両面から見て、理解することができます。

製品の位置付けを理解し伝える

フレームワークを通じてアップルやジョブズの取り組みを分析すると、常に明確な未来像が描かれており、その時でき得る最短のルートを選ぶシンプルな思考がわかる。

ジョブズが、iPhoneがどんな製品であるのかを説明する中で用いられたのが「マトリクス分析」である。ジョブズはポジショニングマップで、縦軸に「スマート」「スマートではない」、横軸に「使いやすい」「使いやすくない」という要素を配置し、競合製品とiPhoneを比較した。ジョブズはiPhoneが最もスマートで最も使いやすい携帯電話であることを一発で物語理、理解させた。

 

ポジショニングマップは、自社製品や他社製品の現状を、ある特定の2つの軸において分析し「自社製品はどんなことを目指せばいいのか」を明確にする際に、便利なフレームワークと言える。このポジショニングマップで重要なことは「どんな軸を設定するか」ということ。ジョブズが「機能」と「使いやすさ」という2軸を選んだのは「多機能なスマートフォンは使いにくい」という前提と、使いやすい方が良いという、共感してもらえる「当たり前」を示し、iPhoneをアピールしたかったからである。

 

環境分析から戦略を導き出す

SWOT分析は、対象について「強み」「弱み」(内部環境)、「機会」「脅威」(外部環境)の4つの要素を書き出すことで、現在置かれている環境を理解することができる。これを用いて、iPhone発売当時を整理すると「単にデザインと操作性が良いスマートフォンをアップルが出したとしても、世の中を大きく変えるほどのインパクトを獲ることはない」と理解される。

そこで、アップルは2007年の初代iPhone発表時、世の中に公表していない「App Store」という隠し球を持っていた。このサービスは2008年7月、iPhone3Gにスタートした。ここで「App Storeでアプリが追加できる」という要素が「強み」の項目に追加された。

 

SWOT分析は、現状の把握に役立つが、そこで終わってしまっては「次に何をする」という戦略と行動に辿り着けない。そこで、内部環境と外部環境をそれぞれ横軸、縦軸に配置する「クロスSWOT分析」へと発展させる。「機会×強み」は、「スマートフォン=アプリ」という当たり前を作り出す戦略を考えることができる。「脅威×弱み」は、AT&Tとの協業で、購入しやすい環境を通信会社が積極的に売り込んでれる仕組みを作り出した。

 

SWOTは、市場環境の変化で作り替えていく必要がある。2024年と2007年のiPhoneの市場では、状況が大きく変わっている。iPhoneの現在の「強み」は、カメラ性能、バッテリー性能、セキュリティとプライバシー、リセールバリューの高さを挙げることができる。カメラとバッテリーはここ5年来、市場のスマートフォンへのニーズに対して、iPhoneが「弱み」となっていた部分である。またリセールバリューの高さは、スマートフォンの中古市場の充実によるもので、新品でiPhoneを買い求める人のメリットを高める施策である。

こうした「強み」の変化は、スマートフォンが普及期から成熟期に移行し、「新たにスマホを買う人」は若年層に限られ、それ以外の人々は「買い替え」の顧客に移行したという市場の変化に起因する。

 

顧客のニーズとウォンツを満たす

iPhoneは、既にマジョリティに働きかける存在になっている。その「ニーズは何か」を突き詰めると、シャッターボタンを押すだけで簡単に撮影できるカメラ性能の向上と、1日以上長持ちするバッテリー性能という訳である。

では、iPhoneでなければダメな理由はどこにあるのか?

 

4P分析は、4つのPから構成されるマーケティング戦略の構築と実行プロセスのことを指す。

  • 製品:カメラ、バッテリーに加え、iPhoneというブランド、プライバシーとセキュリティ、環境配慮、使いやすさ
  • 価格:常にハイエンドの新製品と、2〜3年前に新製品だったモデルをミドルレンジ価格帯に値下げ、最下位モデル用意
  • 流通:アップルストア、オンラインストアを基本に、各国のショップ店頭やECサイトで販売
  • 販売促進:iOS17の新機能などのコマーシャル映像をTVやYouTubeで配信

 

4Pは「顧客がどんな商品を好むか」「既存商品がどのように進化してくれると嬉しいか」をいったことを分析し、これを解決する戦略を立てる際に有効である。そして、4Pは市場、顧客の変化に応じて、変化させていく。

2020年に入り、スマートフォン市場が成熟した後に求められるのは、より信頼性が高いことや、価格が安いこと、手に入りやすいこと、身近なブランドであることへと移り変わっていく。そこでアップルは、環境への配慮と中古市場を成立させるために「長持ち」という性能を強調するようになった。