エンジニアリソース革命

発刊
2024年4月26日
ページ数
240ページ
読了目安
226分
推薦ポイント 2P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

推薦者

オフショア開発の手引き
圧倒的にITエンジニアの数が不足し、採用が困難な状況において、エンジニアリソースの確保の手段として、オフショア開発の有効性と成功させるためのポイントを紹介している一冊。

ベトナムでオフショア開発会社を立ち上げ、様々な開発支援実績を持つ著者が、これまで日本企業がコスト削減だけを目的にして、オフショア開発に失敗してきた要因を挙げて、どのようにすれば成功するのかを書いています。
エンジニア採用が厳しくなる中で、言語の壁など、これまで一定のハードルがあったオフショア開発を見直すきっかけとなります。

オフショア開発の普及

オフショア開発とは、開発コストの削減やIT人材の確保、生産性の向上を目的として、海外の開発会社や人材、リソースを活用する開発手法であり、日本に比べて物価や人件費が安価な海外のIT人材・リソースを用いることである。かつてオフショア開発の主要国は中国だったが、2000年代からは中国以外のアジア諸国、ベトナムやインドネシア、インドにシフトしつつある。さらに2020年代に入ると、特にベトナムの成長が目覚ましく、日本企業による活用や進出が急増している。

ベトナムをはじめとする主要なオフショア開発国では、創業から10年以上経過して十分に成熟したオフショア開発会社が多数ある。ベテランのプロジェクトマネージャー(PM)やITエンジニアが大勢在籍し、最近では大手のオフショア開発会社で経験を積んだプロフェッショナルたちが独立し、新しいオフショア開発会社を立ち上げる動きが見られる。

 

かつてオフショア開発の最大の目的はコスト削減だったが、現在はグローバル規模でのIT人材不足のソリューションとしてオフショアを活用する企業が増えている。例えば、数年前まではオフショア開発で先端技術を扱う企業は珍しかったが、現在は多くの企業が取り組んでいる。

 

オフショア開発の3つの壁

オフショア開発が失敗する主な要因は3つある。

 

①日本独自の問題

日本側におけるマネジメント人材の不足の問題がある。多くの企業では、海外人材の採用以前にプロジェクトがうまく回っておらず、開発体制や開発ルールが整備されていない、明確な役割やコミュニケーションラインが決まっていないなどの問題が見られる。

また「コストメリットがありそうだから」という理由だけでオフショア開発に臨んでいる企業は、海外エンジニアとのコミュニケーションが予想以上に難しく、結果として期待通りのプロダクトの質が得られずにオフショア開発を途中で諦めてしまうことが少なくない。プロジェクトの成功には適切なコミュニケーションと明確な開発ルールの策定が不可欠である。

 

②スキルの問題

エンジニアのスキル不足やスキルミスマッチの問題がある。エンジニアの採用はどんどん難しくなっているが、中でも上位のエンジニア人材の採用は特に厳しく、フレッシャー、ジュニア、ミドル、シニア、テックリード、PMとスキルレベルが高くなるにつれ、採用が難しくなっている。これは日本でもベトナムでも同じである。

スキルのマッチングを考慮せずにエンジニアを採用すると、逆にオーバースペックな人材を雇用してしまい、無駄なコストが発生したり、早期の離職に繋がったりする。また、エンジニアとして優秀でも、特定の役割には向かないケースもある。その意味でも、エンジニアに求める役割を明確にすることが重要である。

 

③ブリッジSEの不足

ブリッジSEとは、プロジェクトマネジメントができ、日本語を話せる優秀な海外エンジニアである。プロジェクトが進行する中では、時折エンジニアとのコミュニケーションが必要な状況が発生するが、発注側の英語レベルを上げるより、ブリッジSEを活用する方が効率的である。但し、優秀なブリッジSEは不足しており、オフショア開発の最も大きな壁と言える。

 

海外人材の活用を成功させる3つのポイント

オフショア開発を成功させるためには、次の3つの視点が重要である。これは即ち、オフショア会社を選ぶ基準と言える。

 

①優秀な人材を集める能力があるか

大前提となるのは、データベースの中に人材の数が十分あること。人材の数が少ないと、スキルや経験の合わないエンジニアがアサインされることになる。

 

②企業の属性や状況にマッチするチームメンバーやエンジニアをアサインできるか

優秀な人材を集める能力が重要になる上、海外のエンジニアの特性を理解しているかも大事である。状況に応じて最適な人材をアサインできると、必要最低限のコストで、社内の負荷を低減させることができる。

 

③体制作りに関するノウハウを持っているか

自社の状況をよく理解し、何を目的としてオフショア開発を行うのか、それにあたってどんな課題があるのかを、まず把握しなければならない。

 

実際のところ、プロジェクトを始めなければわからない部分もある。最初の数ヶ月は様子を見ながら、役割を見直す期間となるかもしれない。しかし、この3つのポイントを押さえておけば、徐々にプロジェクトがうまく回っていくようになる。

 

オフショア開発を行うに際しては、単なるコスト削減のための方法と考えて、日本でこなせない仕事をただ海外に投げるだけではいけない。日本のエンジニアと海外のエンジニア、その特性を考えて業務を振り分けてこそ、オフショア開発のメリットを最大化できる。