鬼時短 電通で「残業60%減、成果はアップ」を実現した8鉄則

発刊
2024年2月28日
ページ数
232ページ
読了目安
252分
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推薦者

企業が時短改革をする上で心得ておくべき鉄則
電通で時短改革の責任者として、大幅な残業時間の削減を達成した著者が、時短改革を進める上での普遍的な鉄則をまとめた一冊。

そもそもムダな業務で時間を浪費したいと思っている社員などいないとし、これまで会社が社員にムダな業務をさせてきたことを反省し、改革を進めるべしと説いています。
時短改革をする上で、いかに現場の社員の協力を得ることが重要かということが理解でき、組織を改革するために必要なことがわかります。

時短プロジェクトを成功に導く8つの鉄則

①社長は「私欲」を訴えなければ伝わらない

経営者が平時に発信する言葉は、ほとんどすべてが形式的で画一的な決まり文句である。これでは、現場の人たちは、会議室を出るともう話の中身を覚えていない。そもそも企業が本当のことを隠さず語っているとは、社外も社内も誰も思っていない。

タテマエやキレイごとではなく、心の底からの欲求をストレートに発信すること。社長の本当の動機が伝わって初めて、あらゆる改革はスタートにつくことができる。

 

②現場が抵抗する「本当の理由」を理解しよう

経営者が「時短をやれば、早く帰れるのだから、君たちも嬉しいだろう」という発言をしてしまうようでは、時短改革は間違いなく頓挫する。長時間労働をいとわない人の中には、その働き方自体が「プライド」になり、成長が喜びとなっている人も、たくさんいる。この事実を踏まえないと、「わかっていない」と猛反発をくらう。

現場には、これまで会社を支えてきたのは、自分たちであり、今の働き方だという自負がある。仕事のやり方を根本から変えろと言われて、戸惑っているのは、むしろ現場を背負う責任と気概からなのかもしれない。そこをただ変化を拒むヤツらと誤解したままでは、いかに具体的な施策を打ち出そうとも、社員の協力は得られない。

雇用された社員が「働き方」を自律して改革するなどという考え方は経営者の甘えであり、怠慢である。改革すべきなのは「働かせ方」である。

 

③「現場の主」は社長が自分で口説かなくてはいけない

日本の経営陣は、具体的な仕事の進め方を、すべてオフィスの現場に丸投げしてきた。その結果、現場の部署が手探りで業務を構築し、ルールをつくり、ミスを減らす努力をせざるを得なくなった。そして、現場それぞれの部署には、そこにプロセスを取り仕切る「主」がいるようになった。この「主」たちの同意なしには、時短に限らず、いかなる改革も決して成功しない。

現場の「主」はいわゆる「ノンキャリア」であることも多い。根回しもせずに時短改革を進めようとすると、「主」たちは誰よりも手強い反対勢力に回ってしまう。時短改革は、それまで現場が積み上げてきた業務プロセスを否定する行為である。中でも「主」のプライドを傷つけるもの。経営陣は、まずこれまでの現場丸投げの無作為を反省しなくてはならない。

 

④現場の「すべて」を肯定しよう

「現場にムダな業務をリストアップさせよう」と言っては絶対にダメである。「これまで会社がムリに押し付けてきたムダな業務をリストアップして我々に教えて下さい」というトップのセリフこそが改革の成否を左右する。

現状を肯定した上で、次のステップ「現状の徹底把握」に進める。ここで重要なのは、時短対象の業務を工程単位で見ること。現場の聞き取り調査を徹底して工程一覧表を作成する。「主」たちの全面協力があれば、多くの社員が納得する調査票ができる。

電通の時短改革で全工程の棚卸しを行った際には、対象の工程をアウトソーシングもしくは高速化(RPAの利用)できないかについても検討した。

 

⑤トラブル処理は「すべて」「自分で」引き受ける覚悟を持つ

時短を推し進めようとする時に問題となるのは、外部のステークホルダーとの関係である。その過程で起こる様々なトラブル処理を、トップが責任をもって引き受ける覚悟が何よりも重要である。

 

⑥改革の「本質的価値」を語ってはいけない

「時短」の取り組みについて考える時、「この改革は具体的にどのような意味があるのか」といった大上段に構えた議論をしたがる人がいる。しかし、勇ましいスローガンを掲げるよりも、あえて「本質的な価値」が何なのかは突き詰めて考えない方が、改革はうまくいく。なぜならば時短とは「ちょっとやってみたら、少し前進できた」という小さな事実の積み重ねだからである。非連続な大変化ではなく、漸進していくものだからである。

 

⑦「結果」で納得を得るしかない

改革を続けていると、現場が時短に対して一気に前のめりで協力してくれるようになる瞬間が訪れる。それは、自分たちの作業がラクになることを実際に体感した瞬間である。現場は、結果を見てようやく初めて関心をもってもらえると覚悟する必要がある。

 

⑧「内部統制」という言い訳を封じよう

アメリカ生まれの内部統制は「細分化されたジョブを具体的に指示する」と言うマネジメントスタイルに即したもの。日本の「うまくやれ」というマネジメントを全く想定していない。その結果、日本企業の内部統制は、ルールに則るという形式だけが残った「内部統制の演技」となった。

これを改革するには、「どこまで手を抜いていいかを、的確に教えてくれる」社外の専門家の力を借りることが必要である。時短改革と内部統制の折り合いは、会計や監査の「重要性」の考え方が重要である。