リーダーシップサイクル
ハイパフォーマンスなチームは努力のサイクルから生まれる。この道のりの始まりは明確だが、終わりはない。ハイパフォーマンスなチームには、継続的な改善と定期的な刷新・再構築が必要である。リーダーシップサイクルは、次の5つのステージを繰り返す。
ビジョン → 構築 → 実験 → 勝利(失敗を乗り越える) → 再構築 → ビジョン
このサイクルの鍵を握るのはリーダーシップである。リーダーには優れた価値観、手法、ツール、コミュニケーションが求められる。リーダーはサイクルの各段階で、戦略的、運用的、戦術的に思考しなければならない。成功するリーダーは浮き沈みを体験しながら、これらの戦略的、運用的、戦術的な思考を状況に合わせて適用していく。
リーダーシップサイクルは常に回り続ける。なぜなら、完璧なリーダーシップなど存在しないからだ。あるのは、飽くなき改善の追求だけだ。
ビジョン:最初に最終目標をイメージする
高いパフォーマンスを発揮できるチームをつくるには、絶え間ない活動のサイクルが欠かせない。継続的な改善、再構築と刷新のための厳格なプロセスが必要である。サイクルを始めるのは「最初に最終目標をイメージする」ことが極めて重要である。リーダーは常に、自分がどこに向かっているのかを把握しておかなければならない。最終目標、つまり使命は目的地に到達するための地図となる。
リーダーは何よりもまず最終目標としてのビジョンを描くことから始めなければならない。次にその最終目標を達成するためには何が必要かを逆算して、現在地からゴールに向かうための具体的なステップを定めていく必要がある。一旦戦略を定めれば、あとはチーム一丸となって目標に向かって突き進める。
ビジョンを設定したら、次の4つの戦略的なステップを踏むことが重要である。
- 原則を定める
- 価値観を設定する
- 雰囲気を理解する
- 現状を知る
原則や価値観の基礎となるのは、ハードワークや規律、鉄の意志、謙虚さ、好奇心、誠実さなどだ。しかしビジョンを導くために必要な勇気がなければ、それらは無意味になる。勇気がすべてのリーダーシップの中心にある。
構築:好奇心を持ち、新たなアイデアを取り入れる
スポーツにおけるトップレベルでの競争で勝ち負けを左右するのは、選手選手と戦術と才能が全体の15%で、残りの85%は集団内のコミュニケーションや環境が占める。だからこそ、チームが人間関係や連携を高めていくのを見守ることから始めるべきだ。
スポーツやビジネスの世界で何よりも貴重なのは時間であり、コーチやリーダーの最大の悩みは時間が足りないことだ。そこで「方向性を明確にし、変化をサポートする」ということが重要になる。方向性を明確にすることは、最終目標を実現する上で役に立つ。
目標を実現するためには常に新鮮なアイデアを探すことが必要だ。チームを取り巻く環境に良い刺激を与え続けなければならない。そして、人材を絶えず入れ替えていく。これまでとは違う視点や意見を持ったコーチや選手を入れることで、チームは活性化する。
また、チーム内に常に向上心があることも大切だ。それを支える鉄の信念は、逆境で鍛えられる。部下やチームを慢心させるべきではない。驕りや慢心を抑え、さらなる努力を積み重ねることは、大きな挑戦だ。そのためには、適切なコミュニケーションや文化、環境が必要だ。
実験:常に見直す
スポーツの世界で特に難しいのは、外野の批判や疑念によって窮地に追い込まれそうな時も、自分の計画を信じ続けることだ。規律を保ち、戦略を遂行することが肝心だ。雑音を遮断し、原則と計画を貫くこと。
同時に、戦略を練り直し、見直し続けることも大切だ。戦略の欠陥や、それらを修正するための最善策から目を背けてはならない。現在や未来の成功への鍵は、常に見直しを行うことだ。
勝利:頭のいい人からアイデアを拝借する
改善はリーダーにとって何より中心に置きたいテーマである。だから、より良くなろうと励み、自分よりはるかに知識がある人物を普段から探し続けるには、ある程度の謙虚さが必要である。そうした謙虚な姿勢があれば、部下も興味を抱く可能性は大いにある。
リーダーシップとは何か新しいものを見つけることではない。過去に成功した仕事について新しいやり方を見つけることだ。核となる原則は決して変わらない。成功した思想家の意見に耳を傾けるのは、誰もが求めているたゆまぬ進歩の手がかりとなる。
再構築:サイクルは回り続ける
リーダーシップサイクルに終わりはない。ハイパフォーマンスな環境は進化と改善の飽くなき追求を必要とする。省みる。見直す。計画を始める。先のことを考え出す。プロとしての成長に時間を割く。新たな試合に向けて準備する。
リーダーシップサイクルの発展に必要な持続的な成長は、マネジメントし、掘り出し、位置付けるという3つにかかっている。