転換点に備えよ
転換点はビジネス環境における変化であり、何らかの活動要因が劇的にシフトせざるを得ない状況を指す。同時に、それまで当たり前だと思っていた前提に疑いの目が向けられる。
状況が劇的に変わる大転換は、必ずと言っていいほど、しばらく前から徐々に起き始めている。これによって好機が生まれる。転換点をいち早く見抜くことができれば、それは戦略上とても有益なものになり得る。
転換点は、ある変化が、ビジネスの依拠する前提を覆す時に発生する。そうした明白な瞬間が訪れた際には、時機を逸することなく、軍勢を動員し、焦点を定め、そして転換後の世界に対応できる組織改革に全力で取り組まなければならない。転換点を引き起こすきっかけは、一般的に次のいずれかに見出すことができる。
- 科学技術上の変化
- 規制に関する変化
- 社会的な可能性
- デモグラフィック(ターゲット層)における変化の新たな結びつき
- 政治的な変化
- その他多数
転換点の動きは直線的ではなく、多くは間欠的に進行する。そのため、その重要性や潜在的なインパクトについて否定的な見方をしてしまう。転換点の展開には、次の4段階がある。
- ハイプ期(過度な期待)
- 幻滅期
- 黎明期
- 円熟期
転換点の兆しが見えた最初期段階でできる最も生産的なことは、その兆しに何か警戒すべき要素はないか注意深く見守ることだ。この段階で大きな賭けをするのは、まだ早い。
やがて物事が進展するにつれて、段階はハイプ期へと移行する。すると急に、識者たちは全世界の秩序が完全にひっくり返されそうだと宣言し始める。その結果として生まれるのがバブルだ。このハイプ期はほぼ例外なく悲惨な結末を迎える。この結末に導かれて、幻滅期へと入っていく。
ところが、この時期には本当の意味での好機がどこかにすでに到来している場合が多い。但し、幻滅期の苦境を生き延び、大きな成長へと進む基礎を築くことができるのは、初期の参入者の内のほんの少数だろう。この時点で、何らかの足掛かりになる投資について考えながら、どこに好機が転がっているかを探り当て、その転換点に対して機敏に応じられるように注意を向けておく必要がある。
転換点の兆候に気づく体制をつくる
「転換点の兆候」にいち早く気づくのは、そうした現象と直に接点を持つ人たち、科学者、毎日欠かさず顧客と話をする営業部員、電話で顧客の思いを直接知ることができるカスタマーサービスの受付係である。
雪解けが末端から始まるのなら、そこで実際に何が起きているのかを知るために、いくつかのメカニズムを整えておかなければならない。多くの重役たちは、末端部まで足を運ぶことを日々のスケジュールに入れていない。
次の8つの行動を実践すれば、組織の末端部で何が起きているのかを確実に知ることができる。
- 会社の末端部と首脳部が直接つながる体制を整える
- 未来についての多様な考え方を尊重するために、あえて自分の流儀から外れる
- 撤回できない重大な決断は慎重な意思決定を、撤回可能で実験的な決断は小さく機敏なチームに委ねる
- 失敗から大いに学べる小さな賭けを、組織の至るところで促進する
- 外的環境との直接の接触を追求する
- 社内の人々に、現状をありのまま聞く気にさせるインセンティブを与える
- 社内の人々がいつ否定の立場をとるかを把握する
- 今日、未来が展開しつつあるところに自分自身と組織をさらけ出す
様々な予測を知識に変えていく
仮説指向計画法は、現在、大きな牽引力を獲得しつつあるプランニング法だ。仮説指向計画法では、まず未来のパラメータをいくつか設定する必要がある。その後、時を遡りながら、その未来が現実になるには何が真実でなければならないかを突き止めていく。
基本的にこれはとるべき行動を綿密に計画するものではない。むしろ、転換点を念頭に置いた上で「学ぶ計画を立てる」ことに等しい。つまり、いきなり全力を挙げて取り組むのではなく、まず一枚岩の計画を細切れにすることから始める。これらの細かな計画は、それぞれ「チェックポイント」ごとに検証される。各チェックポイントで、2つの問いかけをする。
- 自分の学んでいる事柄がコストをかける価値があるのかどうか
- 学んでいる内容から考えて、そのまま計画通りに続行すべきか変更が必要か
ここで避けた方がいいのは、乏しい判断材料の中で正しさを求めて右往左往することだ。事実を十分に把握していない時に、判断の正しさを主張し合うのは時間とエネルギーの無駄である。
こうした状況で役立つのが、起業家精神に溢れたマインドセットである。そのカギになるのは、仮説指向を貫くことだ。答えをすべて知っている振りをするのはやめること。
起業家たちは、日頃からうまく先を見越すための行動をとっている。その最たるものが、多様ながらも無駄のない人脈の形成だ。こうした行動は、意識すれば誰にでも始められる。