部下に伝えるために大切なこと
①わかりやすく、簡潔に、印象深く
コミュニケーションにおいて大切なのは、「何を伝えたか」ではなく「何が伝わったか」である。特に大勢の部下の前で話をする時、部下はそれぞれの解釈で自分なりの受け取り方をする。そのため、伝えたいことができるだけそのまま「伝わる」ため、次の3つの工夫が必要になる。
- わかりやすいこと
部下と同じ目線で、部下にわかる言葉で具体的に話さなければならない。 - 簡潔であること
話は簡潔で短いほど相手に正確に伝わりやすい。簡潔な表現にするコツは、最も言いたいこと(主題)を1文にしてみること。3分の時間があればその理由を入れる。10分あれば自分の体験やデータも入れる。 - 印象深いこと
相手にイメージが浮かぶように工夫すること。「絵」に描いたように具体的に話すこと。
②「事実」と「解釈」を混同しない
コミュニケーション上の問題の多くは、「事実」と「解釈」の混同から生じる。人は言葉ではなく、自分の解釈によって傷つく。人の言葉や行為はきっかけであり、問題はそれをどう解釈するかである。一度できあがった解釈は強化されて「思い込み」となる。
リーダーは、両者を区別し、解釈を伝える時には、それが解釈にすぎないことをわかった上で伝え、相手の反応によって柔軟に対応する必要がある。
③「わからせる」責任は上司にある
部下が指示通りに動かないのは、部下が悪いのではなく、わからせていない自分に責任があると考え、効果的なコミュニケーションの仕方を考える必要がある。自分の言ったことが部下に伝わらない時、「なぜわからないんだ」と相手のせいにするのではなく、わからせていない責任は自分にあるとの立場をとること。
そのためには「私にできることは何か」「私が何とかします」「私の責任です」と言うこと。
④メッセージを効果的に伝える
褒める時、何を主語にするかによって、相手への伝わり方が違ってくる。部下にとって嬉しく、やる気の出る伝え方は「私」を主語にして伝えることである。部下の行動そのものの評価ではなく、そのことによって、上司である自分がどういう影響を受けたのかを事実として伝える。上司の気持ちの中に生じた事実であるため、部下にとっては否定する立場にない。それだけに「私」を主語にしたメッセージは部下の心にストレートに響きやすく、部下と上司との間に強い共感を作り出す。
この主語を「私」にすることをさらに進めたものが「私たち」「第三者」を主語にして伝える方法である。部下は自分の行動の影響力の拡大を体験できるだけでなく、チームに対する自分の貢献を知る。伝えられた部下の嬉しさとやる気はさらに高まる。
⑤話す前に聞く
部下のやる気を奪うのが「上司に話を聞いてもらえない」ことである。部下に限らず「人は話を聞いてもらいたい」という気持ちを持っている。人に話を聞いてもらっている間に、今抱えている案件を整理し、問題点に気づき、優先順位を決め、自分の中でやる気を作り出していく。
つまり、人は話を聞いてもらってからでないと、他の人の話を聞けない。上司は部下をやる気にさせようと思えば、まず話を聞くこと。何をどう話すかは、その後の問題である。
上司が部下の話に真剣に耳を傾けることは、部下のやる気を引き出すだけでなく、上司と部下の間や職場の雰囲気に様々な効用をもたらす。
⑥会話の目的を明確に持つ
コミュニケーションは、あくまで手段であって、それ自体が目的ではない。特に上司から部下への話し方には目的を持って臨むことが大切である。その会話から何を作り出したいのかを明確にする。その目的は会話の結果を左右する。
リーダーは明確な目的を持って会話をリードしなければならない。すなわち、会話をする前に、作り出したい結果を想定し、途中で内容を確認し、終わった後に評価する。作り出したい結果に焦点を当てていれば、感情の赴くままの、あるいは成り行き任せの会話はしない。
会話の途中で現在進行中のコミュニケーションが目的に沿っているかどうかを確認する方法に「メタ・コミュニケーション」というスキルがある。そのコミュニケーションを少し距離をおいて客観的に観察してみるのである。もし、目的に沿っていなさそうなら、そのことを相手に伝えればいい。
⑦大勢の部下を納得させる
部下の納得を得るためには、上司は自分の言葉で、自分の気持ちを正直に伝えてみること。人を納得させるためには、単に理屈でわからせるだけでなく、感情への働きかけが必要になる。優秀な上司ほど、理屈で人を納得させようとするが、部下は「頭ではわかるが、その気になれない」ということが生じる。
頭で伝えたことは相手の頭に伝わる。心で伝えたことは相手の心に伝わる。心で伝えるには、自分の気持ちを正直に伝えることである。