MOpsとは
「マーケター」は広告運用、コンテンツ制作、イベント運営、データ分析、マーケティングオートメーションの運用まで、実に幅広い責任範囲を任されている。チャネルやテクノロジーツールは爆発的に増え、その専門性や複雑性も上がっている中で、施策の実施に加えて戦術設計も行うのは現実的に難しくなっている。
そこで、実務者であるマーケターと、テクノロジーツールやプロセス、組織体制などを管理運用するマーケティングオペレーション(MOps:Markething Operations)という役割に分かれ、それぞれ専門性を持つようになった。
MOpsチームはよく「マーケティングとITの架け橋」と呼ばれ、実際に施策を実施するマーケターとIT担当者の間に入り、業務を進めている。つまり、IT部門と共通言語で会話ができるくらいクラウドシステムやデータマネジメントの知識が必要とされ、従来のマーケターとは異なるスキルが求められる。
MOpsチームは、実際の施策の企画や運用は行わず、システムやデータの管理、プロセスの管理・運用に徹し、舞台裏からマーケターの生産性向上などをサポートする。その業務内容は次の4つに分けられる。
①自社に最適なマーケティングテクノロジーの選定・導入・管理・運用
これを効果的に行うには各ツールに関する知識など技術的な要件はもちろん、自社のマーケティングの現状や戦略、ロードマップなどのビジネス的な要件も理解する力が必要になる。
②プロセスの策定とベストプラクティスの集約
社内での運用ルールを策定し、ノウハウを一元化することで全社的なテクノロジー活用を推進する。
③データマネジメントと分析
他部門と連携し、マーケティングが収益に与えた影響を可視化するために高度なデータマネジメントと分析スキルが求められる。DMPやBIツールの知識、分析に必要なRやPythonなどのプログラミングの知識が求められることもある。
④マーケティングチームのテクノロジー教育
文書やセッションなどを通して正しいツールの使い方や社内のルールなどを伝える。
MOpsの体制をつくる
MOpsの体制をつくるためにはまず、各マーケティング職の役割を明確化し、組織体制をデザインする必要がある。
マーケティング組織モデルに正解はない。以下は組織モデルの一例である。
- 広報・PRチーム
CMOがまとめるマーケティング部門の中で組織全体のブランディング戦略を立てる - デマンドジェネレーション
事業や地域ごとに製品・サービスを様々なチャネルでターゲットに訴求し主にリード獲得や育成を担当する - MOps
マーケティング活動を統括し、テクノロジースタックやプロセスの管理、データ分析などを専門的に行う
適切な組織モデルは会社組織の規模、マーケティング組織の規模や予算、実現したいマーケティング施策や活動量によって大きく変わるため、自社のマーケティングニーズに応じてデザインし、適切にリソースを配置することが重要である。
組織デザインを進めていくと自然と自社のマーケティング組織に必要な人物像が明確になる。各ポジションに求められる要件が具体的に見えるようになるため、その仕事を全うするのに必要な過去の経験やスキル、知識を整理することができるようになる。
MOpsの体制をつくる上で次に取り組むのが、コミュニケーションプランの策定である。現状、マーケティング部門が行なっているミーティングやコミュニケーションチャネルを全て書き出し、それぞれのコミュニケーションチャネルのアジェンダや目的、参加者、頻度と形式を埋めていく。そもそも不要なもの、ツールで補えるもの、合併できるものはないかを確認し、効率性とコミュニケーションのスムーズさ・簡便さの両方の観点でコミュニケーションプランを策定する。
チームワークが重要なマーケティング部門にとって、チーム全体が共通知識やノウハウを持ち、常にアップデートすることはマーケティング施策の成功に欠かせない。この一元化されたナレッジベースを構築することはMOpsの体制づくりの中でも重要になる。
ConfluenceやNotionなどのプラットフォーム上でチームがいつでも誰でもアクセスできる社内Wikiを作成し、そこにノウハウやベストプラクティスはもちろん、マーケティング部門の組織図やマーケティングカレンダーなど、マーケティング部門に関わる情報を全て載せることで、個人の学びをチーム全体の学びとして吸収するようにする。
MOpsのKPI
MOpsの功績を適切に測定するためには、従来マーケティング業務に対して使われているKPIに追加して、マーケティングの生産性、効率性向上を計測するKPIが用いられる。
- マーケティングチームの業務効率化
- インターナルステークホルダーの満足度
- マーケティングテクノロジーの活用度