事業計画とビジネスモデルの違い
事業計画は「商品やサービス」を定義して、それをどれくらいの「手数」でできるのかをはっきりさせる。そして、それらを「財務」的に翻訳して、利益として表現する。最後には、予想の財務数値ができる。事業計画は、これまでに存在しているビジネスの延長上で、明確な計画を立てる。
一方、ビジネスモデルでは、まずお客様に提供する価値を定義する。ここでは、他社の「顧客価値」とどれくらい違っているのかという事が重要になる。次にその価値提案でどんな利益の取り方ができるのかを考える。顧客価値提案と利益設計の組み合わせを考え、最後にそれをどのように実行するかという「プロセス」を考える。ビジネスモデルを考える際には、顧客価値と利益、プロセスの3つについて、事業を始める前に、それぞれの関連性を思い描く。
価値は顧客が決める
ビジネスの目的は顧客を満足させる事である。そのために、会社は存続のための「儲け」を得る必要がある。顧客を満足させながら、儲ける仕組みこそが、ビジネスモデルに課されたテーマである。
価値は、作り手側が自分で決める事ができない。その製品が、相手にとって便益があると判断され、その便益を支払ってもいいと相手が判断した範囲で価格が収まっている時、相手は価値も感じる。
新たなビジネスモデルを作り出す上では、顧客価値提案が最も重要になる。顧客が製品やサービスを買うのは、多くの場合において、その製品が「欲しいから」ではない。なんらかの「用事を解決したい」から、その解決策として製品を雇っているだけである。価値提案のヒントを得る上では、観察型のマーケティング調査が欠かせない。
ハイブリッド・フレーム
「儲ける仕組み」は、ビジネスで使う「右脳(顧客満足)」と「左脳(利益)」の両方を同時に、ハイブリッドに思考する事で生まれてくる。「儲ける仕組み」を効果的に解明するツールが「ハイブリッド・フレーム」である。
ハイブリッド・フレームは、顧客価値と利益、プロセスについて、Who-What-Howで考える。Who(誰)、What(何)、How(どのように)を顧客価値提案、利益、プロセスに分けて、3×3のマトリックスで9つの質問を設定する。9つの質問を埋めて、ストーリーを紡ぎ出す事が必要である。
これまでの競争戦略論では、製品ごとに粗利益を設定して、原価に一律の%を乗せて販売するという事が考えられてきた。しかし、現在採用されている課金モデルでは、そうした一律の粗利を諦め、時には原価を下回る価格で特定の製品を販売しながらも利益を生むという思考をするようになった。低価格や無料で製品を提供して、別の製品や支払い主を見つけてカバーしてもらうというやり方を取る。
利益インデックスは、課金方法を体系的に確認する方法である。利益のWho-What-Howにバリエーションを持たせる。すると世の中の課金方法は8つに集約される。
顧客の活動チェーン
大切なのは、「片づけるべき用事」よりも、そこからソリューションを差し引いた未解決の用事を深くとらえる事である。顧客の用事を見据えて、未解決の部分が多くある時、そこには大きなビジネスチャンスがある。
顧客を効果的に観察し分析するためのツールが「顧客の活動チェーン」である。顧客が用事を解決できないでいる状況で起こっているのが、製品を取り巻く周辺事情である。購入時から、使っている時、使い終わった後までを、一連の流れとしてお客様目線で考える。