人と組織を動かす実行力が大切である
知識やノウハウが豊富だからといって、「仕事ができる」わけではない。「知識」や「ノウハウ」は仕事をする上での必要条件ではあっても、十分条件ではない。重要なのは、具体的に仕事を前に動かしていく「実行力」である。
会社員の強みは、会社が有するリソースを活用して、世の中の「不」を解消できるということ。会社のリソースを使えるからこそ、一人ではできない「大きな仕事」ができる。但し、そのためには、社内の人々を味方につけ、組織を動かすことができなければならない。
人や組織は、理屈だけでは割り切れない複雑な存在である。経営陣、上司、部下など社内の人々を味方につけるためには、そうした「人間心理」への鋭い感性が求められる。さらに「組織力学」に対する深い洞察がなければ、組織を動かすどころか、組織に押し潰されてしまう。
「人間心理」と「組織力学」に対する深い洞察力。その洞察に基づいた的確な行動力。この2つの能力を兼ね備え、人と組織を巧みに動かす「実行力」を身につけた時に、はじめて「仕事ができる人」という評価を勝ち取ることができる。このスキルを「Deep Skill」と名付ける。
「ずるさ」ではなく「したたかさ」を磨く
人や組織を動かすとは「この人に任せてみたい」などと、周囲の人たちに自発的に思ってもらうことに他ならない。そのためには、自分が「信頼される人間」であることが大前提となる。
信頼を勝ち取るためには「誠実である」ことに尽きる。日々、当たり前の小さな信頼を積み上げることができなければ、多少の成果が出たとしても、活躍の場が広がることはない。人や組織を動かすためには、コツコツと「信頼資産」を貯めることが不可欠である。
但し、それだけで動いてくれるわけではない。そこにしたたかな戦略性が必要である。したたかな人は、感情は横に置いて、プロジェクトを成功させるためにどうすべきかという「目的合理性」に徹する。そのために「勝ち馬に乗りたい」「後ろめたい」という周囲の人々の心理をも上手に利用する。
優柔不断な上司に「決断」を迫る
組織で仕事を進める上で「上司の決裁」は不可欠である。しかし、特にイレギュラーな起案などは、上司が最終的な意思決定を避けようとする場合がある。ここで意思決定することが上司の本質的な職務であるという「正論」をぶつけても、上司の反発は必至で、状況をさらに悪化させる結果を招いてしまう。
「そもそも上司は意思決定したくない存在である」というのが現実である。この現実を認めた上で、次の3つのステップで上司に意思決定してもらう。
- 上司の「不安」を見極めて、それを軽減する材料を徹底的に揃える
上司の意思決定責任が問われる局面が訪れたとしても「これだけの根拠をもとに下した合理的判断だった」と言い訳できる安心材料を揃える。 - いま意思決定しないことのリスクを伝える
- 起案を認めることで、どのような可能性が広がるのか未来像を描き出す
上司が共感するビジョンや将来像を示すことができれば、意思決定する可能性が高まる。
弱者でも「抜擢」される戦略思考
「自分の存在」を認めてもらうことは、組織で仕事をしていく上で欠かせない。存在が認められることで、はじめて「発言力」や「影響力」が備わるからである。そのためには、何より「実績」が必要である。
若い人は、なんとしても「実績」をつくるべく、なりふりかまわずやれることは何でもやると覚悟を決める必要がある。必死になって「量」をこなす時期は、ビジネスパーソンとして成長する上で必要不可欠である。
「量」をこなすことで、勘や感覚などの「経験値」が身に付く。自分の価値を高める上では、現場経験でしか培うことのできない「経験知」を蓄積することが重要である。なぜなら、「形式知」は勉強をすれば誰でも手に入るものだが、「経験知」は自身の経験からしか得られない唯一無二のものだからである。
何らかの実績を出し、自分の存在を認められれば、組織の中で「仕事」や「キャリア」を選択できる機会が広がっていく。そこで重要になるのが、組織の中における「ポジショニング」である。自分の存在をアピールし、自分の価値を最大化するために、何を武器に働くかなどの選択に工夫を加え、周囲の中で際立つ「特徴」をつくり出すことを強く意識する必要がある。
まず大切なのは「他の人と同じことをしない」ということ。ポジショニングする上で大切なのは、「組織にとって重要であるにもかかわらず、まだ誰もいない領域」を見定めて、そこにいち早く飛び込んでトップランナーになることである。