なぜ今ローソンが「とにかく面白い」のか?

発刊
2015年5月25日
ページ数
277ページ
読了目安
284分
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ローソンの宣伝
40周年を迎えたローソン。最近のコンビニの商品は進化していると、ローソンの商品について紹介されている本。『プレミアムロールケーキ』『MACHI cafe コーヒー』『ブランパン』など、ヒット商品がどのように生まれたのかなどが書かれています。

ターゲットを変えて、新しい市場をつくる

コンビニで売られている「ロールケーキ」が大きな話題になったのは2010年。コンビニ各社がロールケーキを次々に店頭へと送り込み「ロールケーキ戦争」ともいうべき状態になった。その火付け役こそ、ローソンだった。

当時、ローソンのデザートは、競合に出遅れていた。これを一気に巻き返すべく「Uchicafe SWEEETS」ブランドを立ち上げ、そのキー商品として生み出したのが『プレミアムロールケーキ』だった。デザートを全く新しくするという命題に対し、真っ先に浮かんだのが、ターゲットを変える事だった。コンビニのメイン客はかつては男性だったが、実はコンビニに来る男性のデザートのマーケットよりも、元々デザートは好きだけど、コンビニに来ない女性にターゲットをシフトした方が、マーケットは大きい事に気が付いた。

 

消費者の声を聞く

まず取り組んだのが、消費者の声にとことん耳を傾けてみる事だった。百貨店や専門店ではスイーツを買うのに、どうしてコンビニでは買わないのか。中でも最も多かった声が、生クリームがおいしくないというものだった。コンビニのスイーツは男性向けに量を意識してしまう。そのため、コストを下げようと、クリームは油脂メーカーの植物性脂肪のホイップクリームを使うのが常識だった。これだと1kg300円ぐらい。それに対して、専門店では1kg1000円ほどの乳業メーカーの生クリームを使っていた。この差にスイーツの味に敏感な女性たちは気が付いていた。

コストは高くなり、値段が少し上がる。しかし、コンビニのデザートとしてはちょっと高いけれど、スケールメリットを活かし、百貨店や専門店のデザートよりは安い、というゾーンを作れると考えた。生クリームを変えて、新しいマーケットを作ろうと考えた。

人気の洋菓子屋を食べ歩いたり、たくさんのクリームを食べ、おいしいクリームとは何かを考えた。そうやってわかったのが、最初はミルク感があるけれど、すごく軽いクリームというものだった。ターゲットにした女性のお客様の不満はクリームにあった。ならば、おいしいクリームを作らない限り、絶対にこのブランドも成り立たないと思った。

求めるクリームができた時点では、何のスイーツを作るのかは決まっていなかった。そこで目をつけたのが、ロールケーキだった。一部の専門店でロールケーキが人気になっていた。ロールケーキはクリームと生地だけなので、クリームをたくさん食べる。おいしいクリームに気付いてもらうには格好の商品だった。しかも専門店のロールケーキは家族で食べる1本売りで、1人で買うには不満があり、チャンスだった。

ローソンでは、デザートは全国で1日5万個ほど売れると、ヒット商品の部類に入る。発売直後から『プレミアムロールケーキ』はお店で20万個は売れ、すぐに売り切れる店舗が続出した。

一方、こんなローソンの1人勝ちを競合が黙って見ているはずがない。半年後には10社以上がロールケーキを売り出した。そして経営陣はすぐにテレビCMを決め、最高で1日60万個が売れる超メガヒットとなった。さらに競合が出てくる事を見越して、すぐにモンドセレクションに出し、金賞を受賞した。おかげで本家はここだと伝える事ができた。

実は、コンビニ業界は真似を恐れない。真似をされる事で、商品が認知されてマーケットが一気に広がっていくからである。ブームになれば、すぐに消費者の知るところになる。『プレミアムロールケーキ』は、コンビニのスイーツのイメージをも一新してしまった。