言葉のアップデート術
・デカい主語から小さい主語へ
「主語がデカい」とは、特定の人や自分を主語として伝えるのではなく、不特定多数の人が主語かのように伝えることである。「〜だとみんな思っている」「欧米では当たり前だよ」などのように、それぞれの事情を無視し、大多数の意見や傾向のように言うことで、自分の主張に説得力を持たせる。
簡単に強い言い方だが、いたずらに「デカい主語」で断定すると、反感を買ったり、過度に相手を追い詰めたり、事実誤認の原因になるリスクがあり、聞き手に違和感を与える表現になる。
主語の範囲を小さく具体的にして、反感を買いにくい言葉にすると、聞き手は嫌な気持ちにならずに話を返せる。
・二人称から、一人称へ
完全には他人の気持ちを想像できなくても、コミュニケーションにおいて「自分ならこうする」があれば十分なケースはたくさんある。「あなたはこうするべきだ」ではなく、「私ならこうする」と言い換えるだけで、視点はガラッと変わり、言葉を受け取る側の抱く印象も好転する。
大切なのは、相手の行動をストレートに変えようとはせずに、まずは自分が行動で示して、その意図を感じさせるというアプローチである。
・ヒトの話から、コトの話へ
同じ現象でも、ヒトに焦点を当てるか、コトに焦点を当てるかで、与えられる示唆は異なる。SNSなどで、ヒトに焦点を当てると、非難の応酬になり、建設的な議論が成り立たなくなることがある。コトに焦点を当て、「どちらが正しいか」ではなく、「どのように解決できるか」を考える姿勢が大切である。
・二項対立から、中庸へ
「複数ある選択肢のどちらを支持するか」ではなく、目的に合わせて真ん中に立脚する「中庸」の視点が有効な場面は少なくない。「中庸」の概念は、「超過」と「不足」の間をとれば、大体のことが上手くいくという思想である。
とりわけインターネット上の言論空間では、極端な意見や行為が注目を浴びやすい。その理由の1つに「中庸の意見を投稿しても面白くない。だから拡散しない」側面がある。
そこで、単純に間をとるのではなく、新しい発想やクリエイティブのチャンスと捉えればいい。
・相対評価から、絶対評価へ
相対評価される世の中で、絶対評価という観点が実は重要な時代ではないか。SNSのある現代では、誰とも比較しない生き方が難しい時代である。他人との比較をやめるには、比較対象を過去の自分にするのがポイントである。どんなに落ち込んだ時も「あの頃の自分は勉強不足だった」とか思えば、努力の方向性は見えてくるはずである。
・自己顕示から、自己開示へ
何度も自慢によるマウンティングを繰り返す人がいる。給料自慢、ブランド品自慢、仕事自慢、友達自慢、古参アピール、寝てないアピール、自虐など。自己顕示するよりも、自己開示した方が楽しい。
「嫌い」なものに石をぶつけて、自己顕示欲を満たす人が目立つ社会において「好き」を通じてつながれるのは希望である。誰かが自分の「好き」を自己開示したら、周りの人も、その「好き」を全力で肯定すること。そうすれば「嫌い」の居場所はなくなる。
・感想から、感謝へ
「感謝」を要素分解すると「心が動いた時、言葉を放って緊張を緩ませる」という意味になる。感謝とは「想うだけでは不十分で、言葉を放つ必要がある」ということである。
感謝には2種類あると言われている。
- Doing(行為)への感謝:誰かに何かをしてもらった時の感謝
- Being(存在)への感謝:生きていることや、家族や仲間が存在してくれることへの感謝
研究によれば、「Doingの感謝」だけしているとエゴが強くなり、長期的には鬱傾向になると言われている。一方で「Beingの感謝」をしている人は成長意欲が高まり、困難に立ち向かう勇気が出てくる。
「誰かの存在」に想いを馳せて感謝してみると、明るい気持ちになることができる。