100兆円の巨大市場、激変 プロップテックの衝撃

発刊
2021年4月1日
ページ数
272ページ
読了目安
452分
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推薦者

不動産、建物の領域もテクノロジーによって変わる
土地や建物を対象とした領域にテクノロジーを使って新たなサービスを提供する「プロップテック」の概要と事例を紹介しています。近年、海外で不動産売買にAIを導入したり、オンライン化するなど進歩が目覚ましいプロップテックの状況が書かれています。

プロップテックとは

国内の市場規模46兆円の不動産という巨大な市場に、スタートアップによる変革の波が押し寄せている。PropTechとは、Property(土地、建物)× Technolory(技術)を掛け合わせた造語である。つまり土地や不動産といった財産を対象としたイノベーションを指し、それは大きく2つの形態に分類することができる。

 

①テクノロジーを活用して個人、法人向けに不動産関連サービスを提供する

②テクノロジーを活用したツール、ソリューションを不動産関連事業者に提供する

 

PropTechとは、不動産事業者に限らず、一般の個人や企業など、すべての利用者を起点にしてPropertyの領域を最適化、あるいは再定義しようとする試みである。エンドユーザーを起点にして土地や建物に焦点を当て、人々の生活や働き方に、より高い付加価値や利便性をもたらそうとする試みである。

 

プロップテックのサービスの特徴

PropTechのサービスでキーワードとなるのは「アンバンドリング(分離、分解)」と「ワンストップ」である。ITをはじめとするテクノロジーを不動産、建設、金融の領域に持ち込むことによって、エンドユーザーの利便性向上、付加価値向上を目指すことが大前提だ。その上で、以下の2つのアプローチを行う。

 

①不動産の業務やサービスを「アンバンドリング」して領域を特化して効率化・改善を目指す

②一気通貫の「ワンストップ」で提供してサービス全体のUI/UXを再定義する

 

さらにPropTechの製品やサービスは、大きく分けて2通りに分類することができる。

 

①プレーヤー型

スタートアップ自らがITを活用し、エンドユーザーである個人や法人向けに不動産関連サービスを提供する。垂直統合、ワンストップでデジタル化された事業展開が特徴である。典型例の1つには、We Workがある。業態としては、オフィス床を賃貸し個人・法人向けにサブリースする不動産会社で、自社をデジタル企業と位置付けている。

 

②サポーター型

不動産事業者向けにITツールを提供する。不動産事業者などを対象に、業務の効率化をサポートする製品やサービスを提供する。

 

プレーヤー型、サポーター型のどちらの場合でも、共通した背景には、業界に対するテクノロジーの活用余地の大きさが挙げられる。プレーヤー型は、利用者が不動産を「買う」「売る」「借りる」といった目的に合わせてサービス提供を行う。世界のトレンドは、米国のスタートアップを中心に、プレーヤー型が主流だ。但し、不動産を在庫として持つことで多額の資金が必要となる。

一方、サポーター型は、不動産業の開発、分譲、仲介、管理といったそれぞれの業務に特化した効率化ツールを提供している。不動産業者側にも明確な課題が存在するものの、既存の業務フローを前提とした改善や効率化となるため、なかなか簡単には進まない。

 

プロップテックの事例

・Divvy Homes(米国)

主に低所得者、クレジットスコアが低く住宅ローンを組むことが難しい人々を対象にして、住宅価格の最大2%を前払いすれば住宅を入手できるサービスを提供。ユーザーである購入者は入居後、市場価格より割高な家賃をDivvyに支払う。3年間のリース契約となり、ユーザーの毎月の支払額の最大25%が貯蓄され、住宅購入の頭金に利用できるように準備される。3年が経過した時点で、そのまま自宅を購入するか、契約を解除して貯蓄分を現金化するかを選べる。

 

・ツクルバ

中古・リノベーション住宅の流通プラットフォームを運営。東京区部を中心とするエリアで売りに出るリノベーション済み分譲マンションと自分好みの中古住宅を買おうとする個人をマッチングする。

 

・Opendoor(米国)

iBuyer(Instant Buyer)の先駆け。テクノロジーを用いて住宅価格に即時でオファーを出して買い取る。企業が個人の売り手から直接住宅物件を購入し、最終的にそれらを再販売する。従来の不動産会社と異なり、オンライン上でAIや機械学習を用いて不動産の評価を迅速に行い、現金買取を即時に実施する。米国における不動産の売買に要する期間は60日とも言われており、長い時間と手間がかかる。同社はそうした時間やプロセスを限りなくゼロにすることに取り組んでいる。

 

・Cadre(米国)

富裕層や機関投資家向けに特化した、商業不動産を中心としたクラウドファンディングを展開。最低投資金額が5万ドル以上と高額であることが特徴。投資地域および対象不動産の選定については、これまで蓄積してきたデータ、経験豊富なプロチームと機械学習などのテクノロジーを活用して実施される。

 

・GA technologies

不動産投資をはじめ、住まいの「買う」「借りる」「売る」「貸す」の全てを扱う総合プラットフォームを展開。不動産投資に関するデータや動向を知ることができ、オンラインから不動産投資のサービスにアクセスする。同社の強みは、投資用不動産マンションの販売における、仕入れと販売への徹底したテクノロジー導入がある。