人間の知的能力の発展
人間の知的能力は、三角形で表され、知の発展は右上に広がることで表される。
横軸(量的拡大):知識や情報の量的な拡大で、幅が広くなればなるほど知識や情報の量が増加している。
縦軸(質的拡大):具体と抽象の軸で、下から上に抽象度が上がっていく。(データ→情報→知識→法則)
この縦方向の移動、すなわち「考える」ことの中核となるのが「抽象概念を操作する」ことである。人類は日々の生活における個別の経験から共通の法則を見つけたり、言葉や数といった抽象概念を発展させることで知を進化させてきた。抽象化を個別の知識や経験と組み合わせることで、単なる「足し算」としての知識や経験の蓄積を「掛け算」することでレバレッジをかけることができるようになった。
人間の知的能力における「縦の進化」というのは、抽象化によっていかにより広範囲のものを1つの理論体系で扱えるかという「統合化」の歴史でもある。
問題解決の3パターン
問題解決には、次の3パターンがある。
①具体→具体の問題解決(表面的問題解決)
言われた通りに何も考えずに「そのまま対応する」というパターンで、顧客から「値段が高い」と言われたので値下げするといったことである。また前例通りにやる、過去の成功体験をそのまま当てはめるといった言動もこれに相当する。
②抽象→抽象の問題解決(机上の問題解決)
空虚な一般論のみというパターン。顧客ニーズの把握ができていないので、適宜迅速に対応策を強化していきたいといったような精神論もこれに当たる。
③具体→抽象→具体の問題解決(根本的問題解決)
まずは現実の事象を具体的に捉え、それを一度抽象化して根本的課題を追求した後に、その解決策を実践に導くために再度具体化するという、具体と抽象の行き来による問題解決パターン。
抽象化と具体化という形で発想するということは、「すべての事象がつながっていて同じ構図でできているので、その個別の特性を考えて一般化と特殊化を考慮して考える」ということで、人間の知的能力をフルに発揮して実践に活かすために必須のことと言える。
抽象化とは
- 同じ属性を持ったもの同士をまとめて1つに扱う
- グループと別のグループに線を引く
- 対象物に付随する様々な特徴の内、ある目的に合致した特徴のみを抜き出す
- 目的に合わせて都合の良いように特定の属性だけを切り取る
- 特定の特徴だけを抜き出すことで、不要なものを捨てる
- 言語化、図解する
- 自由度を上げ、選択肢や次元を増やす
- 事象間の関係や構造を明確にする
- Whyを問う
- メタ(より上の視点)で考える(全体を俯瞰する)
具体化とは
- 選択肢や変数を絞り込んで自由度を減らす
- Howを問う
- 引かれた線の中を詳細化する
- 数字と固有名詞に落とし込む
- いかにも解釈できる状態をなくす
- 相違点を明確にする
抽象というインプットから具体レベルにつなげるためには、情報や知識の量と多様性が重要な役割を占める。
具体と抽象の領域を認識する
問題解決は大きく2つに分ける事ができる。
①問題発見(抽象化):そもそも問題は何なのか(Why)
問題発見に必要なのは、様々な具体的事象から本質的な課題を抽象化して抽出することである。
②問題解決(具体化):その問題をどうやって解決するか(How)
一度定義された問題を具体的な製品やサービスなどに落とし込んでいくために、Howを問う。
問題発見と問題解決では、向かう方向が180度異なる。にも関わらず、これらが同じ土俵で議論されるために、「どちらが正しいのか?」という不毛な議論が後を絶たない。今対象にしているのがどちらの領域なのかを判断すれば、その場面でどちらが適切なのかがわかる。