競争優位を実現するファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略

発刊
2013年10月6日
ページ数
372ページ
読了目安
593分
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星野リゾート社長の経営バイブル
星野リゾートの社長が教科書としている経営理論。様々な事例をもとに、ビジネスに関わる5つの要素、価格、サービス、アクセス、商品、経験価値の適正なバランスをとることが、商品やサービスに価値観を生み出し、競争優位を実現するという内容が書かれています。

一流の神話

あらゆる商売は、価格、サービス、アクセス、商品、経験価値という5つの要素で構成される。多くの企業は、この5分野すべてにおいて「一流」であろうとしている。この的外れな戦略を「一流の神話」と呼んでいる。これにはいくつかの欠点がある。

①一企業がすべてに秀でるのは不可能である
②5分野すべてに秀でた企業があったとしても、その会社は自社の「提供できる価値」を消費者にうまく伝えられない

 

5つの要素のどれを選ぶかによって、その会社の競争分野が決定される。成功している企業はみな、ターゲットとなる顧客が最も高く評価している要素に磨きをかけている。

 

消費者は価値観を求めている

次の3つの大きな変化が、消費者の欲求に変化をもたらしている。

①共同体の衰退
人は誰しも、自分が認め、親しみを感じる価値観が表現されている場所に身を置こうとする。しかし、そういった役割を担っていた家族、政府、結婚生活、学校、教会などがほころび始めている。そのため、そういった責任が商品やサービスの提供側に重くのしかかっている。

 

②プライベートタイムの減少
メールや携帯、パソコンに追われ、誰もが時間が足りないと訴えている。

 

③情報・通信技術の氾濫
情報へのアクセスが爆発的に増加している。結果、誰を何を信じればいいのかわからない。

 

これは企業にとってのチャンスだ。価値観の大切さに気付いてどこに重点を置くかを見直し、企業にも顧客にもメリットのあるものに変える好機なのだ。

 

ファイブ・ウェイ・ポジショニング

顧客の目からビジネスを見て、顧客1人ひとりが意義を見出せるような条件でビジネスを行い、さらに利益につなげる戦略を、ファイブ・ウェイ・ポジショニングと呼んでいる。ファイブ・ウェイ・ポジショニングのレンズを通して見ると、優れた企業は、価格、サービス、アクセス、商品、経験価値の5つの要素の内1つで「市場を支配」し、もう1つの要素で「差別化」に成功し、残りの3つの要素で「業界の標準」レベルを保っている。5段階評価で言えば、5点が世界レベル、4点が差別化レベル、3点が業界標準レベル、そして1点は受け入れがたいレベルだ。理想的なスコアは、5、4、3、3、3である。

 

5つの要素のどれか1つでも業界の標準を下回っていると、長くは生き残れない。消費者が、その企業の提案する価値を、いずれ拒絶する事になるからだ。一方、2つ以上の要素で5点や4点を獲得している企業は、無用な差別化をして金を失っている。5つの要素の適正なバランスを見つける事が大切である。

消費者からのメッセージは明確だ。「私が欲しいもの(正直さ、敬意、信頼)をくれるなら、あなたの欲しいもの(忠誠心)をあげます」だ。消費者と売り手の交流は、3つのレベル(受け入れる→好む→選び出す)のいずれかで行われている。企業が、消費者との関係を深め、交流の階層を上がっていくには、ファイブ・ウェイ・ポジショニングというコンセプトが必要である。。商売の中で価値観を表現していく事によって、売上アップを図る。

 

ファイブ・ウェイ・ポジショニングの戦略をとる企業は、顧客にまつわる要素「価格」「サービス」「アクセス」「経験価値」「商品」のすべてにおいて市場を支配しようとは考えない。「何においても一流を目指せ」という誘惑に打ち克つ術を学んでいるのだ。消費者の頭の中で価値を持つのは、5つの要素全体の「総合点」である。成功を目指す企業は、次のルールを守らねばならない。

 

①完璧なスコアは、第1位の要素で5点(市場支配)、第2位の要素で4点(差別化)、残り3つの要素で3点(業界水準)を獲得すること。

②3点に満たない要素が1つでもあれば、持続不可能であり、ブランドにダメージが生じる。

③市場支配や差別化を複数の要素で達成している場合は、度を超えており、金銭的な問題を抱える事になる。

④3点(業界水準)の定義は、消費者の期待が変化するたびに、頻繁に変わる可能性がある。

 

5つの要素の適正なバランスを見つけるのは難しい。しかし、ウォルマート、サウスウエスト航空、イケアなど、成功企業の多くは、第1位の要素で群を抜き、第2位の要素で差別化し、残り3要素の仕事ぶりでは受容レベルを維持するという道を選んでいる。