経営中毒 社長はつらい、だから楽しい

発刊
2024年2月29日
ページ数
368ページ
読了目安
450分
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スタートアップ経営が直面するリアルな課題
1000社以上の企業コンサルティングを手掛け、スタートアップ支援も行う著者が、スタートアップの創業から成長期、拡大期におけるそれぞれの経営が直面する課題を紹介している一冊。

資金繰り、経営メンバーの離反、組織の混乱、サービスが売れないなど、様々なリアルな課題が解説されています。
特にスタートアップ経営に関わる人にとっては、共感する部分が多い内容になっています。

「困難との向き合い方」に企業経営の要諦が詰まっている

多くの会社が創業して1〜2年目に苦しい状況に陥っている。そして会社を起業してどれだけ経っても、すべてが計画通りに進むことは絶対にあり得ない。会社の創業時やその後に降りかかる問題には、何かしらの原因がある。問題が起こっても、どう対応するかの「羅針盤」を持っておくことで、困難の荒波を越えていける可能性は圧倒的に高まる。

 

苦しい時期を耐え抜いていると、思いもよらない奇跡がやってくることもある。それは単なる「まぐれ当たり」ではない。奇跡を起こせるは「次の打開策を考えて行動し続ける」からである。1つ1つの問題に対して、その原因と構造をちゃんと分析して改善していくことで、活路は見出される。この直面する困難との向き合い方にこそ企業経営における「原理原則」が表れる。

 

「資金繰り」は最初に直面する悩み

社長にとって悩みの種となるのが「カネ」である。中でも創業時に直面しがちな「資金繰り」の苦しさはスタートアップ、中小企業共通の悩みである。わかりやすいのは「給料」の悩み。社長にとって、給料=払うものであり、給料日は「しんどい日」に変わる。毎月の支払いは給料だけではなく、様々な支払いが押し寄せる。そうした支払いに対して、入金されたお金でどうにかこうにかギリギリで払っていく。創業初期の企業のほとんどが、この自転車操業の状態に一度や二度は陥っている。

 

スタートアップのように、将来的な黒字化を見据えて、調達したカネを投資に回し、その結果、赤字経営をせざるを得ないようなケースもあるが、これはこれで悩ましい。事業に集中したくても、常に次の資金手当てのことを考えなければならない。事業を成長させるには先行投資せざるを得ないので、人や設備、広告などにもお金を使い、気づいたら調達した資金が「溶けて」いく。

最悪なのは、目先のお金をかき集めることばかりに忙殺されて、本来、社長がしなければいけないことに時間を割けなくなることである。創業時に掲げた崇高なビジョンも「明日のご飯」に困ってくると、どこかに行ってしまうのである。すると、会社の成長が止まってしまい、人も離反する。こうした事態を防ぐには、事業を進捗させつつ、不要なコストを極限まで抑えるしかない。

 

会社は99.9%「人の問題」で崩壊する

仲間が増えてくると、自分だけが責任を取ろうとしてもコントロールできない。他人は当然、自分の考えている通り動いてくれないからである。様々な思惑を持った人が絡むと、必ず何らかの問題が発生する。

 

多くのスタートアップは、創業から1年前後の時期に、しんどい局面がやってくる。最も辛いのは人が辞めていくこと。社員だけでなく、経営メンバーが抜けるケースも少なくない。いくら仲が良かったとしても、他人は他人である。お互いにプライベートも抱えている。しかも毎日のように修羅場が訪れるので、構造的に揉めやすい。

経営メンバーが揉める一番の原因は、会社の舵の取り方、つまり意思決定をめぐるケンカである。とりわけスタートアップが立ち上げるビジネスは、誰もしたことはない事業がほとんどで「こっちにいけば正解」という答えが誰にもわからない。その意思決定によってうまくいかないことが日常化し続けると「揉め事」に発展する。

 

さらに先行きが不透明な状態が半年から1年ほど続くと、本当の意味で志に共感していなかったメンバーは離れていく。「ビジョンでは飯は食えない」が徐々に顕在化していく。いくら強いビジョン、戦略があっても、お金がなくなれば人はついてこなくなるのが現実である。

 

最初に考えたプロダクトはうまくいかない

最初に考えたプロダクトが初期から順風満帆に売れ続けてうまくいったケースはほとんどない。うまくいかない原因は「スタートアップが陥りがちな罠」に行き着く。

起業家が大きなリスクを負ってまで起業する理由には「こういうサービスを世に出したい」といった強い想いがあるケースが多い。しかし、プロダクトやサービスへの想いが強いほど、気づかない間にユーザー視点が抜け落ちていく。その結果、ユーザー視点から生まれたマーケットインではなく、つくり手視点から生まれたプロダクトアウトになりがちである。

 

ユーザーから支持されるプロダクトを生み出すには、独りよがりにつくり込むのではなく、ユーザーにテスト段階のプロダクトを使ってもらい、反応を見ることを繰り返す必要がある。何が受けて何が足りなかったのかを分析し、新たなプロダクトに反映させて、またユーザーに試して頂く。そのサイクルを超高速で、根気よく回し続けるのである。

スタートアップに欠かせない考え方が、たった1人でも「熱狂的なコアユーザーを見つけ出すこと」である。良くも悪くもリアリティのある意見をくれる「熱狂者」が数人見つかるだけで、有意義な改善ができ、本当に刺さるサービスに進化させやすくなる。