自走する組織とは
経営に集中するために必要なのは、指示待ち社員ではなく主体的に考え行動できる社員を育て、経営者がいなくてもチームが自走するようになることである。
自走型の組織を支えるのは、自立して仕事に取り組める社員である。自立型・自律型の社員は、経営者から求められていることを理解し、自分の中に落とし込んで仕事に取り組むことができる。仮に自分のスキルが不足しているとわかった時は、自ら率先してスキルアップに取り組む。
主体性のない社員たちを自ら主体的に動くようにするには、社員たちに「使命」を感じてもらう必要がある。仕事なら「自分は何のためにこの仕事をするのか」というのが使命になる。自走型の組織づくりには、必ずチームや個人1人1人が使命に基づいて行動することが求められる。なぜなら、そうすることで、モチベーションが高まり、自分の内側から「やりたい」という自発的な意欲を引き出すことができるからである。
「やらなければならない」という強制力で人を動かすのではなく、自ら「やりたい」「やろう」と感じるような動機があれば、人は自然と動き出すようになる。
ミッションと心理的安全性が必要
管理型組織から自走型組織に転換するには、これまで行ってきた組織マネジメントの方法を変えていかなければならない。放任主義にすれば勝手に自走するわけではないため、社員が自走するような仕組みと環境を整えていく必要がある。
人が主体的に動く状態とは、自らやる気になって「自発的」に取り組み、それが継続されている状態である。そのため、やる気になるような動機とそれを維持できる仕組みもしくは環境が必要になる。
人がやる気になる動機をつくるには、まずミッションの存在が必要である。ミッションはその人にとって自発的に取り組みたくなるような内容で、かつそれに取り組むことが「楽しい」と感じるものでなくてはならない。人は「楽しい」と感じるようになると、自ら様々な創意工夫を行うようになる。そうすると、それまで提供できてこなかった新たな価値を提供できるようになり、顧客や周囲から感謝されるようになる。この感謝は、直接的な成功に繋がったり、報酬に繋がったりする。人に主体的に行動させるには、こうしたポジティブな循環が欠かせない。
いくら「やりたい」という気持ちが高まっても、行動を発揮できる環境がなければその気持ちのやり場がなくなってしまう。そのため「やりたい」という気持ちを引き出した後は、その気持ちに従って行動できる環境を用意しなければならない。行動できる環境とは、心理的安全が確保された環境のこと。職場の環境や人間関係が、その人にとって自分らしくいられるような安心できる環境であるかが重要になる。
これから自走組織をつくるには、社員たちにまず心理的安全性が高いことを感じてもらい、その変化を肌で感じてもらえるようにする必要がある。そのために必要なのは「承認」である。相手が自分のことを「認められている」と感じるには、相手の言葉に耳を傾けること。自分の意見を取り扱ってもらえる組織だと認識できるようにしていくことである。
心理的安全性が高いと社員全員が認識できている組織の場合、社員たちは自分のミスや失敗を過度に恐れることなく挑戦できるようになっていく。
自走型組織をつくるプロセス
①経営者が改革を決意する
物事を成功させるにはまず決意が必要である。
②経営者が会社の理念を考える
自分が会社をどうしていきたいのか、社員のみんなとどんなことを実現していきたいのか。会社の方向性について考え、理念としてまとめる。
③信頼できるリーダーに共有する
社員の中でも、最も信頼を寄せている相手をリーダーとして選び、共有する。
④チームを立ち上げる
いきなり大勢に伝えてもうまくいかないため、まずはリーダー自身が信頼できる人に伝える。1人から2人、2人から3人と、少しずつ伝える相手を増やしていく。数人に伝え、組織を変えていくことの同意が得られそうだという感触をつかんだら、チームを立ち上げる。
⑤チームに理念を伝える
リーダーからチームのメンバーに理念を伝える。プロジェクトチームを作る際には、強制的な指名を行わず、挙手性にすることに注意する。
⑥チームの価値観を決める
メンバーそれぞれの価値観を共有し、チームとしての価値観を決めていく。
⑦ミッションを決める
チームのミッションを決める時は、社会にとっての会社の存在意義や、企業活動を通して何をするのか、あるいはなぜするのか等を考えていく。
⑧ビジョン等を決める
ビジョンとは組織の将来像のことであり、実現したい未来のこと。自走型組織をつくるためには、ビジョンはチーム全員で考えていく必要がある。ポイントは全員参加で考えることである。
⑨行動指針を決める
「自分達はどのように行動したらいいのか」と、組織のあり方について、課題や改善案などをすべて自分達で話し合い、決めていく。