非認知能力とは
これまでの人生において、一度でもスポーツに熱中した経験のあるすべての社会人は「非認知能力」を持っている。非認知能力とは「意欲」「協調性」「粘り強さ」「忍耐力」「計画性」「自制心」「創造性」「コミュニケーション能力」といった測定できない個人の特性ともいえる能力のことである。
非認知能力は学力のように、独りで勉強して身につけられるものとは異なり、学校では部活動や課外活動など集団行動の中での困難や失敗、挫折などの経験を通して養われるものが多いとされる。
なぜスポーツをすると非認知能力が高まるのか。それは中学・高校という若い頃、人によっては幼い頃から、親でもない人の指導を受けたり、仲間と共に1つの目標に向かって努力を重ねたりしていくからである。他者と交わって喜怒哀楽、様々な感情を積み重ねる過程が、非認知能力を高める要因なのである。
非認知能力は長い時間の中で得た経験やトレーニングから身につけるもので、大人になっても色褪せることのない能力である。この誰もが持っている非認知能力を自分自身が自覚できているかどうかが大事である。自覚できていると、仕事などでつらいことや苦悩に見舞われた時、課題を解決するためのヒントや解決法の引き出しを過去の経験から引っ張り出すことができる。
非認知能力を発揮するために必要なもの
非認知能力が備わっていると理解したら、その能力を活かし、発揮する時に重要になってくるのが「素直さ」という資質である。多くのアスリートは厳しい練習やトレーニング、命をかけた勝負を受け入れ、乗り越えてきたから、本来、どんな物事も受け入れる懐の深さや素直さを持っている。但し、それを自覚し発揮できるかが問題である。
どれだけ元プロ選手として名前が知られていようと、新たな道では、素直に教えを請わなければうまくいくはずがない。次の成長を実現している元スポーツ選手は皆、わからないことがあれば「教えてください」と頭を下げる素直さを持っている。
非認知能力の鍛え方
非認知能力は社会人になってからも十分に鍛えることができる。
①共感する力
他の人の喜怒哀楽をその人とともに感じ、次の行動に移していく力。共感力は、次の8つの要素が自分に備わっている時に発揮できる。
- 心理的安全性:自分が心理的に「安全である」という気持ち・状態になっていること
- 言霊:発する言葉に、言葉以上の何かを醸し出せていること
- 愛厳:その人のためになると考えて最善を尽くすこと、自分に厳しく振る舞うこと
- 素直:相手の言動に対して、先入観を持たずに一旦受け入れられる能力のこと
- 自分軸:自分の軸をしっかりと持っていること
- 覚悟:どんなことに対しても腹が据わっていること
- 達成力:何事も達成するまでやり続ける能力のこと
- 実行力:アイデアなどを考えるだけでなく、実際に行動に移すことができる能力のこと
②コミュニケーション能力
コミュニケーション能力を高めるには、ビジネスマンとしての場数を多く踏むことが大事だと言われるが、それだけでは足りない。その場において、臨機応変に、どのようなコミュニケーションがとれるかが鍵を握る。
コミュニケーション能力は次の4つの能力から構成されている。それぞれの能力の育み方は次の通り。
- 他者を巻き込む力
未来の話をたくさんすること。過去の話ばかりする人より、未来の話をする人の周りに人は集まる。 - 伝える力
「空(事実)・雨(解釈)・傘(行動)」を意識して相手に伝える。 - 受け取る力
相手の話には常に相槌を打ってから自分が話し始めるなど、基本的なことを踏まえておく。 - 非言語コミュニケーション能力
服装や表情、声のトーンやボディランゲージなど「視覚情報」と「聴覚情報」は話の内容以上に大切であることを理解する。
③粘り強さ、忍耐力
特に基礎練習などの同じ動作を何度も繰り返すような練習は、我慢強く同じことをやり続けるという意味で、忍耐力を育むトレーニングになる。そこで、習慣化するということをトレーニングによって実現できれば、我慢強さというものも育むことができる。どんなトレーニングでも構わないので、小さいことから習慣として始めてみる。継続できてくると、自分への自信にもつながり、もう少し難しいことを習慣化してみようと思えるようになる。
④計画性、自制心
計画を立てる上で大事なのは「やらなくてはいけないことを決める」こと。これが自制心につながる。自分がやると決めたこと、やらないと決めたことを着実に守ることが計画性の向上の第一歩になる。
⑤思慮深さ、洞察力
まず、人に対して興味を持つことから始める。また、本を読み、擬似体験を通して多様な価値観があることを知り、価値観を広げていくことで、思慮深さや洞察力が育まれていく。