真のリーダーシップに必要な原則
①前向きであること
優れたリーダーに共通する大切な特徴の1つは、前向きであること、つまり熱意を持って高い目標に取り組むことができるということだ。難しい選択を迫られた時や、理想的な結果が出ない時でも、前向きなリーダーはただ悲観ばかりに囚われることはない。悲観的なリーダは人々をやる気にさせることも、チームを活気づけることもできない。
苦しい時はとりわけリーダーの前向きな姿勢は欠かせない。悲観論は過度の不安を引き起こし、それが守りの姿勢につながり、ひいてはリスク回避につながる。前向きさと明るさは、組織の働きを変える。苦境にある時は特に、部下がリーダーを信頼し、自己防衛と生き残りのために動くのではなく、本当に大切なことに集中しなければならない。
②勇気を持つこと
勇気がなければリスクは取れない。変化と競争の激しい業界では、リスクていくは必須であり、イノベーションは欠かせない。そして、真のイノベーションは、人々が勇気を持った時にはじめて生み出される。買収にも、投資にも、資本配分にも勇気が必要だし、クリエイティブな判断では特にそうだ。失敗を恐れると、創造性は破壊される。
人は時として大きな賭けをはなから諦めてしまうことがある。勝率を計算し、最初の一歩を踏み出す前に、うまくいきっこないと自分に言い聞かせるからだ。しかし、到底できっこないと思えることが、意外に現実になる。
③集中すること
最も重要で価値の高い戦略や問題やプロジェクトに、時間と労力とリソースを注ぎ込むことは極めて大切だ。またその優先順位をはっきりと頻繁に周囲に伝えることが欠かせない。
④決断すること
どれほど難しい決断であっても、必要以上に遅らせてはいけない。リーダーは多様な意見を尊重しながらも、タイムリーに決断を下し実行する必要がある。リーダーが優柔不断だと、仕事が進まず何も生み出せなくなってしまうばかりか、チームのやる気が失われてしまう。
⑤好奇心を持つこと
心の奥深くに強い好奇心があると、それが新しい人や場所や考え方との出会いにつながり、市場とその変化に対する気づきと理解をもたらしてくれる。イノベーションのきっかけは好奇心だ。
⑥公平であること
強いリーダーは誰とでも公平に丁寧に接する。他者に共感できなければリーダーは務まらない。また、リーダーは近寄りやすい存在であることも大切だ。努力の甲斐なく失敗してしまった部下には挽回のチャンスを与えるべきだ。リーダーが厳しすぎるとチームに恐れと不安が充満し、風通しが悪くなってイノベーションが止まってしまう。恐れの文化は組織をダメにする。
⑦思慮深いこと
優れたリーダーの特徴の中で、あまり評価されないのが思慮深さだ。思慮深さとは、知識を身につけるプロセスである。リーダーはただ現場に出向いて自分の勘を信じればいいわけではない。大切なのは認識力と判断力だ。すべての情報を吸収し、それぞれの要素を秤にかけてみることが必要だ。
思慮深いリーダーの意見や判断は信頼できるし、正しいことが多い。つまり、思慮深さとは時間をかけ、情報を集めた上で意見を形成したり判断を下すことに他ならない。
⑧自然体であること
ありのままでいること。正直でいること。自分以外の誰かのふりをしてはいけない。敬意と信頼は、嘘のないリーダーによって育まれる。
何を成し遂げても、その昔、物事が単純だった頃と同じ子供の自分がまだそこにいる。ある意味で、リーダーシップの基本もそこにある。世界中から、権力者だ重要人物だと祭り上げられたとしても、本当の自分を見失わないことが、リーダーの本質だ。自分を過信し始めた瞬間に、肩書きに頼り始めた瞬間に、人は自分を見失ってしまう。人生のどの段階にいても、自分という人間は昔も今も変わらないことを心に留めておくこと。
⑨常に最高を追求すること
卓越した仕事をすることと、人を気遣うことは両立しないわけではない。最高を追求するということは、どんな犠牲を払ってでも完璧を求めるのとは違う。凡庸なものを受け入れず「ほどほど」で妥協しないということだ。改善の余地があると思ったら、もっといいものにするために力を注ごう。ものを作る仕事であれば、最高の作品を目指そう。「偉大さ」とは、ほんの少しの積み重ねから生み出される。
⑩誠実であること
組織の中で、人やプロダクトに対して公平であり誠実であることは、何よりも大切だ。大きなことにも小さなことにも倫理的に高い基準を設けられるかどうかが、組織の成功を左右する。言い換えると、小さなことをないがしろにすると、すべてがダメになる。
ほんの少し敬意を払うだけで、信じられないようないいことが起きる。逆に、敬意を欠くと大きな損をする。敬意と共感を持って人に働きかけ、人を巻き込めば、不可能に思えることも現実になる。