仕事の未来×組織の未来 新しいワークOSが個人の能力を100%引き出す

発刊
2023年3月29日
ページ数
336ページ
読了目安
452分
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AIや柔軟な雇用形態という選択肢が増える時代における新たな人事システム
フルタイム雇用を前提とし、仕事を職務記述書にまとめてマネジメントを行う従来の人事システムは、技術革新や雇用の変化が進む現在において、課題を抱えている。

AIを利用した自動化やギグワーカーなど、様々な雇用形態を考慮した柔軟な人事システムの構築が、これからの企業には必要であるとし、仕事を分解し、再構築する新たなワークOSという考え方を紹介しています。

仕事や役割を固定する伝統的なシステムの限界

仕事は職務記述書に箇条書きの形でまとめられるのが普通だ。「ジョブ」(職務)は、コンピテンシー、パフォーマンス指標、報酬に関する取り決めの基礎となる。しかし、その状態では、従業員に生産性を発揮させることも、必要な調整を行うことも、エンゲージメントを引き出すこともできない。

それを実現するために、今日の組織には「脱構築」と「再構築」の能力が求められている。脱構築とは、仕事の内容を見直して、タスク(業務)やプロジェクトといった構成要素に分解することであり、その仕事をしている人を能力やスキルの観点から捉え直すことである。再構築とは、そうして分解した仕事と人を、組織の構造や所属にとらわれず、新しく最適な形に組み合わせることである。

 

仕事と個人を分解して再構築した働き方のシステムを「新しいワーク・オペレーティングシステム」(ワークOS)と呼ぶ。ワークOSは、企業の中での個人の働き方を決め、企業と外部のつながり方を決めるものである。

伝統的なワークOSでは、仕事は職務として記述され、それを行うのは雇用契約を結んだ従業員に限定されていた。そこでは仕事は、担当する職務、職位、職務要件によって語られる。しかし、ギグワーカー、AI、ロボティクスなど、仕事の進め方の選択肢が増える中で、このように仕事や役割を固定する古い考え方では、多様な働き方も、人間と自動化の最適な組み合わせも見えなくなってしまう。

 

仕事を進める上で、すべての関係者の間のやり取りを、シームレス、効率的、公平、そして透明にするための社会政策を定着させる鍵は、仕事の脱構築にある。仕事の基本単位を職務として、職務を担うのは雇用関係のある労働者だけという考えから離れることができれば、伝統的なOSでは得られなかった洞察と選択肢を得ることができる。

 

新しいワークOSの4原則

新しいワークOSには、以下の4つの原則がある。

 

①現在の職務を前提とせず、仕事を分解して、達成すべきタスクを見る

次のような問いから始まる。

  • 現在および将来の仕事が果たすべきタスクは何か
  • それを遂行するために必要な能力は何か
  • その能力を現在持っている就労者、あるいは将来その能力を獲得する可能性のある就労者は誰か
  • その能力を発揮させるための最適な就労形態は何か

 

②人間と機械を融合させる

タスクと目的の特性いかんで、自動化は人間の仕事を代替、補強、あるいは一新することができる。それは、次のような問いかを発する。

  • 自動化したい基本的タスクは何か
  • 各タスクの特性は何か
  • 各タスクは何を解決しようとしているのか
  • 自動化で人間の仕事を代替したいのか、補強したいのか、新しい仕事を生み出したいのか
  • どんな自動化が可能か
  • 職務とプロセスの全体で、人間の仕事と自動化された仕事の最適な組み合わせは何か

 

③あらゆる就労形態を考慮に入れる

仕事の3つの基本的側面について問うことで、どういう就労形態がベストかがわかり、具体的なイメージを思い浮かべることができる。

  1. 任務(行われるべき仕事)
    ・どこまで細かく分解できるか
    ・どこまで範囲を広げられるか
    ・どこまで雇用と切り離せるか
  2. 組織(仕事を行うための境界で区切られた場)
    ・どの程度まで組織の境界を越えて容易に出入りできるか
    ・どの程度まで外部とつながるべきか
    ・どの程度までコラボレーションを行うべきか
    ・どの程度まで境界を広げて他者を巻き込むべきか
  3. 報酬(成し遂げた仕事と交換に提供される対価)
    ・仕事の完了後、どれぐらいの期間の内に報酬を支払うのか
    ・どこまで具体的な方法で報酬を個別化するか
    ・従来の給与や福利厚生を超えて、どこまでクリエイティブな報酬をイメージできるか

 

④人を職務に縛りつけず、自由な人材移動を可能にする

労働者が仕事の機会を自由に選べて、必要とされる場所に移動できるようにしなくてはならない。ガチガチに固められた職務記述書の範囲を超えて、1人1人が能力を存分に発揮できることが必要だ。そのためには、次のようなタイプの人材を組み合わせて、仕事を改革し続ける必要がある。

  1. 固定型人材(フルタイムで雇用されて固定的な役割を担う人材)
  2. フロー型人材(タスクや任務、プロジェクトごとに離合集散を繰り返す人材)
  3. ハイブリッド型人材(複合的な役割をある程度固定的に担う人材)

 

新しいワークOSの7つのポイント

・仕事:要素(タスク)に細かく分解された仕事

・自動化:人間と機械の連携をタスクレベルで最適化する

・ワーク・エコシステム:組織の境界をまたぐ民主化されたエコシステム

・労働者:分解されることによって可視化された様々な能力(スキル)を持つトータルな存在

・就労形態:新たに生まれるタスクやプロジェクトに適した伝統的なフルタイムに縛られない柔軟な就労形態

・マネジメント:チームやプロジェクト、組織のパーパスや目標、人間・AIプラットフォームやHRシステムを動かすハブとしての管理と調整

・社会的価値観と政策:柔軟な就労形態と個人の能力によって実現する労働者の持続可能性、発言力、公平性、インクルージョンを可能にし、それに支えられる