男子の女子化
ここ数年、若者たちが「ゆとり世代」や「さとり世代」と呼ばれ、その特徴として、車離れや海外離れ、お酒離れに代表される消費離れや、恋愛・結婚離れなどが挙げられている。全体的にかつての戦後の若者像とは一変して、元気がなくなってきていると言われる事が多い。
特に女子よりも「男子」の方により元気がなくなってきているように見える。しかし、女性だけを見ると、「専業主婦志向」が高まっているように、ゆとり世代の女子は保守化している。一方、若年男性の変化の方は活発になっている。その変化とは「男子の女子化」である。男子が昔より元気がなくなって見えるのは、かつての肉食的な男性性とは対極にある「女子力」を身につけるという方向への急激な変化に気付いていないからである。
女子力男子の特徴
女子力男子を定義すると「従来、女性がやっていたり、得意とされたりした領域の力が備わっている男性」という事になる。若年男性の間で急増している。女子力男子は、草食男子と異なり、恋愛やセックスに対し、必ずしも消極的とは限らない。逆に異性にモテるための武器として、女子力を身につけたタイプも多いのが特徴といえる。
女子力男子が消費の中心となる
男子の女子化は、マーケティング的観点からすると「進化」と言える。女性の場合、消費の主役が中年女性に移ってきている。一方で、若年男性は「失われた20年」に起こった雇用の不安定化や低賃金化が影響し、昔より消費が活発になったとは言えないが、消費の矛先が「自分自身」や「それまでの若年男性になかった新市場」に向かうようになっている。
女性のような「自分磨き」という「男子の新市場」に投資する男子が増えてきた。例えば,化粧品を揃えて美容に励んだり、食材やキッチングッズにこだわって料理の腕をあげたりといった具合である。「女子力男子」とも呼ぶべき男子達が、消費の中心に躍り出つつある。
女子力男子は何にお金をつかうのか
若い男性は、車、バイク、タバコ、酒、パチンコといった男性型商品から離れる一方で、女性型の商品・サービスへと移ってきている。男性型商品から離れた男子達がお金を使っている1つが男性化粧品である。美容熱に火がついた男子の向かう先は、化粧品だけにとどまらず、ネイルサロンや美容家電なども注目を集めている。
また男子の「食生活へのこだわり」も高まっており、料理教室が人気である。従来は主に女性をターゲットにしていた女性型商品・サービスの分野では、性差意識の薄い若年男性層を取り込めるかがキーになり始めている。
女子力男子はなぜ急増したのか
①経済的要因による男女の役割変化かつての男性の役割は、外で稼いでくる事だった。しかし、不況が長引き、雇用が不安定になった事で、その前提が揺らいでしまった。一家を男性が1人で支えたり、飲み会で男性が女性に奢ったりする事が当り前であった状況ではなくなっている。
そして女性の側も高学歴化、知的労働者化している。理屈の上では、男性と肩を並べて働ける女性が増えた。
②「男らしく」という社会的抑圧の減少
かつては、男子は物心ついた頃から「男らしくあれ」という無言の社会的プレッシャーにさらされてきた。過去の時代とは違い、今は「美白男子」「日傘男子」など、男子が日焼けしないようにするのも珍しくなくなった。
③ソーシャルメディアが変えた同世代間の関係
ソーシャルメディアの普及も、男子の女子化現象に影響を与えている。若者にとってのソーシャルメディアは、何かを議論する男性型のコミュニケーションの場ではなく、皆で共感しあう女性型のコミュニケーションの場である。
④「ママっこ男子」に見る母親と息子との関係
親世代がバブル世代から60年代生まれくらいの人になり、若々しい美貌と感性を持つお母さんは、友達や先輩のような存在になってきているケースが多くなっている。その結果、彼らの女子力は磨かれていく。