PMFとは
PMF(Product Market Fit:プロダクトマーケットフィット)の考え方は、世界有数の投資会社Andreessen Horowitzの創業者、マーク・アンドリーセンによって広められた。同氏はPMFを「顧客のニーズを満たす商品で、正しい市場(潜在的な顧客がたくさんいる市場)にいること」と定義し、企業の成否を左右する要素だと指摘した。
PMFがある商品は、商品が顧客に引っ張られるように売れていき、顧客が商品を使い続けてくれたり、口コミをして他の顧客を連れてきてくれたりする。一方、PMFがない商品は、広告を出稿しても申し込みがなかったり、営業パーソンが必死に売り込みをかけたりしても発注をもらうことができず、商品を使った顧客が満足しない。
なぜPMFは失敗するのか
そもそもPMFの観点から、ほとんどの新規事業は失敗する。スタートアップの起業家養成スクールY Combinatorの創業者、ポール・グレアムは、スタートアップの成功確率(最低40億円以上の企業価値をつけること)は7%であり、DropboxやAirbnbなどのように大化けする確率は0.3%ほどしかないと言う。新規事業がうまくいかない理由には、次の理由がある。
- 顧客ニーズを検証せずに商品をリリースしてしまう
- PMF達成に必要ないことに時間を使ってしまう
- 商品をリリースする前の社内の議論を重ねてしまう
- PMFしていないのに営業・マーケティング投資を始めてしまう
- 見せかけのPMFに騙されてしまう
- 安易に組織の人数を増やしてしまう
- 意思決定や打ち手の成功確率にこだわりすぎてしまう
- 虚栄の指標を追ってしまう
- 市場規模を確かめずに参入してしまう
- 競争戦略を描かずに参入してしまう
- 「やってみないとわからない」という思考停止で進めてしまう
- スモール過ぎるスモールスタート
PMFを達成する道のり
PMFを達成するまでの道のりとその後のプロセスは、以下の6つのフェーズに分けることができる。
- CPF(Customer Problem Fit):顧客に課題は存在するか
- PSF(Problem Solution Fit):課題を解決できる解決策は何か
- SPF(Solution Product Fit):解決策はプロダクトとして実装できるか
- PMF(Product Market Fit):プロダクトは市場に受け入れられたか
- GTM(Go To Market):スケール可能な状態か
- Growth:スケールしているか
これらの6つのフェーズを通過していくことで、事業は成長していく。
PMF達成の肝「バリュープロポジション」
バリュープロポジションとは、自社が提供できて、競合他社が提供できない、顧客が求める独自の価値と定義できる。バリュープロポジションが明確なほど、事業の方向性が明確になり、マーケティングメッセージがつくりやすく、営業が説明しやすく、顧客に選ばれやすくなる。バリュープロポジションは、PMFや事業の成功に欠かせない要素である。
バリュープロポジションの肝は以下の2点。
- 顧客が望んでいる価値と、自社が提供できる価値を合致させること
- 競合他社が提供できない、自社独自の価値を提供すること
バリュープロポジションという概念や考え方自体は浸透しているが、多くの新規事業では顧客が欲しがらない商品をつくってしまう。バリュープロポジションをつくる時には、陥りがちな3つの落とし穴がある。
- 自分たちの想いが先行してしまう
- 既存のアセットに引っ張られる
- 自社のケイパビリティが追いつかない
1と2を回避するには、顧客にインタビューしたり、観察したり、営業したり、顧客と一緒に働いたり、データを分析したり、アンケートをとったりなどを徹底的にやり切って見い出すほかない。また3については、顧客が望んでいる価値を「Must have」と「Nice have」とに切り分け、「Must have」な価値を中心にバリュープロポジションを組み立てる。
解像度を高めよ
新規事業の成功のポイントは「解像度」である。新規事業においては、顧客や市場、競合、組織運営についての解像度が高い人が、解像度が高い領域で立ち上げると成功確率が上がる。
解像度が低い状態で顧客や業界を捉えている起業家と、解像度が高い状態で顧客や業界を捉えている起業家では、出せる企画やアイデア、意思決定の質は変わってくる。当然、解像度が高いほど、意思決定や施策実行の精度が高く、スピードも速くなる。
解像度を高めるには、大量の打ち手が必要になる。ある取り組みをすれば解像度が上がるという特効薬は存在せず、たゆまぬ努力の継続が必要になる。解像度を高める取り組みには以下のような方法がある。
- 商品を自分で使ってみる
- 競合商品を使ってみる
- インタビューする
- 顧客を観察する
- 顧客に営業する
- インタビューや商談などの録画視聴会
- アンケートをとる
- ドメインエキスパート(その領域に多くの知見を有している人)を仲間にする
- ペルソナを作成する
- カスタマージャーニーマップを作成する