日本流DX 「人」と「ノウハウ」 究極のアナログをデジタルにするDX進化論

発刊
2022年11月3日
ページ数
258ページ
読了目安
315分
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日本企業がDXに失敗する理由
KADOKAWAグループのDXを5年間にわたって推進してきた著者が、日本企業がDXを成功させるためには何が必要かを書いた一冊。
多くの日本企業のDXが失敗する原因はコンサルタントへの丸投げであるとし、そもそも日本企業がDXを進めるためにはどうするべきなのかが紹介されています。

DXはデジタル思考

デジタルトランスフォーメーション(DX)を簡単にいうと、データやデジタル技術を用いて、ビジネスに関わるあらゆる事象に変革をもたらすことである。デジタル技術の活用を軸とし、新たな製品やサービスを生み出すことにとどまらず、業務そのものを見直して働き方改革を実現したり、バリューチェーンの再構築によってコスト削減・時間短縮を図ることもできる。

バリューチェーンの再構築は、その企業のビジネス全体を根底から大きく変革することになる。DXの本質は経営の改革であり、日々の仕事上の行動を変えることである。

 

DXを行う目的は利便性を高め仕事のスピードを上げることである。その背景には、不確実性の高い環境でビジネスを創造していくために、トライ&エラーの回数を増やし、経験値を高めて、ライバル企業に対して競争優位性を保つ必要がある。

DXを推進し支えるマネジメントの手法には、アメリカ流や日本流のようなものが存在する。スピード命のDXを進める際には、このマネジメント手法の違い、それをつくっているお国柄を意識しておいた方がいい。YESかNOか、白か黒か、0か1か、曖昧を許さない明確なやり方を「デジタル思考」と定義する。

一方、日本においてはデジタル思考と異なり、「限りなく1に近い数字」「半分くらい」という曖昧さが許される「アナログ思考」が存在する。曖昧な表現を使う、判断軸が人によって違うというようなことは、日本の組織では珍しいことではない。しかし、DX、つまりデジタル思考に基づいてデジタル技術を駆使する上では、日本的なアナログ思考は相性が悪い。

 

日本型DXのカギとなる人材とは

DXの一環として社内システムをつくるにしても、アイデアを出すのが得意な人、それを明確に定義して実装させるのが得意な人がいる。前者は「発散型思考」ができる人材。後者は要件定義を明確にしてシステム実装まで持っていける「収束型思考」が得意な人材と言える。
要件定義ができる人材は、「何が求められているか」「それを実現するために何が必要なのか」「どのように進められるか」を把握できるため、アイデアの実現には欠かせない。

 

日本流DXを進めていく上では、発散型人材と収束型人材の間に立って、橋渡しとなる人材の存在がカギとなる。DXを進めようとすると、多くの要望や意見が出てくる。それらの内容と実現可能性について見極めて、発散型人材と収束型人材をつなげる存在を「マッチャー」と呼ぶ。このマッチャーが活躍する土壌を社内やチーム内につくれるかどうかがDXの成功を左右する。

 

誰がマッチャーになれるのか。長い間発散型思考のみで仕事を続けてきた人がいきなり収束型の思考を身につけるのは難しい。むしろ、収束型人材が、ビジネス全般の流れや知識でアイデアの引き出しを増やすとともに発散型思考を身につけてマッチャーとなっていくことはある。若い頃から発散型思考と収束型思考を行ったり来たりせざるを得ない環境にいたり、努力してきた人は、元々がどちらの思考をする人であっても、強力なマッチャーになる可能性が高い。

マッチャーを見つけるには、発散型と収束型、自分がどちらの型になるのか、チームや組織内で相対的に見るとわかりやすい。

 

スピードを上げるためのDXに、収束型思考の1つであるデジタル思考とDXを支えるデジタル技術の相性は良い。一方、発散型思考の1つであるアナログ思考に対して、デジタル技術の相性は良くない。よって、その間を埋めるマッチャーが必要となる。未だにマッチャー人材が圧倒的に足りていないことが、日本のDXのボトルネックになっている。

 

日本のDXはコンサル丸投げで失敗する

DXを進める旗振り役に、ビジネスとIT双方の知識・知恵を持っていることを期待するのは難しい。そこで多くの日本企業で起こっているのが「コンサル丸投げ」である。

コンサルタントはクライアントの社内からヒアリングした内容をもとに案を出す。ところが、あくまで外部の人間であるコンサルタントは、社内の文字化できない深部にはなかなか踏み込めない。結局、文字として出てきた情報を整理しただけの無難な案になる。他のお客さんのところではこういうことをやっていますよ、という二番煎じのアイデアが出てくる。

クライアントの競争優位性が実はどこにあるのか、それをビジネスプロセスとITに落とし込むには何をすべきかに、踏み込まないままの提案・アイデアでは、当然従業員の身にも力が入らない。実行段階に入っても真面目に取り組まない。こうして、他社で取り組んだという無難なDXですら、満足に実現できずに終わってしまう。

 

日本型DXを進めていくためには、他社が模倣できない自社のアナログな強みを定義し、そこにデジタルの価値を融合させていく過程が欠かせない。コンサル丸投げの姿勢から脱却し、自社の強みをさらに磨くことができる人材の活用がカギとなる。

参考文献・紹介書籍