わたしが、認知症になったら 介護士の父が記していた20の手紙

発刊
2022年9月23日
ページ数
192ページ
読了目安
164分
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推薦者

認知症に対する心構えと事前知識
認知症の有病率は85歳以上で40%を超えるとも言われ、高齢者が増え続ける日本において、認知症に関わる家族も増え続けていく。介護士として、多くの認知症患者やその家族に向き合ってきた著者が、認知症の基本的な知識から、認知症になった場合の対応方法までをまとめた一冊。

認知症になった父親が娘に宛てた手紙として、認知症になった時に大切なことを綴っています。認知症に対する心構えが事前にできる内容になっています。

認知症とは

認知症とは「一度正常に発達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態で、それが意識障害のない時に見られる」と定義されている。

具体的な症状としては記憶障害が有名だが、「料理が作れない」「服の着方がわからない」といった遂行機能障害や、「人の顔を識別できない」とか場所や時間の感覚がわからなくなる見当識障害という症状も段階的に表れる。また、「お花やティッシュを食べる」「被害的な思い込み」などといった行動・心理症状が見られる場合もある。

 

もの忘れと認知症の違い

加齢に伴う「もの忘れ」では体験の一部を忘れるのに対し、認知症による記憶障害は、体験のすべてを忘れてしまうと言われている。例えば、加齢に伴う「もの忘れ」では、昨日の食事のメニューを思い出せなかったりするが、認知症による記憶障害は、食事をしたこと自体の記憶がポッカリと抜け落ちてしまう。

但し、加齢に伴うもの忘れは自覚があるが、認知症の人は自覚がないというのは事実ではない。

 

認知症の兆し

認知症の兆しとして有名なのは「同じものを何度も買ってくるようになる」こと。最初は本人も家族も笑って済ますが、それが何度も続く。本人も内心「やばいな」と思っているから押し入れに隠す。家族が押し入れを開けて、事態を深刻に受け止める。

 

認知症の現状

日本には2020年時点で、認知症を発症している人が約500万人いて、65歳以上では約7人に1人(約15%)の割合である。さらに2025年には、その数は730万人に増加し、65歳以上の5人に1人(20%)の割合になると推計されている。

以下の通り、認知症の有病率は、年齢が上がれば上がるほど高くなるため、日本の平均年齢が延びるほど割合が増えていく。

  • 65〜75歳未満:約3%
  • 75〜80歳未満:約10%
  • 80〜85歳未満:約22%
  • 85歳以上:50%

 

認知症の予防

認知症の予防をすべてやったら防げる、やらなかったら認知症になるということはない。適度な運動などの予防も、認知症になる確率を少し下げられる場合がある程度の認識がよい。

認知機能を維持するための有効な方法は、認知する機会を多く持ち続けることである。「外に出ること」は、認知症を予防する効果があると言われている。なぜなら、外に出ると屋内よりも認知する機会が増えるからである。

また、認知症自体の予防だけでなく、「認知症になった時に辛い思いをすること」を予防する視点も必要である。例えば、「認知症になって自分の希望を伝えられなくなった時に備えて、自分の希望を書いておく」などである。

 

何よりもまず伝えたいこと

・お前は何も悪くない

父さんが認知症になったら、何よりもまず伝えたいことは「お前は何も悪くない」ということ。確かに世の中には、脳トレや運動をしていれば認知症を防げるとか、孤独が認知症を助長するとか、早期発見・早期対応で認知症は治るとかいう情報が出回っている。しかし、それらは絶対ではない。

早期発見・早期対応は、時に「早期レッテル・早期絶望」になることがある。発見が遅れたことで、父さんは「認知症の人」ではなく、それまで通りの父さんとして過ごせる期間が延びたとも言える。だから、決して自分を責めるな。

 

・先にはっきりさせておく

お前は怒っていい。認知症になった父さんにウンザリしていい。否定せずに受け止めるのは無理だ。もっと人に頼っていい。介護サービスを使えるだけ使えばいい。チャンスがあれば施設に入れても構わない。

目の前の父さんはお前を責めているかもしれない。毎日のように困らせていると思う。だからこそ、認知症になった父さんが、お前を守ってあげられない分まで、お前にはお前自身を大切にして欲しい。

 

・お前の名を忘れても

父さんが認知症になったら、お前はとても悲しむと思う。お前の名を忘れ、別の人の名を呼ぶこともあるかもしれない。それは見当識障害というもののせいだが、決してお前を本当に忘れたわけではない。例えば、街で流れる曲を聴いて、タイトルも歌手も思い出せないけど、なんだかすごく懐かしい気持ちになることがあるだろう。

お前の名を忘れても、顔を認識できなくても、お前の顔を見て、声を聴いて、心の奥底で何か懐かしい、幸せを感じている。