CHANGE 組織はなぜ変われないのか

発刊
2022年9月21日
ページ数
282ページ
読了目安
360分
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推薦者

変化に適応するために組織や人には何が必要なのか
組織論・リーダーシップ論で著名な著者が、そもそも組織がなぜ変化に適応することが苦手なのかについて解説し、その対処法を紹介しています。
人間本来の性質と現代のピラミッド型組織は、安定性と効率性を重視するため、変化の激しい時代には不向きであり、これをいかに乗り越えれば良いのかという視点が書かれています。
特に大企業などの組織が大きく、成熟した組織を持つような場合に、どのように変革していけば良いのか参考になります。

変化の流れに乗ることが、リスク軽減の方法になる時代

人類の進化の過程で何千年も昔に確立された人間の性質と、19世紀後半から20世紀前半に形づくられた現代型組織の基本設計は共に、迅速に容易に賢明に変化を遂げることに適していない。人と組織は主として、生き延びるために効率性と安定性を確保することを得意としている。人や組織は成熟するにつれて、安定と目先の安全を重んじるメカニズムが強化されていく。そのため、新たな脅威を察知しても、試練を乗り越えるために十分な規模の変化を十分なスピードで実行できない場合が多い。

 

昔は変化にまつわるリスクを軽減するということは、慎重に判断を下すことを意味した。しかし、状況は変わり始めている。最近は、変化の流れに乗り、チャンスを生かすことこそ、リスク軽減の方法になりつつある。今日の世界では、変化に素早く適応しないことほど大きなリスク要因はない。変化を積極的に追求する姿勢こそが大切である。

 

人間の性質は元々変化に適応しにくい

人間の性質に組み込まれている生存本能は非常に強い。生き延びようとする本能が働く結果、新しいチャンスを素早く察知し、イノベーションを推進し、変化に適応し、適切なリーダーシップを振るい、好ましい変革を成し遂げる能力が意図せずして押さえ込まれてしまう場合がしばしばある。

 

人間には「生存チャネル」と呼ぶべきメカニズムが備わっている。これは絶えず脅威に目を光らせるレーダーシステムのようなものだ。私たちの脳が脅威を察知すると、脅威と思われるものに神経を研ぎ澄ませ、素早く取り除こうとする。
しかし、現代社会では、脅威が極めて手強かったり、脅威を素早く回避もしくは除去する現実的な手立てがなかったりする。この場合、生存チャネルが活性化して緊張が高まった状態が長引きかねない。すると、人は疲弊し、動転して、問題にうまく対処できなくなる。この状態になると、チャンスに気づいたり、冷静に、そして創造的に物事を考えたりする能力が低下する場合が多い。

 

人間は生存チャネルの他にもう1つ「繁栄チャネル」というメカニズムを持っている。これは生存チャネルと異なり、脅威ではなく機会に目を光らせる。このレーダーが新しいチャンスを察知すると、不安や怒りよりも情熱や興奮が高まる。そして、視野が狭まるのではなく、逆にチャンスへの好奇心により、視野が広がることが多い。
自らの当面の生き残りに関して不安を感じず、ポジティブな感情が高まると、人はコラボレーションに前向きになり、創造性とイノベーションが活発になる。

 

今日の組織が十分なスピードで賢明な変化を実現するためには、多くのメンバーの生存チャネルが過熱することを防ぎ、逆に繁栄チャネルを活性化させる必要がある。
しかし、これは簡単ではない。現在は昔に比べてデータの入手と活用が容易になったことで、生存チャネルが簡単に過熱しかねない。1つ1つのデータが何らかの問題を示唆している可能性があるからだ。生存チャネルが過熱すると、繁栄チャネルはあっさり抑え込まれてしまう。

 

優れたリーダーは、自分と他の人たちの繁栄チャネルを活性化させる

傑出したリーダーは、自らの生存チャネルを活性化させ続けるが、そのモードに支配されることなく、自分と他の人たちの繁栄チャネルを活性化させることに長けている場合が多い。チャンスに対する切迫感を作り出し、それを広く共有する。多くの人とコミュニケーションを取り、チャンスを生かすための行動を取るべきだという考え方への支持を取り付けることができる。戦略と情熱を通じて、人々の理性と感情に働きかける。そして、常に前向きなエネルギーを発し、チャンスについて語ることにより、変化を妨げる組織的・人間的障壁を乗り越え、人々に行動させる。

 

また、早い段階で頻繁に何らかの勝利を手にできるようにし、その成果を宣伝し、祝福するように心がける。それにより、人々に新たな興奮を与え続ける。

 

ひたすらチャンスに目を向けよ

変化のスピードと複雑性が高まっている時代には、あらゆる立場の人たちからリーダーシップを引き出せる文化を築くことが重要だ。そのためには、社内のあらゆる場所にいる人たちがリーダーシップを発揮することを許容し、そうした行動を促す環境を作ることだ。

さらに、生存チャネルと繁栄チャネルの両方を適度に活性化させることも必要不可欠だ。繁栄チャネルは、新しい機会に目を向け、ポジティブな感情を引き出し、思考の幅を広げ、チャンスを生かすための行動を突き動かす傾向があるため、リーダーシップと密接に結びついている。

 

ある人がリーダーシップを発揮し、さらには他の人たちにもリーダーシップを発揮させるためには、自分自身の生存チャネルを適度に活性化させ、繁栄チャネルも適度に活性化させなくてはならない。繁栄チャネルが十分に活性化していない場合は、チャンスに意識を向けることにより活性化させられる可能性がある。
組織のレベルで繁栄チャネルを強力に活性化させるためには、問題点だけでなく、チャンスについての思考と対話と議論を社内で増やすことから始めるべきだ。

参考文献・紹介書籍