犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉

発刊
2022年8月6日
ページ数
224ページ
読了目安
214分
推薦ポイント 4P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

親のよかれは子どもにとっていいとは限らない
犯罪者や非行少年たちの心理分析を行なってきた犯罪心理学者が、子どもが非行に走った家庭の原因を事例に、子育ての落とし穴を紹介しています。よかれと思って親が行ったことやコミュニケーションが、子どもを逆に追い詰めたり、反発させる心理を解説しています。
「勉強しなさい」「早くしなさい」など、親が言いがちな言葉を適切に使うためのポイントが書かれています。

「よかれと思って」は親の自己満足

親は子どものためを思って、「ああしなさい」「これはしてはダメ」と様々な声かけをする。人間は1人では生きていけないから、社会性を身につける必要があり、社会の最低限のルールを教えるのは親の務めである。

しかし、「ああしなさい」「これをしてはダメ」といった言葉の数々が子どもをがんじがらめにして、非行へ向かわせていることがある。親が良いと信じていることでも、子ども自身にとってはいい迷惑という場合は多い。そして、最初は小さなボタンのかけ違いだったものが、次第に取り返しのつかない事態になっていく。

 

「よかれと思って」「子どものために」という言葉が出た時、「それは本当だろうか」と自ら顧みる姿勢が必要である。大事なのは子どもにとっての「主観的現実」である。子ども本人がどう捉えたかが問題である。はたから見ると些細な出来事であっても、本人にとっては大きなショックだったということはある。

 

「みんなと仲良く」が個性を破壊する

「みんなと仲良く」は「きれいごと」である。色々な価値観や立場の人がいるから、自分と合わない人がいて当然である。合わない人に合わせる必要はないし、仲良くする必要もない。「みんなと仲良く」のようなきれいごとを押し付けると、実際にはできないので、子どもはギャップに苦しむ。「みんなと仲良くできない自分はダメだ」と思ってしまう。

協調性は大事だが、自己主張することを許されずに、周囲の反応を伺いながら生活している子は、自己決定する力が弱くなる。

 

「早くしなさい」が先を読む力を破壊する

子どもに対し「早くしなさい」といった言葉で急がせる人は多い。しかし、小さい子どもは皆、先を読む力が育っていないから、なぜ急がなければならないのかわからない。この事前予見能力は発達の中で身につけていくものである。
親は「急がないと学校に遅刻してしまう」と必要性を理解していても、子どもには難しい。だから「学校まで歩いて15分かかるから、8時に家を出ないと間に合わないよね。8時に家を出るためには、どうしたらいいかな」というように、早くするべき理由を伝えて考えさせなければならない。

 

「すぐやれ」「早くしろ」ばかりでは、自分で急げるようにならない。「早くしなさい」と言われればその場で何とかしようとする。しかし、自分で判断することはできないままである。事前予見能力を育てるためには、日常の中で「逆算して考える」ことをさせる必要がある。

 

「頑張りなさい」が意欲を破壊する

「頑張って」という言葉自体はポジティブなものであっても、被害感や疎外感が強い子は否定的に受け止める。ひねくれてしまって社会を斜に構えて見ている状態では、励ましや応援の言葉も「バカにしやがって」というようなものである。

どんな言葉を使うかも大切だが、子どもがどう受け止めているかに配慮することも大切である。「やる気を出せ」も同じである。やる気は自分の内側から出てくるもので、他者が植え付けることはできない。ただ、意欲を促すことはできる。頑張ってみようと思って、実際に行動したことを褒める。たとえ結果が良くなかったとしても、プロセスを褒めることで意欲は高まる。

 

そもそも、漠然と頑張ることを要求されても、子どもはどうしていいかわからない。「頑張って」と言うなら、具体的に何をどうすればいいのか示してあげることも必要である。「それならできそう」と思えれば、一歩踏み出すことができる。子どもが諦めてしまっているようなら、「頑張れない原因」を一緒に見つけるのがいい。

 

「何度言ったらわかるの」が自己肯定感を破壊する

「何度言わせるの!」「いい加減にしなさい!」と言って、親が感情を爆発させると「何度言ってもできないおまえはダメだ」というメッセージが伝わる。問題は解決できないどころか、子どもの自己肯定感を下げることになる。

「何度も伝えている」と思っていることも、子どもには伝わっていないこともあり得る。また、親自身の思い込みで勝手に怒っていることもある。「何度言ったらわかるの!」は、親が子どもに対して「こうあるべき」と思っていることを裏切られたという怒りの表出である。
しかし本当にそうあるべきなのか、点検してみる必要がある。親自身が安心したいとか周囲に認められたいという親側の都合で言っていることも多い。

 

「勉強しなさい」が信頼関係を破壊する

人は行動を強制されると、それに反発したくなる。意識的にも無意識的にも自由を求めており、自由が侵されたと感じるからである。こうした効果が起きやすいのは、「説得者と同じ意見である時」「説得者を信用していない時」の2つがある。

親は「勉強しなさい」とただ伝えるのではなく、勉強の面白さを伝えることが大事である。やみくもに「勉強しなさい」と言っても、子どもはますます嫌になるだけである。つまずいている部分があるなら、課題を細分化して、小さな目標を達成することを積み重ねるようにするといい。