第五の権力 Googleには見えている未来

発刊
2014年2月21日
ページ数
424ページ
読了目安
648分
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Google会長が見ている未来
Googleの会長が、インターネットが国家、革命、戦争などにもたらす影響と未来について語った1冊。
世界中の80億人のほとんどがつながる事で、これまでにない変化を経験すると説く。

2つの世界で同時に暮らす時代

これまでリアルな情報を手に入れる手段をほとんど持たなかった世界中の大多数の人が、たった一世代の内に、手のひらに収まる端末を使って、世界中の全情報にアクセスできるようになる。技術イノベーションが今のペースで続けば、2025年には、80億人に達すると推定される世界人口のほとんどが、オンラインでつながるだろう。

社会のどんな階層の人達も「コネクティビティ」(ネットワークへの接続性)をますます手軽に使いこなすようになり、より効率的、生産的、創造的な方法で仕事をするだろう。コネクティビティがかつてないほどの規模で広がる内に、旧来の組織や制度の多くも、それに応じて変わらざるを得なくなる。さもなければ時代に取り残され、現代社会で意義を失うだろう。

地球上の大多数の人は「2つの世界」で同時に暮らし、働き、統治を受けるようになる。仮想世界では、多様な手段や機器を通して、まもなく誰もが何らかの形でつながるだろう。それでも現実世界では、まだ地理的制約や、生まれ合わせ、不運、そして人間の善良さと邪悪さに翻弄される。2つの世界は時に互いに抑制し合う事も、衝突する事もあるだろう。

 

新しい力

インターネットは、人間がその手でつくっておきながら、まだ十分に理解する事ができていない数少ないものの1つである。インターネットの世界はつかみどころがなく、絶えず変異を繰り返し、ますます巨大で複雑になっている。そして、とてつもない善を生み出すと共に、おぞましい悪もはらんでいる。

インターネットは、無政府状態で何が起こるかを知るための、史上最大の実験場である。現実世界の法律に縛られないオンラインの世界で、今も何十億人という人が、毎分毎分膨大なデジタルコンテンツを生み出し、消費している。インターネットを通して、人々は自由に表現を行い、自由に情報をやりとりする「新しい力」を手に入れ、その力を使って今日の多面的なオンラインの世界を生み出した。

インターネット空間が拡大すると共に、私たちの常識も覆されていく。日常のささいな事に始まり、人格や人間関係、身の安全といった本質的な問題に至まで、私たちは今までと全く違う考え方を持つようになるだろう。インターネットが広く普及した事で、社会、文化、政治にかつてないほど刺激的な変化が生じている。技術革命はこれまで何度も起こっているが、誰もがリアルタイムの情報を、誰かに頼らずに、じかに所有、開発、発信できるようになったのは、有史以来初めてである。しかも、この変化はまだようやく始まったばかりだ。

 

第五の権力

歴史を振り返ると、これまで新しい情報技術が開発されるたび、国王であれ、教会やエリート層であれ、従来の権力者が力を奪われ、人々が力を手に入れた。そして情報や新しい通信方法を利用できるようになった人々は、それまでにない方法で社会と関わり、責任を追及し、より主体的に生きる機会を得たのである。

現在、見られるコネクティビティの広がり、中でもインターネット対応携帯電話を通じた広がりは、このようなパワーシフトの最も典型的な例であり、最も奥深い例である。人々がデジタル技術を通じて、第五の権力を得る。情報化による権力拡大によって、世界中の多くの人達が、生まれて初めて権力というものを手にするのだ。

 

技術は世界、国家、企業、あらゆる問題に結びつく

これから私達は、過去のどの世代よりも多くの変化を、より速いペースで経験する事になる。私達の手の中にある端末を大きな原動力とするこの変化は、想像もできないほどパーソナルで、それでいてあらゆる人を巻き込む変化になるだろう。

人類が文明の夜明けから2003年までに作り上げたデジタルコンテンツと同じだけの情報量を、私達は2日ごとに生み出している。これは約5エクサバイト分もの情報だが、それでもやがてインターネットに接続される70億人の内の、たった20億人が生み出す量でしかない。

コネクティビティが広がり、さらに数十億人が仮想世界に足を踏み入れる内に、技術は世界のあらゆる「難題」と密接に結びつくようになる。国家、市民、企業はどんな問題を解決するにも、技術を頼りにするだろう。コネクティビティの広がりを抑えたり、インターネットへのアクセスを阻害しようとする企ては、十分長い目で見れば必ず失敗する。

 

未来の世界について知っていること

①技術はそれ自体では、諸悪を解決する万能薬にならないが、賢明に利用すれば大きな違いを生む。今後、コンピュータと人間は、それぞれが得意な事を活かす方向で、一層の役割分担を進める。

②仮想世界は既存の世界秩序を覆したり、組み替えたりする事はないが、現実世界でのあらゆる動きを複雑にしていく。個人と国家は、インターネットが続く限り、緊張関係が続く。

③国は仮想世界と現実世界とでそれぞれ異なる政策を実行する事になる。

④コネクティビティと携帯電話が世界中に普及する事で、市民は過去のどんな時代よりも大きな力を手に入れる。但し、それには特にプライバシーとセキュリティに関する代償を伴う。

仮想文明と現実文明が、互いに影響を与え、両者のバランスによって、私達の世界は方向づけられるだろう。私達は未来を楽観している。それは、技術とコネクティビティに、世の中の悪弊、苦難、破壊を抑制する効果があるからだ。出会いと好機が重なるところには、無限の可能性がある。

参考文献・紹介書籍