起業家の思考法
正解がない時代に圧倒的成果を上げているのが「起業家」である。自分の頭で考え、意思決定し、リスクを負って仕事をする。起業家たちは、不確実性が高い時代のビジネスパーソンの先頭に立っている。そんな「起業家の思考法」を身につければ、誰でも自分の頭で考え、圧倒的な成果が出せるようになる。
起業家の思考法は、次の5つで成り立っている。
①発見力:目標を達成するために、解くべき問題を「発見」する力
②別解力:「自分らしく」「優れた」「別の」やり方を組み合わせ、他の誰も思いつかない「別解」を生む力
③実現力:別解を絵に描いた餅に終わらせず、「実現」する力
④失敗力:「失敗」を最小限に抑え、糧にする力
⑤成長力:ビジネスパーソンとして自らを鍛え「成長」し続ける力
この中で最も重要なのは「別解力」である。課題に対し、「他の人が思いつく方法(=正解)」を仮定した上で、それを上回る「自分だけの打ち手(=別解)」を考える力が、求められている。
別解力とは
別解力とは、自分で問題や課題を発見し、その答えのない問いに対して自分の持っている知識や経験を活用して、自分なりの答え(=別解)」を見出していく力である。
別解は次の3つの要素が重なることで生まれる。
①自分らしいやり方(オリジナル案)
自分の経験、知見、強み、夢中になれること価値観などを反映した自分ならではのやり方。
自分らしいとは、どのような分野でも構わないのでチャレンジしてアウトプットすることで見つかる、他の人と差別化できる自分らしさのことである。誰かに評価してもらえたり、客観的な結果が出る機会を体験しなければ、いつまで経っても自分らしさを把握することはできない。
②優れたやり方(優等生案)
大きい、多い、早い、安い、高いなど、世の中に受け入れられるやり方。
これは替えがきく、陳腐化するというネガティブな側面もある。代表的な優れたやり方には、次の4つがある。
- 早くやる
- コストを低くする
- 飛び抜けた成果を出す
- 成果が出なくても規格外な量をやる
これらは、誰もがやるので、相対的な比較でしか評価されない。優れたやり方で結果を出している人は、その人の個性や強みも生かしている。個性や強みが違う人は同じやり方にならない。だから、他の2つのやり方と組み合わせる必要がある。
③別のやり方(逆転案)
優等生案の正反対をいく、自分の強みや価値観を無視してみるなど、固定観念を脱するやり方。
優れたやり方の正反対をやってみる、自分の強みや価値観を無視してみるなど、固定観念を脱するやり方を「別のやり方」と定義する。新しいこと、誰もやっていないことをやると、自分だけが違うことをやるために価値以上に評価される。
自分らしいやり方、優れたやり方、別のやり方の内、どのピースが欠けても圧倒的成果を生む別解にはたどり着けない。特に人がやらない「別のやり方」を考えて組み合わせることが、別解力の最大のポイントになる。
別のやり方を引き出すヒント
別のやり方を引き出す方法には「変える」「探す」「考える」という3つのタイプがある。
- 要素に分解して、一部を変える
- パラメーターに分解して、一部を変える
- 時間軸を変える
- 場所を変える
- 値段を変える
- 集客や販売チャネルを変える
- 登場人物を変える
- 業態を変える
- 濃度を変える
- 原材料を変える
- お金を払ってでも欲しいものを探す
- いらないものを探す
- 強い部分と弱い部分を探す
- 特化して価値が出るものを探す
- タイムマシンを探す
- 定数より変数を探す
- 法改正を探す
- 新しいテクノロジーを探す
- 臨界点を超えたり、特定の状況になったりすると価値が出るものを探す
- 複利になるものを探す
- LTVで戦えるものを探す
- マイナスが低いものを探す
- 反対(Not A)で考える
- 規模の違うもので考える=相似形
- 哲学的に考える
- 仮定法で考える
- 未来はどうなるかを考える
- みんな嫌がりそうなことを考える
- アイデアを結合して考える
- 古い概念をアップデートして考える
- 他に転用できるものはないか考える
別解を考えることは、一般的な正解の逆を行うことに近い。何かを選んだり、あるポジションを選択したりすると、選ばなかったものやポジションにプラスの側面が存在することがあり、必ずマイナスの面が出てくる。それを補完する意味で、別解を用意しておくといい。
この「マイナスの側面とどう向き合うのか」が別解のポイントになる。マイナスの側面を補完しながら、自分以外には誰もできない打ち手に変えるのが、この組み合わせである。
別解は組み合わせなので、無限に出せる。人とは違うものを考え続けるのは価値になる。それぞれの要素は、単体でイチになるような強い要素ばかりではない。0.5、0.3など決して強くない要素をリサイクルさせたり、昔放置されたアイデアや概念をアップデートしてつなげ、組み合わせ、連鎖させることで新しいイチを生み出せばいい。