正直に向き合うしかない
真のコミュニケーションとは、一人ひとり異なる存在である私たちが、お互いの差異を乗り越えて、あらたな次元でつながること。そのためには、下手なテクニックや小細工はむしろ逆効果である。問題に対してごまかさず、向き合う。立場や主義主張の違う者と顔を合わせて、徹底的に話し合う。真摯に話し合えば、立場は違えども深いところで理解し、つながることができる。
本音で向き合うことで生まれた信用や信頼こそが、意見や立場を超えてつながる懸け橋になる。そのためには自分自身にも、相手に対しても正直に向き合うしかない。
本音を言うと、相手が怒ってしまうのではないか、関係がどこで終わってしまったらどうしようと心配する人が多い。しかし、本音をぶつけたら、機嫌が悪くなるかもしれない、嫌われるかもしれないと恐れるのは、相手をむしろ馬鹿にしていることである。相手の人間性や器の大きさを認めていないから、本音を言ったら気分を害するんじゃないかと忖度する。
コミュニケーションで大切な相手との向き合い方
コミュニケーションは、単なる会話とは違う。それは相手との向き合い方であり、スタンスそのものである。どういう目線で、どういう立場で相手と向き合うかで、相手の見え方が変わってくる。自ずと会話の中身が変わってくる。
①「こういう人だろう」と決めつけない
コミュニケーションを取る上で1番の障害は、相手に対して先入観や固定観念を持って臨むこと。人間はどうしても何らかの色眼鏡でモノを見てしまう。ただ、自分がどんな偏見や固定観念を持っているか、ある程度把握しておくことで、冷静になれる。それには自分を客観的に見ること。自分も含めて全体を俯瞰する視点=メタ認識が大切である。
②先に裸になる
自分から裸になるというのは、簡単ではない。どうしてもいい格好がしたいとか、自分を大きく見せたいと思ってしまうからである。でも、そんな人間に誰も心を開いて本音や真実を語ってくれない。
③頭から否定しない
コミュニケーションとは、相手を知り、認め、受け入れることである。ところが、私たちは相手の立場や思想、信条などを知り、レッテルを貼ってしまう。そして自分と合わないものを無視し、排除しようとする。相手を否定すれば楽かもしれないが、それをしたらコミュニケーションはそこで終わってしまう。頭から否定せず、まずはまっさらな気持ちで相手と向き合う。そして相手をできる限り理解しようと努める。すると意外な姿が浮かび上がってくる。
④いい意味であきらめる
コミュニケーションは相手のあることである。だからこちらがどんなに熱い思いで、全力でぶつかったとしても、うまくいくとは限らない。ただ自分の気持ちばかり押し付けても、相手は負担に感じて引いてしまう。
押すことも大事だが、引くことができるかがポイントである。引きことができるのは、どこかに大きな意味で諦め、諦観があるからこそできる。過剰な期待をせず、相手との距離感を適度に持つこと。
⑤自分を賢く見せようとしない
自慢話ほど聞かされていて苦痛なものはない。ところが失敗談は面白い。それを半分笑い話にして語れる人は、とても魅力的である。自分を賢く見せようとするより、ダメなところ、馬鹿なところをさらけ出すことで、会話も盛り上がるし、相手も心を許してくれる。
⑥コミュニケーションとは自己確認の場
仕事とは、他者との関係そのものである。仕事は自己満足で完結することはできない。その仕事を通して他者と関わり、他者の評価を得ることで成立する。それによって自己確認ができる。つまり自己の存在は、他者との関係性そのものである。
「自分探し」と言って、他者との関係性をないがしろにして、自分のことばかり見つけても、そこに本当の自分の姿は見えてこない。他者と関わる中で、自分の姿がおのずと浮かび上がってくる。
⑦つきあう相手を損得で選ばない
損得で相手とやり取りしている間は、相手は心を開くどころか、同じように損得で向かい合おうとする。どれだけ言葉を尽くしても、むしろ尽くせば尽くすほど、利害関係でしかなくなってしまう。
⑧相手を安心させる
ちょっと隙があるとか、弱みを見せると、相手は安心して近づいてきてくれる。自分のダメなところをあえて見せる。
⑨本気で相手を好きになる
自分を嫌っている人に、本音で向き合う人はいない。逆に、自分のことを理解してくれて、好印象を持ってくれる人に対しては、他では話さないようなことを話してみたくなったり、相談してみたくなる。コミュニケーションの最終的な極意は、相手を好きになるということである。その気持ちは必ず相手に伝わる。すると相手は心を開き、どんどん話してくれる。