オープニング・ギャンビット(序盤の仕掛け)
・期待以上の要求をする
本物の交渉術の基本ルールの1つは、相手に期待以上の要求をすることである。期待以上の要求をする理由には、次の5つがある。
- 手に入るかもしれない(結果は要求してみないとわからない)
- 交渉の余地を与えてくれる(相手に自分のポジションを正当に理解してもらえる)
- 提供しているものの価値を高めることができる(あなたにはそれだけの価値があるという印象を与える)
- 交渉が膠着状態になるのを防ぐことができる(最初から最低条件を出すと交渉の余地がなくなる)
- 相手が勝ったと感じるような環境を作ることができる(最初からベストオファーを出すと相手は勝ったと思わない)
・最初のオファーにイエスと言わない
最初のオファーにイエスと言うと、相手に「もっとうまくできたはずだ」「何かが間違っているに違いない」という2つの考えを自動的に引き起こす。逆に自分の提案に対して、相手が自分の予想よりもはるかに良い反応を示した場合には気をつける必要がある。
・提案にひるむ
相手の提案にショックの表情をしたり、驚いたりして、常にひるんでみせる。ひるまなければ、相手は自動的に「もしかしたら、この人は無理な要求に応じてくれるかもしれない」と思わせることになる。相手からの譲歩は、こちらがひるんだ後に来ることが多い。
・対立的な交渉を避ける
交渉の初期段階では、対立を生む可能性があるため、議論をしてはならない。まず相手の気持ちに同意してから逆転すること。
・消極的な売り手、買い手を演じる
取引に消極的な姿勢を見せることで、相手の交渉範囲を広げる。
・バイス・ギャンビット
相手の提案や対案に対し、「それ以上のことをして頂かなくてはなりません」と言ってから黙る。それだけで相手から譲歩を引き出せる可能性がある。相手が使ってきた場合には、「正確にはどのような条件ですか」と逆に相手を具体的に追い詰める。
ミドル・ギャンビット(中盤の仕掛け)
・高次権威ギャンビット
自分には最終決定権がなく、取締役会の承認など得なければならないと言う。相手は、自分を説得するためにさらに努力が必要となる。自分が決定権を持っていることを相手に知られてはいけない。
・サービスの価値の低下
サービスの価値はサービスを提供した途端に下がっていく。相手に与えた好意は、すぐに価値を失うため、交渉で相手に譲歩した時はすぐに相互譲歩を求めること。
・インパスを処理する
インパスとは、1つの問題について完全に意見の相違があり、交渉を脅かすこと。インパスになった時には、「それはさておき、他の点について話し合いませんか」と、交渉の争点を脇に置いて、小さな問題を解決していくことで交渉を勢いづかせる。
・袋小路に対応する
交渉が停滞した時には、力学を変えて勢いを回復させる。メンバー、場所を変える。話題を変えて緊張を和らげる。金額以外の条件変更の可能性を探ってみる。相手の不安を解消するための方法を話し合う。交渉の雰囲気を変えてみる。仕様を変えてみる。
・デッドロックに対応する
デッドロックとは、進展のない状況に双方が苛立っており、もうお互いに話し合う意味がないと考えている状態。デッドロックに陥った場合、解決するゆういつの方法は第三者(調停人や仲裁人)を入れることである。
・常にトレードオフを求める
交渉で相手側が譲歩を求めてきた時には、自動的に見返りを求める。
エンディング・ギャンビット(終盤の仕掛け)
・グッドガイ/バッドガイ(善人/悪人)
善人と悪人の役割に分かれて、2人以上の交渉をしてくる場合には気を付ける。
・ニブル(引っ掻く)
すべてに合意した後でも、少しだけ多くのものを得られる。タイミングよくニブルを使えば、交渉の最後で、それまでは相手に同意してもらえなかったものを手に入れることができる。相手が決断した後は、マインドが反転するからである。
・譲歩先細り
同じ大きさの譲歩を続けてはならない。相手はずっと推し続けてくる。最後の譲歩を大きなものにしてしまうと、敵意が生まれてしまう。譲歩を先細りにすることで、相手が最良の取引をしていることを暗に伝える。