ファシリテーションの極意
ファシリテーションとは、グループ活動を円滑に促進すること。ビジネスシーンでは、「仕切る力」「統率力」を示すことが多い。その極意は次の3つ。
①準備力
まずは何よりも「準備」。参加者は何人で、どんな顔ぶれなのか。目的、時間、会場などを確認し、必要な情報を1つ1つ集めて、整理していく作業を始める。商談などの場合には、取引先のホームページやSNS、記事などで最近の動向をチェックする。
次に、その人にとって「これだけは言いたい」というコアな主張をしっかりと話して頂き、一方でファシリテーターとして「これだけは聞きたい」ことをきちんと聞くという「芯を外さない進行」を頭の中でイメージする。その上で、参加者の本音をどう引き出し、他の参加者との間でどのように議論を盛り上げていくかを事前にシュミレートしておくことが大切である。
②聞く力
実際に会議が始まった後は、準備してきたことを一旦すべて脇に置いて、目の前の議論に全エネルギーを集中させる。テーマと狙いを説明した後、参加者の言葉に全力で耳を傾け、その主張や空気を受け止めながら議論を展開させていく。
ファシリテーターは受け身のポジションを取りながら、参加者の言葉を拾って補足し、軌道修正し、「芯を外さない進行」を実現させていく。ここでは、自分が何を言いたいかではなく、いかに参加者の言葉を受け止めるかが重要である。
③場を作る力
会議をイキイキとしたものにし、議論を活性化させるために、ファシリテーターに欠かせないことが「ムード作り」である。参加者たちが緊張や警戒をしながら話すのか、本音で話してくれるのかでは、議論の深みや成果に大きな違いが出る。
アイスブレイクの会話で緊張を解きほぐし、時に自分自身の身を削り、ゲストの背中を優しく押してあげながら、あの手この手で自由に本音を話せるムードを作る。
ファシリテーターの心得
活発な議論を促したり、対立する意見を調整したり、会議をスムーズに進行させることがファシリテーターの役割だが、その立ち回りにはいくつものバリエーションがある。顔ぶれやテーマによって、微妙に立ち位置を変える。
・声が大きく口数の多い論客が揃っている日には、純粋に進行に徹する。
・難しいテーマに対し、複数の識者が登場する日には、質問者の1人になることで、内容を噛み砕いて伝える。
・初登場の方やおとなしめの方が多い日であれば、自分も積極的に意見を述べて、議論を活性化させる。
立場を柔軟に変えることで、議論はより効率的に、そして機能的なものになる。会議の本質を見極め、それに自分自身をアジャストさせることができれば、ファシリテーションのレベルは大きく上がる。
会議の雰囲気は、その日のテーマやメンバーに左右される。ただし、ファシリテーターの立ち回り次第で、場の雰囲気を柔らかくし、誰もが意見を言いやすい空気を作ることができる。初登場の人に対しては、「私はあなたの味方ですよ」「何かあってもサポートしますから安心して喋ってくださいね」と暗黙の意思表示をすること。大切なのはその人に思いを寄せ、徹底して寄り添うことである。その思いは相槌だけではなくリアクションや表情など、あらゆるノンバーバルコミュニケーションを通して伝えられるはずである。
会議は大縄跳びによく似ている。両端に縄を持って回す人がいて、その中に、次々にいろんな人たちが入ってくる。いわばファシリテーターは縄の回し手であり、参加者は跳ぶ人である。大縄跳びの理想は、参加者たちが輪の中に入ったり出たりしながら、心地よく長く跳び続けられること。
会議も同じで、一部の積極的な人にばかり発言の機会が偏りすぎたり、最後までほとんど意見を言えずに終わる参加者がいるような状況は、できるだけ避けたい。そこでファシリテーターは、メンバー全員の様子にさりげなく目を配りながら、要所要所で流れを緩やかにして、輪の中に新しいメンバーを招き入れてあげる。
これは意見と意見が真っ向からぶつかり合い、議論の着地点が見えにくくなってしまった時にも有効な方法である。それまで会話にあまり参加していなかったメンバーを議論に呼び込むことで新しい視点が加わり、ムキになりつつあった人も、一旦冷静になる時間が作れる。
ファシリテーターは、参加者にとってベストな環境を整え、気分をノセてていくことが求められる。そのために有効な手法が次の3つである。
- 反復:相手の言葉を繰り返し述べることで、それが重要なポイントであることを伝える
- 要約:発言を端的にまとめて再確認し、発言者の趣旨をわかりやすく噛み砕いて伝える
- 同調:発言に対する同意を表し、発言者を口をなめらかにする