「働かないおじさん問題」のトリセツ

発刊
2021年9月18日
ページ数
312ページ
読了目安
311分
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「働かないおじさん」を減らすための対策
会社が期待する成果を出せないミドルシニア人材をどうすればいいのか。人事、上司、本人それぞれの視点から、ローパフォーマーのミドルシニア人材を減らすための対策が紹介されている一冊。
大企業で増加傾向にあるリストラの根底にある「働かないおじさん」問題を解説しています。

働かないおじさん問題

2019年以降、社内から早期・希望退職者を募ることで人員削減を行う上場企業が増加傾向にある。同じく2019年前後から「働かないおじさん」という言葉を目にする機会が増えてきた。「働かないおじさん」は、一般的には「会社の中で真面目に仕事をしないくせに給料をもらっている人」といったイメージがあるかもしれないが、実は働かないおじさんと呼ばれてしまう人の多くが「真面目でコツコツ働く人」である。

「働かないおじさん」とは、周囲からの期待と成果にギャップが生じているミドルシニア人材のことをいう。本人が好き好んで「働かないおじさん」と呼ばれる状態になっているケースはほとんどない。気づかない間に、または薄々気がつきながら上手く対応できず、周囲や上司の期待とギャップが生じてしまっている場合がほとんどである。

 

様々な環境変化や日本の構造変化に伴い、従来型の雇用システムは最適解でない場面が増えてきた。あらゆる分野で短期間のイノベーションや前例のない変化が起こり、市場への臨機応変な対応やアップデートが求め続けられる中、「経験あるベテラン」の技能や「従来型の管理手法」を生かす場が、企業の中で失われつつある。その結果、企業に今までの文脈で誠実に長年勤めた、ある意味「真面目な」ミドルシニアほど過去の環境や雇用システムに適応し過ぎて、活躍が難しくなっている。

 

働かないおじさんのパターン

①期待している成果が出ない(成果のミスマッチ)

人間的には良い人で言われたことを真面目に取り組んでいるが、仕事に対する創意工夫や自主的な学習が足りず、与えられた業務をこなしている人などが当てはまることが多い。

 

②仕事への意欲が不足している(意欲のミスマッチ)

特に、役職定年や定年再雇用などで役割や処遇が変化した場合に起こりやすい。

 

③本人が良かれと思ってやっている言動がズレている(期待のミスマッチ)

やる気はあるがピントが合っていない。プレイヤーとしては優秀だったのに、管理職になって仕事を人に任せたりチームで成果を出したりすることができない人などが当てはまる。

 

④成功体験が邪魔して話が伝わらない(コミュニケーションコストの問題)

以前はエース社員として活躍していたものの、考え方や意見が次第に最新の環境や手法と合わなくなり、そのことに本人が気づけていない状態。

 

⑤年上部下・年下上司が、お互い遠慮してしまう(心理的コストの問題)

お互いに遠慮して最終的な行動や結論が中途半端になったりする。

 

⑥改善や変化をするのに時間がかかる(時間的コストの問題)

長年の行動が習慣化されていて、改善に時間がかかる、または改善してもすぐに元に戻ってしまう状態。

 

会社の期待に応えられないのは、ミドルシニアに限った話ではなく、若手社員にも起こりえる。しかし、ミドルシニアの場合、若手より報酬が高く、より責任や影響力のあるポジションに就いているケースが多いため、「働かない」場合の企業の損失がずっと大きくなる。

 

働かないおじさん問題に対して人事がすべきこと

「働かないおじさん」が生き生きと「働くおじさん」になるには、本人・上司・人事の3者が団結して努力することが重要である。「問題は自分ではなく相手にある」「言っても無駄」という他責的・自己防衛的なスタンスが見え隠れする企業ほど、お互いの信頼関係が毀損していて問題が深刻化している傾向がある。

 

人事や上司としては、本人が仕事に充実や集中を感じられるよう、少し背伸びした挑戦機会を本人と一緒に考えて提供することが有効である。期待と成果にギャップが生じ始めた際に、早い段階で「本人がギャップに気付ける機会」、「本人と上司がギャップを埋めるために話し合う面談」、「ギャップを調節する仕組み」を用意することが人事として必要になる。

こうした問題を解決するために「WILL・MUST・CAN」のフレームワークが有効である。

  • WILL:「やりたいこと」「ありたい姿」など、本人の意思や欲求や価値観
  • MUST:「やるべきこと」「周囲からの期待」など、周囲からの期待役割やニーズ
  • CAN:「できること」「得意なこと」など、本人の能力、スキル、強み

キャリア研修やカウンセリングでは、本人にこれら3つをそれぞれ円として図示してもらい、その円の重なり方や大きさによって、仕事に対するやる気・期待・能力といった「自分の状態」を把握してもらう。WILL・MUST・CANが大きく重なっている人は、ハイパフォーマーとして活躍している場合が多い。

 

問題を解決するためには、上司または人事から「お互いに改善できることがあるかもしれない。一緒に考えよう」と謙虚かつ真剣に対話する姿勢が大切である。その上で「何がギャップなのか」「ギャップをどう解消するか」「どのような状態になりたいか」について、本人と上司で共有しながら検討し、人事が両者を支援する3者の連携が、ローパフォーマーを減らすことに繋がる。